火とぼし山


   火とぼし山55


会うたびに、十分二十分と、早く
なっていったのです。
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん
早かったね。
いつもより早く家をでたの」
ふしぎに思い、次郎が聞きました。



「いつもと同じ時間よ」
きよは、そういいました。
でも、いつもと同じ時間であるは
ずがない。
きよちゃんは、いつもより早く家
をでたのだろうと、次郎は思いま
した。



「きよちゃん。どうやったら、こ
んなに早くここへこられるの」
「私、次郎さんと会う日には、無
事に次郎さんの所へたどりつけま
すように。
一分でも早く、次郎さんに会えま
すようにと、心の中で祈るの」


           つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100503#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。