火とぼし山


   火とぼし山53


「だいじょうぶ、次郎さん。
気をつけて泳ぐから。
今夜は明るかったから、泳ぎやす
かったわ。
湖の水がきらきら光って、とても
きれいだった」
きよがいいました。



「きよちゃん。いくら明るくても、
昼間とはちがうんだよ」
「たとえ真っ暗でも、次郎さんが
ともしてくれる火を目印に泳いで
くるから平気よ」



きよのことばを聞き、自分がとも
す火が、どんなに大切な火である
かということを、次郎は知りました。



そして、「きよちゃんは、おらが
ともす火を目印に、ここへたどり
ついているのだな」と、次郎は思
いました。


             つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100501#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。