鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 7


「ばたんっ」
大きな音をたて、鹿がたおれました。
「黄金色の鹿をいとめたぞー」
そうさけんだ時、鹿はどこかへ姿を消してしまい
ました。
あっという間のできごとでした。


「おかしいな。たしかに首に矢がささったのに」
三郎は、ふしぎなことがあるものだと思いました。
ぐさっと首にささったはずの矢は、地面に落ちて
いました。
矢には、べっとりと血がついています。


         つづく

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 6


「わぁーっ。黄金色の鹿だぁ」
三郎は、びっくりして大声をあげました。
「うー、うー、うー」
「わん、わん、わん」
タケルとチハヤが、鹿のまわりでほえています。


鹿が、三郎にむかって突進してきました。
「あぶないっ」
危険を感じた三郎は、弓をかまえました。
「えいっ」
三郎は、鹿をめがけて弓をひきました。
「ばしっ」
鹿の首に矢がささりました。


         つづく

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 5


二匹の犬は、なきやみません。
ますますはげしくないています。
「どうしたのじゃ。近くに何かいるのだろうか」
三郎は、あたりをみまわしました。
「がさっ」
「ごそっ」
どこかで音がしました。


すると、
突然、目の前に、びっくりするような、大きな鹿
がとびだしてきました。
黄金色の美しい鹿でした。
鹿の体は、黄金のように、ぴかっぴかっと光って
います。


        つづく

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 4


「さあ、何かいるのかも。和尚さま。じゃあ、これ
から裏山をみてくるで」
「三郎さ。たのんだぞ」
和尚は、三郎に裏山をみてくれるように頼みました。
三郎は、いそいで裏山へ行きました。


「うー、うー」
「わん、わん、わん」
タケルとチハヤが、大声でほえています。
でも、あたりには何もいません。
二匹の犬は、何にむかってほえているのでしょうか。
「タケル、チハヤ。どうした」
三郎は、犬たちに声をかけました。


        つづく

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 3


三郎は、鹿だけでなく、うさぎやいのししなども
とっていました。
三郎の家は、田畑や山林をたくさん持っています。
村一番の金持でした。


「和尚さま。タケルとチハヤが、裏山でほえてい
るが、どうかしたかね」
「三郎さ。ちょうどいい所へきてくれた。すまん
が、裏山をみてきてくれないか」
「和尚さま。タケルたちは、いつからほえている
のかね」
「十五分くらい前からかのぅ。最初は、本堂の前
でないておった。三郎さ、裏山に何かいるのだろ
うか」
和尚が心配して聞きました。


        つづく

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 2


寺には、「タケル」「チハヤ」という、二匹の犬
がいます。
利口な犬でした。
和尚は、二匹の犬を、わが子のようにかわいがっ
ています。


秋のある日。
「うー、わん、わん」
「わん、わん、わん」
タケルとチハヤが、裏山でけたたましくほえてい
ます。
「どうしたのだろう。裏山に、魔物でもいるのだ
ろうか」
和尚は、山をみながらいいました。


すると、
甲賀三郎兼家が、通りかかりました。
三郎は、鹿狩りの名人。
毎日山へ行き、鹿狩りをしています。


        つづく

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


鹿になった観音さま 1


信州の伊那谷、三穂村に「立石寺」という寺があり
ました。
天安元年(857年)に創建された、真言宗の古い
寺でした。
立石寺は、伊那西国三十三番札所、第一番の寺。


聖徳太子作といわれる十一面観音像がある寺として
有名でした。
寺には、樹齢千年の杉の木もあります。
立石寺は、昔「普門寺」とよばれていました。
では、なぜ立石寺とよばれるようになったのか、そ
のわけをお話しましょう。


        つづく