鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 19


「二匹の犬は、家族の一員だったから、さ
みしいのぅ。元にもどれるといいのじゃが」
和尚がさみしそうにいいました。
「三郎さ。鹿狩りにはいかないのかい」
「はい、和尚さま。あれいらい、わしは鹿
狩をやめました。弓をひくこともしません」
「そうか」


「和尚さま。今日は話があってやってきま
した」
「三郎さ、話ってなんじゃ」
「和尚さま。わしが持っている田畑や山林
を全部寺に寄進したいのですが」
「何、全財産を寄進してくれると」
「はい、今まで殺生をしてきたつぐないと
して、全財産を寄進したいと思います」


          つづく