2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 15 自殺は、自分さえ楽になればと いう我よしのおもいなのです。 自殺した後の恐怖は、ジェット コースターに乗っている時の数 千倍なのです。自殺がこんなに もこわいものだと知っていたら、 自殺をする人はいなくなるでし ょう…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 14 「はい。清太の肩を後からぐっ とつかみ、湖の中へ入っていく のをとめました。自殺をすると、 どの人も元いた国へ帰ることが できません。何千年も、何万年 も、真っ暗な所で暮らさなくては なりません」 「自殺をすると、そ…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 13 「私は、清太さんが大好きでした。 清太さんは、今どこにいるのでし ょうか」 「清太は、かわいがってくれたあな たのおとうさんに追い出され、生き る気力をなくしてしまったのです。 そして、湖であなたのまぼろしをみ て、…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 12 ふくは、思いがけない事故で、八 才でなくなってしまいましたが、 仲良しだった清太と兄弟のように 暮らすことができて、幸せだった といっています」 「私と清太さんは、どんな間柄だ ったのでしょうか」 「二人は、とても仲…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 11 清太は、心のやさしいこどもでし た。だから、みんなにかわいがら れたのでしょうね。とくに、朝日長 者の夫婦は、清太をわが子のよ うにかわいがっていました。 清太のように、おおぜいの人にか わいがってもらえた人は珍し…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 10 「はい。きのこをとりにきたおと うさんに、白駒を拾ってもらおう と、湖のほとりにおきました。お とうさんは気づかないようでした が、私は木の影からおとうさん の様子をみていたのですよ」 女神さまは、その時の様子を話 …

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 9 朝は、『一族の人たちが、やしき で働いている人たちが、一日無 事に暮らせますように』と祈り、 夜には『今日一日、みんなを守 っていただきありがとうございま した』と、お礼をいっていました。 そんな母の姿をみて、私は大…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 8 「そうです。あなたの両親は、 長い間こどもが授かりません でした。二人は、元気なこど もをお授けくださいと、毎日 神様にお願いしていました。 だから、私が、おかあさんの 元へ、あなたを送ったのです。 おかあさんは、心の…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 7 「白駒は、女神さまの馬だった のですね。白駒が、夜どこかへ でかけていることは、先日清太 さんから聞きました」 「そうですか。清太は、八年位前 から、白駒が夜どこかへでかけ ていることに気づいていました。 でも、そのこ…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 6 羽には、大きな目玉のような模 様がついています。 その模様から、点々と涙がたれ ているようにみえました。 きよがちょうにみとれていると、 どこからかやさしい声が聞こえ てきました。 「私は、八ヶ岳に住んでいる女 神です…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 5 「清太さん、おぼえている? 秋になると、ここへ松虫草の花 を見にきたね。清太さん、今ど こにいるの。なぜ、姿を消して しまったの。清太さんがいなく なって、私さみしかった。私に とって、清太さんは大切な人だ ということ…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 4 「白駒、どこへ行くの」 「まず、霧ケ峰高原へ行きましょ う。今、高原では、松虫草の花 がきれいに咲いています。松虫 草の花をみて、きよさんに元気 になってほしいのです」 高原へ着くと、一面すすきの原 でした。 すすきにま…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 3 白駒がいなくなって、十日後。 「とんとん」 「とんとん」 誰か戸をたたいています。 「誰かしら」 窓をあけると、白駒が立ってい ました。 「白駒。どこへ行っていたの。心 配していたのよ」 「きよさん。早く支度をしてくださ…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 2 きよは部屋にとじこもったまま 出てこないし、清太は行方が わからない。 その上、白駒までいなくなって しまうなんて。 どうしてこんなことになってし まったのだろう。 清太を追い出したから、ばち があたったのだろうか。 吉…

女神さまからのおくりもの

女神さまからのおくりもの 1 「庄屋さま。た、大変です」 白駒の世話をしている人が、吉衛 門の部屋へとびこんできました。 「そうぞうしい。何ごとじゃ」 「白駒がいません」 「何? 白駒がいないと。いつか らいないのだ」 「わかりません。今、馬小屋へ…

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清太、山の中の湖へ 16 きよは、その後部屋から出てき ませんでした。 届ける食事にも、手をつけてい ないようでした。 そんなきよの姿をみて、吉衛門 は自分がしたことを後悔しました。 「清太。どうか無事でいておくれ」 吉衛門は、心の中で、清太の無 …

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清太、山の中の湖へ 15 きよは、そんなことではないかと、 心配していたのです。 「清太さんは、今どこにいるの。諏 訪へ帰ったの」 「清太は、自分の家には、もどって いないそうだ。どこへ行ってしまっ たのだろうね」 「とうちゃんって、ほんとうにひど…

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清太、山の中の湖へ 19 それから、一週間がすぎました。 でも、清太は帰ってきません。 「とうちゃん。清太さんは、もう この家にもどってこないのでは。 ほんとうのことをいって」 「きよ。とうちゃんを許してほしい。 清太は、この家にはもどってこな い…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 18 その日の夕方。 「とうちゃん。清太さんが、まだ 帰ってこないの。清太さんは、 今日どこへ行ったの」 「清太は、用事があり、遠くの 村へ行った。用事がすめば帰 ってくる。だから、心配しなくて も、だいじょうぶだよ」 吉衛門は…

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清太、山の中の湖へ 17 清太は、湖のほとりで、ごろん と横になりました。 真っ青な空。青く澄んだ湖。 「気持いいなぁ」 そうつぶやくと、清太は深い眠 りに入っていきました。 どのくらいの時間がすぎたので しょうか。 「清太、清太」 誰か、清太をよん…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 16 みたことのない赤い木の実が目 に入りました。 清太は、赤い木の実の方へ歩い ていきました。 みるからにうまそうな木の実で した。 木の実を一つとると、清太は口 にほうりこみました。 「うまいっ」 一歩も歩けないほど疲れていた…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 15 どのくらい走ったでしょうか。 十分? いや、二十分? 清太は、力の限り走りました。 「ばたっ」 気がつくと、清太は穴に落ちて いました。 片足が穴にはまっています。 耳をすますと、足音はもう聞こ えません。 「ああ、こわかっ…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 14 「誰だろう」 後をみたが、誰もいません。 清太は、こわくなり湖からでま した。 湖は、しーんと静まりかえって います。 湖のまわりには、誰もいません。 しばらくすると、 「たったった」 「たったった」 どこからか、足音が聞こ…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 13 ふと、向こう岸をみると、きよ にそっくりな女の人が立って います。 「きよちゃんだ。きよちゃん、 いつここへきたの」 「早くこっちへおいでー」 女の人は、さかんに手をふっ ています。 「きよちゃーん。今行くからねー。 待って…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 12 湖のまわりを歩いているうちに、清 太の心は再びゆれはじめました。 いっそ、この湖で死んでしまおうか。 いやいや、そんなことをしてはいけ ない。 おらが死ねば、きよちゃんが悲しがる。 きよちゃんを悲しますことだけはして はい…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 11 これからどうやって生きていった らよいのだろうか。 おらは、きよちゃんのことを、忘 れることができるのだろうか。 清太は、きよのことを考えながら、 湖のまわりを歩きました。 きよちゃんがこんなに好きなの に・・・。 なぜき…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 10 清太は、貧乏がつらいと思った ことは、一度もありません。 でも、今回だけは、貧乏とは、つ らく悲しいものだなと思いました。 清太は、湖のほとりで、ゆっくり 休みました。 庄屋の家で暮らした八年間が、 昨日のことのようになつ…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 9 八年間、おらのことを、実のこ どものようにかわいがってくれ た庄屋が、あんなひどいことを いうなんて・・・。 清太は、庄屋の気持がわかり ませんでした。 庄屋は、おらのことを、よく働 く使用人としかみていなかった のか。 おら…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 8 湖のほとりでは、楓やななかま どの葉が、真っ赤に紅葉してい ます。 その姿が、湖面にうつっていて、 きれいでした。 「なんて美しい景色だろう。き よちゃんにみせてあげたいな」 美しい景色をみているうちに、 いらだっていた清太…

女神さまからまおくりもの

清太、山の中の湖へ 7 しばらく歩いていくと、コメツガ・ シラビソ・モミなどの森がありま した。 大きな木の根元には、黄緑色 のこけがたくさんついています。 「庄屋さまがみたという木は、こ の木にちがいない。じゃあ、湖は、 この近くにあるのだな」 …