2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

母の絵手紙

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母の短歌

[母の短歌]追憶の風 吾が米寿祝ひて子等の編みくれし 歌集の成りて夫に供ふる 以上 母の歌集「追憶の風」より この歌集を作った後も、母は亡くなる数日前 まで、歌を詠んでいました。 昨年7月11日 満95才で亡くなりました。

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 マヤ文明の地球滅亡説に浮上せし 十二月二十一日の日輪何事もなし 赤石の上空の日輪七色の 雲に囲まれ瑞祥となる

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 元旦は若水を汲み豆殻を 炊きゐし囲炉裏の父を偲びぬ 永久凍土に発見の種より開花せし スガワラビランジの白花優し

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 この朝ポストより出す新聞の 持ちし両手に冷気伝はる 裸木となりし白樺の幹白く 朝日に照らひ影長く引く

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 衆院選直前までも新政党 生れて消えて十二党となる 目の前の路を横切る仔狸に 思はず車を止めて見守る

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 何もかも捨てねばならぬ此の家の 家財道具に心の残る 小学校の廊下の隅に唄ひつつ 遊びし思ひお手玉手にす

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 媼一人が守る休耕田一面に 秋桜風に波打ち揺るる 精米機に出でし糠にて糠床作り 胡瓜やセロリ漬けて楽しむ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 吾住まぬ家となりたる庭内に ピンクの芙蓉コルチカム咲く 白菜の出荷調整に捨てし畑 作りし人等なげき悲しむ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 淋しさも少し持ち来て娘の家に 移りて一年健やかにあり 栄養のバランス考へ作り呉るる この娘の料理は吾が味に似る

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 通院の病院前に移植されし 二百年の松の活着祈る 幾冊もの吟行歌集に遠き日の 諸々の思ひ出浮かび来るなり

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 娘の許へ移りし家に迷ふなく 夫よ来ませと迎へ火を焚く 道の駅の棚に売られる虫籠の 鈴虫次々に涼しげに鳴く

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 電球に靴下を被せ繕ひて 履かせし戦後を子等に語りぬ 働きて初めて貰ひし給料の 嬉しかりしを孫は言ひたり

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 悪賢き郭公と思へず爽やかに 鳴けるを今日も心地良く聞く 病院の待合室の高窓に おにやんましばし羽根休めをり

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 初恋の香りするとふ芝桜の 花に寄りゆきしばし香の中 鶯の鳴き声真似る口笛に すぐに応へて爽やかに鳴く

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 天空にリングを描きし金環日食 初めて見得し今日の喜び 吾等住む地球と月と太陽が 一直線に今列びたり