2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまとの約束

女神さまとの約束 42 「おじいさん、おじいさん。だい じょうぶですか」 何度も声をかけましたが、おじい さんは返事をしません。 「だいじょうぶですよ。女神さま が守ってくれていますから。おと うさんと同じように、湯でひたし た黄金色の花びらで、お…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 41 次の朝。 長者は、白駒の背にのって、一人 で家へ帰っていきました。 ふくは、女神さまとの約束を守り、 黄金色の花が咲いている岩場に残 りました。 長者が帰ったその日。 白駒は、ぐったりしたおじいさん をつれてきました。 そして…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 40 長者も、さみしそうでした。 「私だって、とうちゃんといっしょ に家に帰りたい。でも、女神さまに とうちゃんを助けてもらったのだか ら、さみしくてもがまんしなくては・・・。 何年かたてば、家に帰れるかもしれ ないしね」 「そう…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 39 「私、とうちゃんに元気になって ほしかったの。女神さまと約束し た時は、とうちゃんの病気がなお ることしか考えていなかった。 だから、岩場に残るということが どういうことか、なにも考えてい なかったの。よく考えてみると、 岩…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 38 「私、八ヶ岳の女神さまと約束し たの」 「ふく。女神さまとどんな約束を したんだい」 「とうちゃんの病気をなおしても らうかわりに、この岩場にとどま って、病気で苦しんでいる人を助 けるって、女神さまと約束したの」 「そうか…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 37 「とうちゃんとくらすのも、今日 が最後か・・・」 そう思うと、ふくは複雑な気持で した。 長者とふくは、火口跡をみに行き ました。 「とうちゃん。これが、火口跡だよ」 「絶壁だね。下をみると、目がまわ りそうだね」 長者は、火…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 36 「ふくさん。おとうさんの具合は、 どうですか」 白駒は、毎日長者の様子をみにき ました。 長者は、一日ごとに元気になりま した。 元気になった長者は、ふくといっ しょに、岩場のまわりを散歩しま した。 二週間後。 長者は、すっ…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 35 となりの部屋には、湯がどんどん わきでていました。 「白駒。これ、温泉?」 「温泉ですよ。おとうさんがもう 少し元気になったら、温泉へ入れ てあげてください。 ふくさんも、 どうぞ。この温泉は、体があたた まって、気持がいい…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 34 広さは、六畳くらいでしょうか。 部屋の奥には神棚があり、大きな ろうそくに火がともっています。 部屋のすみには、ふとんや枕など、 生活に必要なものがおいてありま した。 「ふくさん。この部屋は、以前女神 さまが使っていた部屋…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 33 「とうちゃん。きっと元気になれ るよ」 「そうだな。元気になれそうな気 がする」 長者は、にっこり笑いながらいい ました。 「白駒。とうちゃんは、どこで休 んだらいいの?」 「女神さまが、部屋を用意してあ ります。そこへ案内し…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 32 「とうちゃん。 手と足を、早く湯の 中へ入れてごらん。 体が楽にな るから」 長者は、手と足を、湯の中へ入れ ました。 「うーん、気持がいい。 生きかえ るような気がする」 長者は、うっとりした顔でいいました。 ふくは、湯でひた…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 31 「とうちゃん。 いつから歩ける ようになったの」 「たった今、歩けるようになった のだ」 おぼつかない足どりでしたが、長 者は歩けるようになりうれしそう でした。 「女神さまが、おとうさんを守っ てくださったのでしょう。 おと …

女神さまとの約束

女神さまとの約束 30 「さあ、白駒。 とうちゃんをこ こへつれてきてください。お願い します」 ふくは、白駒にお願いしました。 白駒は、あっという間に、長者を つれて硫黄岳の岩場へもどってき ました。 長者は、白駒の背からおりると、 よろよろっと三…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 29 ふくと白駒は、あたたかな湯に手 と足をひたしました。 ふくは、花びらを一枚とり、湯に ひたしました。 そして、黄金色の花びらで、手と 足をさすってみました。 すると、ふしぎなことに、疲れが いっぺんにとれました。 「白駒も、…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 28 けっしてこの場所をはなれてはい けませんよ。 おとうさんのことは、 私が守ります。 わかりましたか。 ふく。私との約束を、ちゃんと守っ てくれますか」 女神さまの声でした。 「はい。守ります」 ふくは、そう答えました。 白駒も…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 27 すると・・・。 どこからかやさしい声が聞こえて きました。 「ふく。やっと、黄金色の花をみ つけたのね。 黄金色の花は、私 からのおくりものです。 おとう さんをこの場所へつれてきて、黄 金色の花びらで、おとうさんの体 をやさ…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 26 大きな岩と岩の間に、黄金色の花 が咲いています。 花の大きさは、手のひらくらい。 花びらがたくさんある花でした。 黄金色の花は、太陽にあたり、ぴ かっぴかっと光っていました。 「わぁー、黄金色の花!」 ふくは、大声でさけびま…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 25 ふくと白駒は、再び黄金色の花を さがして歩きました。 今度は馬からおりて、岩の裏まで さがしました。 それでも、黄金色の花はみつかり ません。 あきらめて家に帰ろうとした時、硫 黄岳のけわしい岩場の方から、かい だことのない…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 24 「白駒、疲れたでしょ。 少し休 みましょうか」 「けわしい山道だから、疲れま すね。 ふくさんも疲れたでしょ」 ふくと白駒は、少し休みました。 「白駒。 とうちゃんは、だいじょ うぶかしら?」 「女神さまが守ってくださっている …

女神さまとの約束

女神さまとの約束 23 「白駒、今までに黄金色の花をみ たことがある?」 「いいえ。 私は、いつも女神さ まといっしょですが、黄金色の花 はみたことがありません。 昨夜、女神さまからふくさんと一 緒に黄金色の花をさがすようにと いわれ、その花が八ヶ…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 22 権現岳、 西岳、 編笠山・・・ ふくと白駒は、あっちの山、こっち の山と、八ヶ岳の山々をくまなく走 り、黄金色の花をさがしました。 でも、黄金色の花は、どこにもあり ませんでした。 黄金色の花といっても、どんな形を しているの…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 21 「白駒。 赤岳からみる富士山は、 すてきね」 「女神さまも、富士山をみるのが 大好きです。 だから、ときどき ここへきますよ」 白駒が教えてくれました。 赤岳の山頂からは、阿弥陀岳・横岳・ 硫黄岳・たてしな山などがみえます。 …

女神さまとの約束

女神さまとの約束 20 次は、横岳。 断崖絶壁の岩場には、紫色のイワ ギキョウが咲いています。 チョウノスケソウ・イワツメクサ も咲いていました。 横岳にも、黄金色の花はありませ んでした。 続いて、八ヶ岳の主峰、赤岳をさ がしました。 赤岳は、赤褐…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 19 少し下ると、うすい黄色の花が咲 いていました。 「白駒。 ちょっと止まって。この 花、オダマキでしょ」 「はい。キバナノヤマオダマキです。 せいそな花ですね」 「森の妖精みたい。 山でこの花に 会ったら、どの人もほっとするでし…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 18 「白駒。けわしいがけね。 下を みると、すいこまれそうね。 こ わいわ」 ふくは、白駒にしがみつきました。 山頂には、たくさんの礫がころが っていました。 白駒も歩きにくそうです。 礫と礫のすきまには、馬の顔の形 をした白い花…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 17 ふくと白駒は、けわしい道を登った りおりたりして、黄金色の花をさが しました。 しかし、天狗岳には、黄金色の花は ありませんでした。 次は、根石岳をさがしました。 この山でも、黄金色の花はみつかり ませんでした。 続いて、と…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 16 「女神さまは、こまどりやうぐいす の声が、大好きなんです。 こまど りのおすは、顔と胸が鮮やかな橙色 をしていて、きれいですよ」 「こまどりって、美しい鳥なのね。 いつかこまどりの姿をみたいわ」 からまつ林を通ると、「チッ・…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 15 西天狗岳は、青天狗岳ともよばれ、 からまつなどの針葉樹林が続いて います。 森の中には、池もありました。 笹の林を通ると、「ヒンカララ・ヒ ンカララ」と、小鳥が鳴いています。 「白駒。あの鳥は、なんという鳥?」 「こまどりで…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 14 「この山のどこかに、黄金色の花 が咲いているのね。 どの山に咲 いているのかしら」 「さあ・・・。 女神さまの話では、 黄金色の花はぴかっぴかっと光って いるので、おりてさがさなくても、 私の背中からみつけることができる そう…

女神さまとの約束

女神さまとの約束 13 ふくは、白駒の背に、とび乗りま した。 白駒は、「ひひーん」と一声なく と、すごいいきおいで走りだしま した。 その早いことといったら、ふくは こんなに早く走る馬を、みたこと がありません。 ふくは、ふりおとされないように、 …