火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 74


第七章 新しい出発 4


この世で、次郎さんと会うことができて、私は
幸せだった。
次郎さん、ありがとう。
とうちゃん、かあちゃん。大切に育ててくれて
ありがとう。
私、二人のこどもに生まれて幸せだった。
生まれ変わることができたら、またとうちゃん
かあちゃんのこどもにしてね。


きよは、うすれていく意識の中で、次郎や両親
とすごした楽しかった日々を、なつかしく思い
出していました。


「手長、足長。明神じゃ。わしの声が聞こえるか」
「はい、聞こえます。何かご用でしょうか」
「きよが、湖でうずにまきこまれた」
「えっ、きよが? 場所は、どこでしょうか」
「小坂観音沖の淵じゃ」


      つづく