火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 69


第六章 湖を泳ぐ娘 17


「おらが好きなのは、きよちゃんだけだよ」
次郎はそういったけれど、きよには次郎のこと
ばが白々しく聞こえました。


「次郎さんのうそつき。次郎さんの心の中には、
その人が住んでいるのに、なぜそんなことをい
うの」
きよは、心の中でさけびました。
その日、きよと次郎は、きまずいままで別れま
した。
こんな別れ方をしたのは、初めてでした。


       つづく