火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 36


第四章 一ヶ月に一度の出会い 10


「娘よ。青年と仲良くしたまえ。けんかをしたの
なら、一日も早く仲直りしなさい。けんかが長び
くと、ろくなことはないからのぅ」
明神さまは、心の中で娘に話しかけました。


数日後。
明神さまは、湖のほとりで、また娘をみかけました。
娘は、西山にむかって、なにかしゃべっています。
「次郎さん。元気? 今、何をしているの。一カ月
も、次郎さんに会えないなんて、私さみしい。一
日も早く、次郎さんに会いたい。白鷺のように羽
があれば、毎日でも次郎さんの所へ飛んでいける
のにね」と。


「大好きな二人が、一カ月も会えないなんて、つら
いだろうな。なんで会えないのじゃろ。娘が青年に
会いたいと思うのも、無理はないのぅ」
娘の後姿をみながら、明神さまは小声でつぶやきま
した。


           つづく