赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


赤い夕顔の花 30


「お万。お万は・・・無事か」ということばを
聞いた犬坊は、頭の中が真っ白になりました。
犬坊は、ぐっすり眠っている盛永の口から、そ
んなことばを聞くとは思ってもいませんでした。
盛永さまは、誰よりもこの私を愛し、かわいが
ってくれていると思っていた。
でも、盛永さまが愛していたのは、私ではなく、
奥がたのお万さまだったのだ。
犬坊の心は、乱れました。


私は、盛永さまが大好きだった。
盛永さまは、亡くなった父にどことなく似ている。
そんな盛永さまを、私は実の父のように慕って
きた。
盛永さまも、みよりのない私をわが子のように
かわいがってくれた。


         つづく