2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 53 第六章 湖を泳ぐ娘 1 月のきれいな夜でした。 手長と足長は、諏訪湖で魚をとっていました。 手長は、魚をとるのが上手でした。 今夜も、大きな鯉を三匹もつかまえました。 「ねえ、あなた。明日の朝、この鯉を明神さま に…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 52 第五章 次郎の見合い 14 「次郎よ。わしが、きよとおまえの姿をみたのは、 諏訪湖に氷がはっている頃だった。あれからまだ 何ヶ月もたっていない。それなのに、これは一体 どういうことなのじゃ。次郎、おまえのことをい…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 51 第五章 次郎の見合い 13 「なぜ? 次郎さん」 「おらには、小さな時からつきあっている人がいる」 「誰なの?」 「そんなこと、知り合ったばかりのみよちゃんには いえない」 「次郎さんは、その人と結婚するの」 「まだ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 50 第五章 次郎の見合い 12 「これは、一体どういうことなのじゃ。わし には、さっぱりわからん」 明神さまは、小声でつぶやきました。 そして、桑のかげから、二人の様子をじっと みていました。 次郎とみよは、楽しそうに…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 49 第五章 次郎の見合い 11 「きよが、次郎に会いにきたのだろうか」 明神さまは、そう思いました。 でも、きよではありません。 みたことのない娘でした。 明神さまは、あわてて桑のかげにかくれました。 「次郎さん、こん…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 48 第五章 次郎の見合い 10 十日がすぎました。 明神さまは、いつものように、村内のみまわり に行きました。 桑畑を通りかかると、若者が桑の葉をつんでい ました。 「どこの若者だろう」 若者の顔をみた明神さまは、あっ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 47 第五章 次郎の見合い 9 次郎さんが、誰とつきあおうと勝手だ。 でも、私とだけつきあってほしい。 きよは、心の中で強くさけびました。 次郎さんは、小さな時から、私のことを思って いてくれると信じていた。 でも、次郎…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 46 第五章 次郎の見合い 8 「とてもおもしろい人だった。会っている間、 二人とも笑いっぱなしだった。その人ね、大 きな農家の一人娘なんだって。おらに、養子 にきてくれないかというんだ」 次郎は、見合いをした娘のこと…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 45 第五章 次郎の見合い 7 次郎の見合いの話など、きよは聞きたくあり ません。 でも、気になってしかたがなかったのです。 「うん。した」 「次郎さんは、その人と会わないといったの に、どうして会ったの」 「きよちゃん…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 44 第五章 次郎の見合い 6 次郎さんたら、一カ月ぶりに会ったというの に、見合いの話などして、どういうつもりな のかしら。いやな次郎さん。でも、次郎さん がこっそり見合いをしたら、それもいやだろ うなと思いました。 …

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 43 第五章 次郎の見合い 5 「今、野良の仕事が忙しい。だから、今度 会うのは、一カ月後かな」 「一カ月後? そんなのいや。私、毎日でも 次郎さんに会いたい」 「きよちゃん。毎日なんて無理だよ」 「次郎さんは、私と会うの…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 42 第五章 次郎の見合い 4 「ことわったけれど、どうしても姪と会って ほしいというんだ」 「次郎さんは、その人と会うつもりなの」 「いや、会うつもりはない。おらには、きよ ちゃんという大事な人がいる。だから、会う つ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 41 第五章 次郎の見合い 3 「おこらないで聞いてくれる」 「何なの、次郎さん」 「きよちゃんには、今まで何でも話してきた。 おれ、かくしごとをしたくないので、おもい きって話す。きよちゃん、おこらないでね」 次郎は、…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 40 第五章 次郎の見合い 2 一カ月ぶりに会えると思うと、何時間もかか る遠い道のりも、暗い夜道も、少しも苦にな りませんでした。 何時間もかけ、やっと次郎の所へつきました。 「次郎さん。会いたかったわ」 「きよちゃん…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 39 第五章 次郎の見合い 1 一カ月がすぎました。 今日は、次郎と会う日。 きよにとって、この一カ月は、気が遠くなる ほど長い時間でした。 後二十九日、後十五日、後八日・・・と、次 郎に会える日を指おり数えて待っていまし…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 38 第四章 一ヶ月に一度の出会い 12 「とうちゃん。私たち、けんかは一度もした ことはないわ。次郎さんは、野良の仕事が忙 しいの。だから、会えないんだって」 「そうか。それならいいけれど。このごろ元 気がないから、…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 37 第四章 一ヶ月に一度の出会い 11 「娘よ。青年と会えない日には、心の中で話を しなさい。そうすれば、さみしくないぞ。一ヶ 月なんて、あっという間じゃ。娘よ、元気をだ しなさい」 明神さまは、心の中で娘に話しかけ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 36 第四章 一ヶ月に一度の出会い 10 「娘よ。青年と仲良くしたまえ。けんかをしたの なら、一日も早く仲直りしなさい。けんかが長び くと、ろくなことはないからのぅ」 明神さまは、心の中で娘に話しかけました。 数日後。 …

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 35 第四章 一ヶ月に一度の出会い 9 「おや? 向こうから歩いてくるのは、あの娘だ。 名前は、なんていったかのぅ。そうそう、きよと かいっとったな。湖の氷の上で会ってから、ずい ぶんたつのぅ。何日ぶりじゃろ。あの夜は…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 34 第四章 一ヶ月に一度の出会い 8 「なんか、はずかしくて。そんなにしょっち ゅう家に帰るのはおかしいと、主人にといつ められた。だから、きよちゃんのことを話し たんだ」 「そうしたら、なんていったの」 「きよちゃん…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 33 第四章 一ヶ月に一度の出会い 7 「どうして、私たちが会っていることが、わか ったの」 「おれ、きよちゃんと会う日には、家に用事が あるといって、ここへきていたんだ」 「次郎さん。なぜ、ほんとのことを、主人にい わ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 32 第四章 一ヶ月に一度の出会い 6 「一カ月も、次郎さんに会えないの。そんなの いや。私、毎晩でも次郎さんに会いたい」 きよは、自分の気持を伝えました。 すると、 「きよちゃん。実は、おれ・・・」 次郎が、いいにくそ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 31 第四章 一ヶ月に一度の出会い 5 きよちゃんの気持は、うれしい。 おらも、きよちゃんが大好きだ。 でも、次郎は、心のどこかで不安を感じていま した。 何に対する不安なのか、次郎にもわかりません でした。 次郎は、き…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 30 第四章 一ヶ月に一度の出会い 4 「熱なんてないわ。次郎さん、心配しないで。 私の手は、いつも熱いの。さあ、冷めないう ちにお酒を飲んで」 きよは、次郎に酒をすすめました。 「うまいっ」 次郎は、こんなおいしい酒を…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 29 第四章 一ヶ月に一度の出会い 3 「次郎さん。いつものお酒よ」 「きよちゃん。このとっくり、どうしたの。 すごく熱い」 「いつものように、手で温めてきただけよ」 きよはそういったけれど、手で温めてきた だけで、こん…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 28 第四章 一ヶ月に一度の出会い 2 きよは、次郎のことを考えながら、湖のまわり を足早に歩いて行きます。 しかし、歩いても、歩いても、なかなか次郎の 所へたどりつけません。 何時間もかけ、やっと次郎の所へつきました…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 27 第四章 一ヶ月に一度の出会い 1 寒さの厳しい諏訪にも、ようやくあたたかな 春がやってきました。 諏訪湖の氷も、とけはじめました。 今日は、次郎と会う日。 きよは、湖のまわりを歩いていくことにしま した。 湖のまわ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 26 第三章 湖の氷の上を歩く娘 8 「手長、足長。娘のこと、頼んだぞ」 明神さまは、手長と足長に、娘のことをお願 いしました。 一方、きよと次郎は、いつものように一晩中 語りあかしました。 仕事のこと、家族のこと、霧ケ…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 25 第三章 湖の氷の上を歩く娘 7 「明神さま。娘は、なぜ氷の上を歩くのでしょ う。しかも、夜中に」 手長が聞きました。 「大好きな青年に、会うためじゃ。湖の氷の上 を歩けば、短時間で青年の所へ行ける。娘が毎 晩会いに…

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[童話]火とぼし山 火とぼし山 24 第三章 湖の氷の上を歩く娘 6 「明神さま。何かご用でしょうか」 「夜遅く、もうしわけない。早速じゃが、二人 に頼みたいことがあるのじゃ」 「何でございましょう」 「実は、夜中に、湖の氷の上を歩く娘がいるの じゃ」…