火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 62


第六章 湖を泳ぐ娘 10


「次郎さん。私ね、湖を泳いでいると、魚になっ
ちゃったのかなって、思う時があるの」
「魚になる?」
「そんな時は、すーいすーいと、早く泳げるの。
誰かが、たぶん神様でしょうね。私を守っていて
くれるのだなって思うわ」


「きよちゃんが、魚に? そんなばかな」
そういって、次郎はだまってしまいました。
「今夜は、きよちゃんの話についていけない」
次郎は、心の中でそっとつぶやきました。


       つづく