火とぼし山


   火とぼし山62


「きよちゃん。なぜわかるの?」
「次郎さんが、大好きだからよ。
だから、わかるの。
次郎さんには、その人と会う気は
ないかもしれない。
でも、その人、次郎さんが働いて
いるたんぼや畑へ、会いにくるで
しょ」



次郎は、何もいえませんでした。
事実だったからです。
きよがいうように、みよは次郎が
働いているたんぼや畑へ、何度も
やってきました。



次郎は、「会いにこないで」とい
えず、困っていました。
みよは、働いている家の主人の姪
だったからです。



「おらが好きなのは、きよちゃん
だけだよ」
次郎はそういったけれど、きよに
は次郎のことばが白々しく聞こえ
ました。


             つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100510#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。