2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 9 二月七日。 今日は人間たちに雪の舞をみてもらう日です。 百五十人の雪んこたちは、空の神様とともに、 朝早く空の国を出発しました。 雪んこたちは何回かのリハーサルで、舞がみ ちがえるほどうまくなりました。 もうすとー…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 9 その結果、何度も下界におりる練習をしなくては だめだということになりました。 空の国では十ニ月に二回、一月に入ると一週間 も続けて、舞のリハーサルがおこなわれました。 さあ、おどろいたのは下界に住んでいる人間たち…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 8 百五十人の雪んこたちは、いっせいに空の国を 出発しました。 ところがあんなにきびしいけいこをしたのに、「す とーん」とまっさかさまに落ちてしまう雪んこばか りでした。 最後までちゃんとまった雪んこは一人もいません…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 7 るみは、何度も何度も舞の先生におしえてもらい、 一生けんめいけいこをしました。 ほかの雪んこたちの何百倍もけいこをしたのです。 いやみをいわれても、けなげにがんばるるみの姿 をみて、一人ふたりとるみにやさしいこと…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 6 代表に選ばれなかった雪んこたちは、るみにやき もちをやきました。 「るみちゃん、あんなおどりかたではだめよ。もっと 手や足を高くあげなくては」 「なぜるみちやんは、みんなにあわせることができ ないの」 代表に選ばれ…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 5 空の神さまはさっそく雨や風と相談して、長野の町 へ雪んこをおおぜいつれていくことにしました。 空の国では、各地区から雪の舞をする百五十人の 代表が選ばれました。 代表の雪んこたちは、舞の先生のもとできびしいけ い…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 4 しかしるみは目がみえないので、何千回もけいこし なくてなりません。 がんばりやのるみは、ころんでもころんでも自分で おきあがり、一生けんめい舞のけいこをしました。 そしてるみは一ヶ月で基本の舞ができるようになっ …

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 3 「るみ、もっと左足を高くあげて」 おかあさんの声で左足をあげると、るみはバラン スをくずし、すってんころりんところんでしまいます。 おかあさんにとって、目のみえないるみに雪の舞 を教えることは、想像していた以上に…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 2 るみたち雪んこが、最初におぼえなくてはなら ないこと、それは雪の舞でした。 るみも生まれてすぐ、おかあさんから雪の舞の 手ほどきを受けました。 「ちら、ちら、ちら」 「ちーら、ちーら、ちーら」 これが雪の舞の基本で…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 1 暑い夏が終わり、さわやかな秋がやってきました。 遠い空の国では、たくさんの雪のこども・雪んこが 生まれました。 例年の十倍も多い雪んこです。 生まれたばかりの雪んこは、まんまるで透明です。 大きくなるにつれ、雪ん…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 13 少女は何本かの松虫草の花をたおると、足早 に急な坂道をくだって家にいそぎました。 明神さまが住んでおられる社が、遠くの方にみ えてきました。 明神さまは少女とわかれた後、風になって諏訪 …

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 12 こういうと、明神さまは「ぴゅー」と風になって、い つも住んでおられる社の方にむかってとんでい きました。 「ぴゅー」というここちよい風で、少女ははっとわ れにかえりました。 松虫草の花が…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 11 その声は少年の声ではなく、いつか聞いたことの ある明神さまの声でした。 少女は明神さまに病気の兄のことを、何度も何度 もお願いしました。 「おまえの兄を思う気持は、よくわかった。何年か …

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 10 「少女よ、よくきたのー。わしはおまえに会える日 をずーと待っていたぞ。わしは諏訪の神・明神じ ゃよ。さっき松虫草のまわりをまっていた赤いちょ うは、くじゃくちょうというのじゃ。 この高原…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 9 小鹿は時々たちどまり、後をふりかえっています。 どこまでも続くすすきの原を、少女は小鹿の後を ついて足早に歩きました。 どの位歩いたのでしょうか。 少女には長い時間歩いたような気がしました…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 8 少女が後をふりむくと、いつきたのでしょうか。 かわいい小鹿が少女の後にちょこんと立っていま した。 小鹿の耳はたてにふたつにわれていました。 「この小鹿は明神さまのおつかいをしている小鹿 …

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 7 「この赤いちょうは、高原に住んでいるというくじ ゃくちょうではないだろうか」 少女は赤いちょうの舞をみているうちに、幼い時 おじいさんから聞いた不思議な話を思い出しま した。 「あの山のむ…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 6 少女が赤いちょうにみとれていると、あっちの 方から一匹、こっちの方から一匹と、沢山のち ょうが、松虫草の花のまわりに集まってきました。 そして沢山のちょうは大きなまーるい円をえが きながら…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 5 松虫草の花は秋の日をあび、きらきらとかがや いています。 「なんてきれいな花だろう。兄ちゃんは松虫草 の花をみて、どんな顔をするだろうか」 少女は松虫草の花をじっとみていました。 すると、…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 4 少女はなんとかして、兄のよろこぶ顔がみたかっ たのです。 少女は細い急な道を、高原めざして登っていきま した。 まわりの山々は、赤や黄色に紅葉しはじめていま した。 三時間位歩いたでしょうか…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 3 少女は少年の姿になっているという明神さまに直 接あい、病気の兄のことをお願いしたいと思いま した。 その後、少女はいろいろな所で、おおぜいの少年 に出会いました。 しかし少女は神様の化身の…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 2 少女が明神さまへ千回目のお参りにいった日。 ひとっこ一人いない静かな境内を、ぴゅーと心 地よい風が通りすぎていきました。 「なんて気持のよい風だこと」 少女がそうつぶやいた時、社の方からお…

明神さまの姿をみた少女

[童話]明神さまの姿をみた少女 明神さまの姿をみた少女 1 明神さまは狩猟の神さま・農耕の神さま・風の 神さまともいわれ、大昔からずっと諏訪の地を おさめてこられた、偉大な神様でございます。 その明神さまへ、雨の日も風の日も雪の日も、 一日も休まず…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 10 それから四百年がたちました。 雪がとける頃、守屋山のふもとの村では、たくさ んの黄金色の花が咲きます。 心の優しい少女が咲かせた黄金色の花が、今 では何万本にも増え、みごとに咲い…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 9 兄も今度こそよくなるだろう。おまえの苦労ももう少 しじゃ。いつまでも今のやさしい気持を忘れないよ うにな」 そういうと、明神さまは少女に黄金色の花を一株く れました。 少女は家に帰…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 8 するとまた声が聞こえました。 「少女よ、長い間、本当によくがんばったのー。目 の前の黄金色の花は、おまえが咲かせた花じゃ。 兄を思うやさしいしい気持が、この黄金色の花に なったのじ…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 7 どのくらい歩いたのでしょうか。 ふもとのひあたりの良い場所についた時、少女はあっ と驚きの声をあげました。 何百年もの間、おおぜいの人が探してもみつけること ができなかった黄金色の…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 6 どこをさがしても、黄金色の花などありません。 枯葉が一面に落ちているだけでした。 あちこち歩きまわり疲れた少女は、枯葉の上に 腰をおろしました。 そしていつの間にかねむってしまった…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 5 それから三年三カ月がすぎました。 山深い村にも、ようやく温かな春がやってきました。 少女は兄を喜ばそうと、守屋山へ黄金色の花を探 しに行こうと思いました。 幻の花といわれている黄金…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 4 そんな兄に少女はどう接したら良いのかわからず、 ただおろおろするばかりでした。 心のやさしい少女でしたが、そんなことがたび重 なると、兄をうとましく思うこともありました。 「私は兄…