火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 55


第六章 湖を泳ぐ娘 3


「私には、きよの気持が、よくわかるわ。危険
をおかしてまでも、一分でも早く、大好きな人
に会いたいという気持。男のあなたには、わか
らないでしょうね」
手長がいいました。


「わしにだって、わかるさ。でも、こんな夜中
に、湖を泳いで渡るなんて危険すぎる。深みに
はまったら、どうするんじゃ。諏訪湖には、深
い淵になっている場所があるからのぅ」
足長が、心配していいました。
「達者な泳ぎだから、深みにでもはまらない限
り、大丈夫でしょ。魚が泳いでいるような、み
ごとな泳ぎね」
きよの泳ぎをみて、手長が感心したようにいい
ました。


          つづく