火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 52


第五章 次郎の見合い 14


「次郎よ。わしが、きよとおまえの姿をみたのは、
諏訪湖に氷がはっている頃だった。あれからまだ
何ヶ月もたっていない。それなのに、これは一体
どういうことなのじゃ。次郎、おまえのことをい
ちずに思っているきよのことを、忘れてはならな
いぞ。おまえのことを、あんなに思ってくれるお
なごは、ほかにいないからのぅ」
明神さまは、心の中で次郎に話しかけました。


「きよと次郎は、これからどうなるのだろう。若
い二人が離れて暮らしていると、いつしか心まで
離れてしまうのだろうか」
明神さまは、心の中でそっとつぶやきました。


          つづく