火とぼし山79
「そうじゃ」
きよは、自分の名前がわからないようでした。
「ここは、どこ?」
「わしのやしきじゃ。
わしは、諏訪の神・明神じゃ」
「明神さまのやしき?
私は、なぜここにいるの?」
「きよ。おまえは、大好きな次郎に会いに行
く途中、小坂観音沖の深い淵で、おぼれてし
まったのじゃ」
「次郎さんて、誰?」
「おまえが、この世で一番好きな人じゃ」
きよは、大好きだった次郎のこともおぼえて
いないようでした。
「私が、淵でおぼれたのですか」
「そうじゃ。大きなうずにまきこまれ、おぼ
れてしまったのじゃ。
つづく
昨日の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100527#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/youko510/20100309#p1
信州の諏訪湖には、「火とぼし山」
という悲しい伝説があります。
「火とぼし山」は、その伝説をヒント
にして、みほようこが書いた物語。