2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 5 やしきを出てから、どのくらいの 時間がすぎたのでしょうか。 やっと、麦草峠に着きました。 足の丈夫な清太でしたが、峠に 着いた時には、ぐったり疲れてい ました。 きよちゃんといっしょにきたか った。 そう思うと、涙がでました…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 4 清太は、誰も通らない山道を、き よのことだけ考えて歩きました。 清太の足音だけが聞こえます。 「さみしい道だな」 清太は、ふぅーと大きな息をはき ました。 しばらくいくと、東の空がだんだ んに明るくなってきました。 そして、…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 3 きよちゃんは、おらが追い出され たことを知ったら、心配するだろ うな。 やしきにもどり、もう一度、庄屋さ まにお願いしてみたらどうだろう。 いや、そんなことをしてもむだだ。 じゃあ、きよちゃんから、庄屋さ まにお願いしてもら…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 2 でも、行く所がありません。 家へ帰れば、父や母が心配し ます。 清太は、白駒がたおれていた という湖へ行こうと思いました。 湖をみながら、これからのこと を考えようと思ったのです。 でも、湖は、麦草峠の近くにあ るということ…

女神さまからのおくりもの

清太、山の中の湖へ 1 次の朝。 清太は、夜が明けないうちに、 庄屋の家を去りました。 空には、星がきらきら輝いて います。 「きよちゃん。たくさんの思い出 を、ありがとう。八年間、きよち ゃんと暮らすことができて、ほん とうに幸せだった。おらは、…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 21 白駒は、きよとの思い出につなが る大切な馬だったからです。 白駒の背にきよをのせて走ること はもうないのだなと思うと、清太は さみしく思いました。 「白駒。たくさんの楽しい思い出 をありがとう。元気で暮らすのだよ」 白駒は、何…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 20 その日。 清太は、いつもより念入りに、馬 小屋の掃除をしました。 そして、馬たちを小川へつれてい き、ていねいに馬の体を洗いました。 どの馬も、みちがえるようにきれい になりました。 「今日で、お別れだね。今まであ りがとう。…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 19 わしは、きよも清太も、どちらも 手ばなしたくない。 二人とも、自分のそばにおきたい。 わしに勇気があったら、二人を結 婚させてあげられるのに。 きよ、そして清太。勇気のないわ しを、どうか許してほしい。 吉衛門は、心の中で二人…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 18 「ありがとうございます。この八年 間、庄屋さまには、わが子のよう にかわいがっていただきありがと うございました。私は、幸せ者です。 庄屋さまはじめおじょうさま、この 家で働いている人たちに親切にし ていただいたこと、一生忘…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 17 でも、心の中では、こうさけんで いたのです。 「おらは、きよちゃんと結婚でき るような家に生まれたかった。そ して、きよちゃんと結婚したかっ た」と。 「清太。八年間、よく働いてくれ たね。ありがとう。これは、私の 気持だ。こ…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 16 吉衛門は、清太にお願いしました。 「庄屋さま。今日一日だけ、この家 にいさせてください。私は、おじょう さまと白駒に、それとなくお別れが したいのです」 「清太。今日、一日だけだぞ。明 日の朝早く、みんながおきないう ちに、こ…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 15 「清太。おまえの気持は、よく わかった。残念だが、これ以上 わが家で働いてもらうことはで きない」 「なぜですか、庄屋さま。おじょ うさまのことは、今日限りきっぱ り忘れます。どうか今まで通りこ こで働かせてください。お願いし…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 14 「いいえ。私こそ失礼なことをい い申し訳ありません。先日、霧ケ 峰高原へゆうすげの花をみに行 った時、おじょうさまから縁談の 話を聞きました。 でも、私は、おじょうさまに自分の 気持を伝えることができませんで した。庄屋さまに…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 13 「清太。おまえは、何もかもわか っているのだね。清太の家が、わ が家と同じくらいの家柄だったら、 どんなにいいだろう。私は、清太 に会った時から、そう思っていた。 そして、清太が一人っ子でなかっ たら、私の息子として、この家…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 12 「でも・・・おら・・・いや、私の家 は、貧しい。食べていくのが精 一杯です。それに、第一、家柄 が違います。だから、どんなに おじょうさまが好きでも、おじょ うさまと結婚させてくださいとは いえません。いや、いってはい けない…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 11 「はい、わかっております。私 が、家柄のいい家に生まれて いたら、おじょうさまと結婚させ てくださいと、お願いしたと思い ます」 「なんだと! 清太」 吉衛門は、興奮して大声でい いました。 「わしは、清太のことが大好き だ。清…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 10 しかし、清太は、きっぱりいいま した。 「はい。私は、おじょうさまのこと が大好きです」と。 「清太。おまえは、この家の使用 人だということを忘れたのか」 吉衛門が、強い口調でいいました。 「庄屋さまにいわれなくとも、私に は…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 9 吉衛門は、どう聞いたらいいのか わからず、口ごもってしまいました。 「おじょうさまのことなど、なんとも 思っていません」 清太がそういってくれるのを、吉衛 門はひそかに期待していました。 ところが、 「おら・・・いや私は、おじょ…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 8 「何かご用でしょうか」 「清太。そこへおすわり」 「はい」 清太は、何をいわれるのだろう と、緊張しました。 「清太は・・・娘のきよを・・・どう 思う?」 「おじょうさまですか。おじょうさ まはやさしいし、明るいし、しっ かりして…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 7 「それはそうと、清太はきよの ことをどう思っているんだい」 「清太さんの気持をたしかめた ことはないから、わからない。 でも、私のことは好きだと思う」 「そうか。清太を、ここへよん でおいで」 「はい」 きよは、清太をよびに行き…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 6 「私は、なんといわれても平気 だわ。清太さんは、りっぱな人 だもの。誰からも好かれているし」 「きよ、たのむ。とうちゃんの気持 も、わかってほしい」 吉衛門は、きよのいうとおりだ と思いました。 でも、きよには、同じような環境 …

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 5 「きよ、正直にいおう。とうちゃん は、清太が大好きだ。清太は、 誠実な心のやさしい青年だ。体 も丈夫だし、自分の考えもしっ かり持っている。その上働き者 だ。家柄のことを除けば、きよ の結婚相手として、もうしぶん のない青年だ」…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 4 「とうちゃん。家柄って、そんな に大事なの」 「大事だ。幼い時から、同じよう な環境で育った人なら、結婚して もうまくやっていける。でも、育っ た環境が違うと、うまくやってい けないのだよ」 「とうちゃんは家柄が大事だとい うけ…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 3 「きよは、いつから、清太を好 きになったんだい」 「清太さんが、わが家にきた時 から。でも、最初は、大好きな 兄ちゃんという感じだった。清 太さんが心から好きだとわか ったのは、霧ケ峰高原へゆうす げの花をみに行った時」 「そうか…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 2 「きよ。好きな人がいるのかい」 「はい」 「とうちゃんが、知っている人かな」 「清太さん」 「清太・・・清太って、わが家で働 いている清太かい」 「そう、清太さん」 「きよ。清太は、わが家の使用 人なのだよ」 「とうちゃん。なぜ、…

女神さまからのおくりもの

それぞれの思い 1 八月のある日。 「きよ、ちょっと」 「とうちゃん。なに」 「きよは、いとこの次郎のことを、 どう思っているんだい」 「次郎さんは、やさしい人だわ。 でも、私は、次郎さんと結婚する 気はありません」 きよは、きっぱりいいました。 「…

女神さまからのおくりもの

ゆうすげの花咲く高原で 34 「とうちゃん。ゆうすげの花って、 美しい花ね。私、時間がたつのも わすれて、ゆうすげの花をみてい たの。おそくなってごめんなさい」 「無事に帰ってくれば、それでい いのだよ。清太、遅くまでご苦労 さま。風呂に入って、…

女神さまからのおくりもの

ゆうすげの花咲く高原で 33 空には、まんまるの月が。 星もきらきら輝いています。 用意してきたちょうちんも必要 ないほどの明るさでした。 二人は、白駒の背にのり、家に いそぎました。 「とうちゃん。ただいま」 「ただいまもどりました。おそ くなっ…

女神さまからのおくりもの

ゆうすげの花咲く高原で 32 でも、清太は、自分の気持をきよ に伝えることができなかったのです。 きよちゃんには、幸せになってほ しい。 大好きだからこそ、自分は身をひ くべきだと、清太は思ったのです。 二人は、時のたつのも忘れ、ゆう すげの花をみ…

女神さまからのおくりもの

ゆうすげの花咲く高原で 31 清太は、はっとしました。 でも、清太は、自分の気持をきよ に伝えることができませんでした。 「清太。おまえは、誰に遠慮をして いるのだ。吉衛門に遠慮をしてい るのか。きよが好きなら、好きだよ といえばよいではないか」 …