火とぼし山


   火とぼし山67


この世で、次郎さんと会うことが
できて、私は幸せだった。
次郎さん、ありがとう。



とうちゃん、かあちゃん。大切に
育ててくれてありがとう。
私、二人のこどもに生まれて幸せ
だった。
生まれ変わることができたら、ま
たとうちゃんとかあちゃんのこど
もにしてね。



きよは、うすれていく意識の中で、
次郎や両親とすごした楽しかった
日々を、なつかしく思い出してい
ました。



「手長、足長。明神じゃ。
わしの声が聞こえるか」
「はい、聞こえます。何かご用で
しょうか」
「きよが、湖でうずにまきこまれた」


          つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100515#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。