火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 15


第二章 再会 5 


「おらが働いている家では、蚕をたくさん飼
っている。桑の葉をつむのは、おらの仕事な
んだ。きよちゃん。諏訪地方の養蚕は、誰が
始めたか知っている?」
「諏訪の神様と奥さまが、始めたんでしょ。
二人は、寒さに強い桑の木をとりよせ、伊勢
から技術者をよんで、この地方に養蚕を広め
たんですって」


「きよちゃん。よく知っているね」
「ばあちゃんから聞いたの。ばあちゃんの家
でも、蚕を飼っているから」
「そうか」
「次郎さん。野良の仕事は、疲れるでしょ」
「なれない仕事だから疲れる。夜になると、
体中が痛くて」
腰をさすりながら、次郎がいいました。


       つづく