赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 29


私は、盛永さまに「少しは領民のことも考
えてください」と、なぜいえなかったのだ
ろうか。
犬坊は、盛永につかえた三年間を思い出し、
複雑な気持になりました。


どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 
「お万。お万は・・・無事か」
眠っているはずの盛永が、ぽつりといいま
した。
「殿様」
「殿様」
犬坊が、盛永に声をかけました。
盛永は、ぐっすり眠っています。
「お万」ということばは、盛永の寝言だっ
たのでしょうか。


         つづく