火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 21


第三章 湖の氷の上を歩く娘 4


「次郎さん、こんばんは」
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かったね」
「私、湖の上を歩いてきたの」
「えっ、湖の氷の上を?」
次郎が驚いて聞きました。


「一分でも早く、次郎さんに会いたかったから」
「きよちゃん。湖の氷は、まだ薄い。氷が割れ
たら、どうするの。こんな寒い夜、湖に落ちた
ら死んでしまうよ。頼むから、危険なことはし
ないでね」
次郎は、きよのことが心配でした。


「次郎さん。はい、お酒」
「お酒?」
「寒いから、次郎さんに飲んでもらおうと思っ
て、持ってきたの」
きよは、小さなとっくりを次郎にわたしました。


        つづく