火とぼし山


   火とぼし山71


「あなた。きよのために、もう少
しがんばりましょう」
「じゃあ、今度はあちら側をさが
そう」



「あなた。うずにまきこまれない
ように、気をつけてね。
それにしても、きよはどこへ行っ
てしまったのでしょう。
淵の奥深く沈んでしまったのかしら」



手長は、うずの中を、何度もかき
まわしました。
しかし、何の手ごたえもありません。



どのくらいの時間がすぎたのでしょ
うか。
手長の手に、何かひっかかりました。
「あなた。何かひっかかったわ」
二人は、力をあわせてひきあげま
した。
きよでした。


           つづく



    昨日の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100519#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1



信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。