火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 89


第七章 新しい出発 19


「夜遅くにもうしわけない。これから、きよを
静岡の知り合いまでつれていってほしい」
「えっ、きよを、静岡へつれていくのですか」
手長が驚いて聞きました。


「そうじゃ。きよは、自分の名前も、大好きだ
った次郎のことも、何もおぼえていない。記憶
がなくなってしまったきよを、ここへおいてお
くわけにもいくまい。きよが生きていることを
知ったら、次郎が何をするかわからないしな」
明神さまがいいました。


        つづく