2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 28 すると・・・。 目の前に、真っ青な大きな湖が。 湖は、しーんと、静まりかえって いました。 「なんて美しい湖だろう」 たけるは、湖にみとれていました。 ふと気がつくと、老人の姿がみえ ません。 「どこへ行ってしまったのだろう」 あ…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 27 「この弓をなぜ譲っていただくこと ができないのか、今日はそのわけを お聞きしたいのですが」 すると、老人は困った顔をして、し ばらく考えこんでいました。 「そのわけを、そなたに教えましょう。 わしの後をついてくるがいい」 老人は…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 26 一時間後。 城は焼け落ちました。 誰も退治することができなかった 賊を、たけるは見事に征伐したの です。 越後の帰り、たけるは老人の家に 寄りました。 「このすばらしい弓のおかげで、城 にたてこもっていた賊をみごとに 討つことがで…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 25 普通の弓では、高い山の頂にある 城まで矢が届きません。 たけるは、老人から借りた弓に、 火のついた矢をつけ、城に向かっ て矢をはなちました。 「ビューン」 「ビューン」 矢は白い煙をあげ、城に向かって 飛んでいきます。 しばらくす…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 24 老人は、しばらく何か考えている ようでした。 「この弓は、わしがこの世で一番 大切にしているもの。 そなたを 信じて、弓を貸してあげよう」 「ほんとうですか。 ありがとう ございます」 次の朝。 たけるは、老人が大切にしている 弓を…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 23 「そなたは、これからどこへ行くの じゃ」 「越後の城へ、賊を討ちに行きます」 「越後へ?」 「はい。父から、東方の十二の国を 平定するようにと命じられました」 「父上の名前は」 「影行天皇です」 「すると、そなたは、皇子なのじゃ …

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 22 「この弓があったら、東方の国も たやすく征伐できるかもしれない」 たけるは、この弓がほしくなりま した。 「すばらしい弓ですね。 この弓 を譲っていただけませんか」 「貸すことはできるが、譲ること はできません」 「そこを何とか」…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 21 「誰だろう」 外に出ると、月明かりの下で、老 人が弓をひいていました。 曲がっていた腰が、しゃんと伸び ています。 別人のようでした。 「おこしてしまったかな」 「いいえ。ぐっすりひと眠りしま した」 たけるは、老人の弓を借りて引…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 20 「さあ、ゆっくり休みなさい」 「ありがとうございます。それで は休ませていただきます」 たけるは、眠りにつきました。 どの位の時間がすぎたのでしょうか。 「ビューン」 「バシッ」 「ビューン」 「ビューン」 「ばしっ」 どこからか…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 19 「こんなに遅く、どなたかな」 腰の曲がった老人が顔をだしました。 「旅の者です。今夜泊めていただけ ないでしょうか」 「こんな山奥なので、何のもてなし もできませんが、どうぞ」 ぐったり疲れていたたけるは、ほっ としました。 老…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 18 ある日。 たけるは、城にたてこもっている 賊を討つため、越後へ向かってい ました。 碓氷峠を越え、山深い里にたどり ついた時、日が暮れてしまいました。 「困ったな。今夜は野宿か」 そう思いながらとぼとぼ歩いていく と、みすぼらし…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 17 「そんなことはありませんよ。 たけるに、東方の国を平定してほ しいだけですよ」 そういって、おばはたけるをなぐ さめました。 おばは、すさのおのみことから献 上された「草薙の剣」と、火うち石 などが入っている袋を、たけるに渡 し…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 16 旅の途中、伊勢の倭比売命を訪ね ました。 「おばさま。私は、父からきらわ れているのでしょうか。 西方の 熊襲や出雲を平定し、さきほど国 へ戻ったばかりなのに、父はまた 東方の国を征伐せよと命じました。 兵もよこさず、家来はたっ…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 15 ところが・・・。 西方の国から戻ったばかりのたける に、天皇は次の命令を出しました。 「東方の伊勢・尾張・三河・遠江・ 駿河・甲斐などの十二の国の、荒れ すさぶ神や朝廷に服従しない者たち を征伐し、それらの国を平定しなさ い」と…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 14 後からあがってきた出雲たけるは、 疑うこともなく偽物の太刀を身に つけました。 「さあ、太刀合わせをしよう」 たけるが声をかけました。 しかし、太刀を抜こうとしましたが、 抜くことができません。 「あっ」と驚いている出雲たけるを…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 13 「偽物の太刀を作って太刀を交換し、 太刀合わせをしたらどうだろう」 たけるは、イチイガシの木で、偽物 の太刀を作りました。 数日後。 たけるは、肥川で、出雲たけると水 浴びをしました。 先に川からあがったたけるは、出雲 たけるの…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 12 おうすは、熊襲たけるの兄弟を征伐 し、熊襲の地を平定しました。 その時から、おうすは「日本武尊」 とよばれるようになりました。 熊襲の帰り、たけるは出雲へ寄りま した。 着いてすぐ、出雲たけると仲良しに なりました。 たけるは、…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 11 「たしかに、西方の国には、わしら 以外に強い者はいません。 ところ が、大和の国には、わしらよりもっ と強いあなたがいる。 あなたに、たけるという名前をさし あげます。 これからは、日本武尊 と名のられたらよいでしょう」 そのこと…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 10 「どうかその太刀を動かさないで ください。 お話したいことがあ ります」 「何だ」 「あなたは、どなたですか」 「私は、大和の国を治めている景 行天皇の皇子、おうすのみこと。 天皇は、おまえたち二人が服従し ないので、うちとってこ…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 9 「たしかに、西方の国には、わしら 以外に強い者はいません。ところが、 大和の国には、わしらよりもっと強 いあなたがいる。 あなたに、たけるという名前をさし あげます。 これからは、日本武尊 と名のられたらよいでしょう」 そのことば…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 8 おうすは弟のたけるを追いかけ、 梯子の下においつめました。 そして、背中をつかむと、剣で尻 を刺しました。 「どうかその太刀を動かさないで ください。お話したいことがあり ます」 「何だ」 「あなたは、どなたですか」 「私は、大和の…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 7 おうすは、早く酔うように、何度も 二人に酒をすすめました。 宴がたけなわになった頃。 おうすは懐から剣をとりだすと、兄 のたけるの襟をつかみ、胸をぐさり と刺しました。 「きゃあー」 「たけるさまが刺されたー」 女の人たちの悲鳴で…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 6 祝宴の日。 おうすは、おばの倭比売命から借り た着物を着て、可憐な少女に変装し、 熊襲たけるの家へ行きました。 そして、祝宴に参加する女たちの中 にまぎれこみ、うまく家の中へ入る ことができました。 「そこのかわいい少女、こっちへ…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 5 兄弟は、新しい大きな家を作り、 そこで暮らしているようでした。 「こんなに厳重では、二人に近づ くことさえできない」 おうすは、とほうにくれました。 何かいい方法はないかと、遠くか ら家のまわりを何度もみてまわりま した。 「近い…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 4 乱暴なおうすを身近におきたくな いと思った天皇は、「西方の熊襲 に、熊襲たけるという猛々しい兄 弟がいる。 朝廷に服従しない二人を討ちとり、 熊襲を平定しなさい」と、おうす に命じました。 おうすは、熊襲に向かって旅立ち ました。 …

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 3 「なぜそんな乱暴なことをしたのだ。 おおうすはだいじょうぶか」 「さっき見にいったら、死んでいま した」 「ばかもの」 天皇は、大声でおうすをしかりま した。 「おうすは、乱暴な恐ろしいこども だ。 こんなささいなことで、兄を 殺し…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 2 しかし、五日たっても、おおうすは 顔を出しません。 「おおうすは、今朝も顔を出さない。 おまえは、兄にちゃんと伝えたのか」 「伝えました」 「どのように伝えたのだ」 「何度も伝えました。 でも、兄は 食事の席に顔をだしません。しか…

諏訪の神話「明神さまの弓」

明神さまの弓 1 十二代、影行(けいこう)天皇のこ どもに、「おうすのみこと」という 気性のはげしい乱暴な皇子がいま した。 後に、熊襲たけるを討ち、日本武尊 (やまとたけるのみこと)といわれ たかたです。 ある朝。 「おおうすは、なぜ食事の席に顔…