火とぼし山


   火とぼし山32


あの夜は、あの娘、とてもうれし
そうな顔をしていたのに、今日は
なんだか元気がない。
どうしたのじゃろ。
青年とけんかでもしたのかな」



明神さまは、奥さんの所から、上
諏訪のやしきへもどる所でした。
「まあ、どんなに仲がよくても、た
まにはけんかもするさ。
このわしだって、妻とけんかをする。



わしが、このように妻のやしきへ通
うようになった原因だって、ほんの
ささいなけんかだったものな」
明神さまは、奥さんとけんかした日
のことを思いだしました。



「娘よ。青年と仲良くしたまえ。
けんかをしたのなら、一日も早く仲
直りしなさい。
けんかが長びくと、ろくなことはな
いからのぅ」
明神さまは、心の中で娘に話しかけ
ました。


           つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100410#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。