牛に乗ったお玉さま

[童話]牛に乗ったお玉さま


    牛に乗ったお玉さま  1


昔、むかし。
小野から木曽へ通じる牛首峠のふもとに、「山口の
長者」とよばれる大きな屋敷がありました。
長者には、お玉という一人娘がいます。
谷間に咲いている白百合のような、清らかな可憐な
娘でした。


長者の家では、大きな黒牛を飼っています。
おとなしい牛で、お玉によくなついていました。
お玉も「黒や、黒や」といって、かわいがっています。
天気のよい日には、黒の背に乗り、野山へ遊びに行
きました。 


長者の屋敷から半里ほど離れた所に、「金龍院」とい
う小さなお堂がありました。


               つづく