火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 86


第七章 新しい出発 16


三日後。
きよの意識がもどりました。
「きよ。気がついたか。よかったのぅ」
明神さまが、ほっとした顔でいいました。
「きよ?」
「おまえの名前じゃ」
「私の名前は、きよというのですか」
「そうじゃ」
きよは、自分の名前がわからないようでした。


「ここは、どこ」
「わしのやしきじゃ。わしは、諏訪の神・明
神じゃ」
「明神さまのやしき? 私は、なぜここにい
るの」
「きよ。おまえは、大好きな次郎に会いに行
く途中、小坂観音沖の深い淵で、おぼれてし
まったのじゃ」


        つづく