火とぼし山77
きよは、意識がもどらないまま、眠
り続けました。
きよ。おまえは、次郎ひとすじじゃ
ったのぅ。
結婚する前のおなごが、たった一人
の男性を、十数年も思い続けるなん
てすごい。
普通のおなごは、「あの人が好き」
「この人が好き」と、いろいろな男
に心をうばわれるものじゃ。
次郎も、主人の姪に会うまでは、き
よのことが大好きだった。
でも、みよに会ってから、次郎の心
はだんだんに変わっていったのだろう。
そして、次郎は、大きな農家のむこ
になりたいと思うようになったのだ
ろうな。
きよ。次郎のことは忘れるのじゃ。
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100525#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。