2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 8 ちょうの数は何百匹、いや何千匹 でしょうか。 初めてみる美しいちょうの舞でした。 誰がふいているのでしょうか。 どこからか笛の音が聞こえてきま した。 ちょうたちは、その笛の音にあわ せて、ひらひらと楽しそうに舞っ てい…

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 7 ちょうの羽には、大きな目玉のよ うにみえるもようがついていたの です。 なんとも不思議なもようでした。 少女が赤いちょうにみとれている と、あっちの方から一匹、こっち の方から一匹と、沢山のちょうが、 松虫草の花のまわり…

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 6 少女が高原の頂上めざして登って いくと、枯草の中にニ十本位松虫 草の花がさいていました。 松虫草の花は秋の日をあび、きら きらとかがやいています。 「なんてきれいな花だろう。 兄 ちゃんは松虫草の花をみて、どん な顔をす…

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 5 兄は薄紫色の松虫草が大好きでした。 少女はなんとかして、兄のよろこぶ 顔がみたかったのです。 少女は細い急な道を、高原めざして 登っていきました。 まわりの山々は、赤や黄色に紅葉し はじめていました。 三時間位歩いたでし…

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 4 その後、少女はいろいろな所で、 おおぜいの少年に出会いました。 しかし少女は神様の化身のような 心の優しい少年には、会うことが できませんでした。 少女はその後もずっと明神さまに お参りして、兄のことをお願いし ていまし…

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 3 わしは時々少年の姿になって、諏 訪の地をあちこちみて歩いている ので、おまえのことも兄のことも よーく知っているぞ。 これから も兄と仲良くするのじゃよ」 その声はいつかどこかで聞いたこ とがあるような、なつかしい声で …

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 2 少女が明神さまへ千回目のお参り にいった日。 ひとっこ一人いない静かな境内を、 ぴゅーと心地よい風が通りすぎて いきました。 「なんて気持のよい風だこと」 少女がそうつぶやいた時、社の方 からおごそかな声が聞こえてきま …

明神さまの姿をみた少女

明神さまの姿をみた少女 1 明神さまは、狩猟の神さま・農耕 の神さま・風の神さまともいわれ、 大昔からずっと諏訪の地をおさめ てこられた、偉大な神様でござい ます。 その明神さまへ、雨の日も風の日 も雪の日も、一日も休まずお参り にくる、心の優しい…

風の神様からのおくりもの

「みほようこの日記」で連載して いた「風の神様からのおくりもの」 が終了しました。 http://d.hatena.ne.jp/youko510/20151222#p1 「次の日」「次の日」と押していた だければ、最後まで読むことができ ます。 「風の神様からのおくりもの」は、 諏訪の童…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 31 そしてまゆのことを毎日しっかり 守ってくださっていたのも、風の 神様だったということが。 「まゆのことを毎日守っていただき、 本当にありがとうございました」 おかあさんは、風の神様にむかって、 心からお礼をいいまし…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 30 「まゆ、おめでとう。 やっと歩け るようになったね。 本当によかっ たのー。 わしも毎日まゆのことを 心配していたぞ。 まゆ、やさしいおかあさんのもとに 生まれてよかったのー。 大きくな ったら、おかあさんのように心の…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 29 まゆはにこにこしながら、ゆっくり ゆっくり五歩ほど歩きました。 その時です。 お守りにしていたまゆ玉の中から、 黄金色のがが何万匹と飛び出しました。 黄金色のがは、守屋山に向かって飛ん でいきます。 そして、空には、…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 28 八月八日午後。 夕立がやんだので、おかあさんは まゆをだいて、外に出ました。 まゆが下におろしてほしいとせが むので、まゆを下に下ろしました。 するとどうでしょう。 まゆが何もつかまらずに、しっか りと自分の足で立っ…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 27 「まゆ、よかったねー。 おめでとう。 やっとはいはいができるようになった のね」 おかあさんの目から、大粒の涙がはら はらとこぼれました。 数日後、まゆは、つかまりだちができ るようになりました。 まゆ玉は一日ごとに…

風の神さまからのおくりもの

風の神さまからのおくりもの 26 ある日、おかあさんは、まゆ玉の上 の方が、黄金色になっているのに気 がつきました。 七月のある日の朝。 まゆの部屋に入ったおかあさんは、 「あっ」と大声をあげました。 ねがえりすらうてないまゆが、部屋の 中をはいは…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 25 まゆの顔をみると、ひたいには青 すじがたち、いつになくこわい顔 をしていました。 「まゆはおこっているのだわ」 おかあさんには、まゆ玉が赤黒く なった訳が、なんとなくわかりま した。 赤黒かったまゆ玉も、半年後には …

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 24 「まだねがえりができないの。 早い子は、外を歩いているのにね。 まゆちゃんて、ちょっとおかしいん じゃないの」 近所のこどもたちが大声で話しなが ら、家の前を通りすぎていきました。 その夜、まゆ玉をみたおかあさんは…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 23 一年がすぎました。 まゆと同じころ生まれたこどもは、 どの子もつかまりだちができました。 発育の良いこどもは、外を歩いてい ます。 でも、まゆは、ぺたんとねているだ けです。 ねがえりすらうてません。 おかあさんは、…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 22 一方、風の神様も、毎日まゆのこと を心配していました。 「あーあ、せっかくのまゆ玉が、あ んなに真っ黒になってしまって…。 かなしいのー。 いつになったら、 黄金色のまゆ玉にもどるのだろうか」 「両親は、毎日まゆにや…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 21 「まゆ、おはよう。 元気かな。 今日はとても良い天気だよ」 「まゆ、散歩に行こうね。 外は 気持がいいよ」 「まゆ、体をふいてあげるね。 ほら、気持がいいでしょ」 おとうさんとおかあさんは、毎日 まゆにむかって、やさし…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 20 遠くに住んでいるおばあさんも、ま ゆのことを心配して、時々様子をみ にきてくれました。 「まゆのこと、けっしてあきらめて はいけないよ。 まゆは、きっと歩 けるようになるからね」 おばあさんは、いつも二人をはげま し…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 19 「まゆ、ショックだったのね」 おかあさんは、まゆをぎゅっと胸 にだきしめました。 「まゆ、心配しなくても大丈夫だよ。 医者はああいったけれど、まゆは きっといつか・・きっといつか、歩 けるようになるからね。 まゆ、元…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 18 その夜、まゆ玉をみたおかあさんは、 二重のショックを受けました。 まゆ玉が真っ黒になっていたのです。 「今朝まで黄金色に輝いていたのに、 なぜ真っ黒になってしまったのだろ うか」 よくみると、まゆ玉だけでなく、ま ゆ…

風の神様からのおくりもの 

風の神様からのおくりもの 17 本当に残念なことですが、まゆちゃ んは一生すわることも、立つことも 歩くこともできないでしょう。 も ちろんしゃべることもできないでし ょう」と。 「なんでまゆが…なんでまゆが…」 おかあさんは、次のことばがでません。 …

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 16 二人は、女の子のほほえみを、いつ までもいつまでもあきることなくみ ていました。 こうして、縁側においてあった黄金 色のまゆ玉は、女の子・まゆの大切 なお守りになったのです。 一カ月がすぎました。 おかあさんはまゆを…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 15 「まゆ・・まゆ・・まゆ。 おかあ ちゃん、まゆって、すてきな名前ね」 女の子のおかあさんはそういって、 おばあさんから黄金色のまゆ玉を 受け取りました。 「あなたの名前は、まゆよ。 いい 名前でしょ。 このまゆ玉のよう…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 14 「まあ、小さなまゆ玉だこと。でも、 なんて美しいまゆ玉なの。 こんな まゆ玉は、みたことがないわ。 だ れがおいていったのかしら」 おばあさんはまゆ玉を手にのせると、 娘とまごのいる部屋へとんでいきま した。 「今縁側…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 13 だから、ニ千年位たたないと、黄 金色のまゆ玉は手にはいらなかっ たのです。 黄金色のまゆ玉は、この地方に住 んでいる人々のやさしさをしめす、 鏡のようなものでした。 次の日の朝。 窓をあけたおばあさんは、縁側で きら…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 12 この地方に住んでいる人々のやさ しい気持が、黄金色のまゆ玉にな るのだそうです。 風の神様は、四百年にひとつだけ とれる黄金色のまゆ玉を、とても 大切にしておりました。 そのまゆ玉は、たとえ風の神様が もうひとつほし…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 11 風の神様が縁側においてきたまゆ 玉は、どうも普通のまゆ玉ではな いようです。 風の神様は、守屋山でかいこをか っていました。 かいこからは、毎年沢山のまゆ玉 がとれました。 真っ白いまゆ玉です。 風の神様が住んでおら…