[童話]火とぼし山
火とぼし山 54
第六章 湖を泳ぐ娘 2
「何の音だろう」
手長と足長は、あたりをみわたしました。
月あかりに照らされてみえたもの、それは湖を
泳いでいる娘の姿でした。
娘は、頭に荷物をのせ泳いでいます。
「どこの娘じゃろ」
近づいてみると、きよでした。
「誰かと思ったら、きよか。 湖に氷がはれば、
氷の上を歩く。水がぬるめば、湖を泳いで渡る。
ほんとにむてっぽうな娘じゃのぅ。大の男だっ
て、湖を泳いで渡る人は、数えるほどしかいな
い。それなのに、かよわいおなごが、こんな夜
中に、湖を泳いで渡るなんて信じられん」
足長が、あきれたようにいいました。
つづく
2019