火とぼし山


   火とぼし山47


きよがさみしそうだったわけが、
よくわかりました。



「次郎よ。わしが、きよとおまえの
姿をみたのは、諏訪湖に氷がはっ
ている頃だった。
あれからまだ何ヶ月もたっていない。
それなのに、これは一体どういうこ
となのじゃ。



次郎、おまえのことをいちずに思っ
ているきよのことを、忘れてはなら
ないぞ。
おまえのことを、あんなに思ってく
れるおなごは、ほかにいないからの
ぅ」
明神さまは、心の中で次郎に話しか
けました。



「きよと次郎は、これからどうなる
のだろう。
若い二人が離れて暮らしていると、
いつしか心まで離れてしまうのだろ
うか」
明神さまは、心の中でそっとつぶや
きました。


             つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100425#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。