女神さまからのおくりもの


   それぞれの思い 1


八月のある日。
「きよ、ちょっと」
「とうちゃん。なに」
「きよは、いとこの次郎のことを、
どう思っているんだい」
「次郎さんは、やさしい人だわ。
でも、私は、次郎さんと結婚する
気はありません」
きよは、きっぱりいいました。



「なぜ?」
「私、人のいいなりになっている
次郎さんを、好きになれないの。
それに、なんだかたよりないし」



「たしかに、次郎にはそういう所が
ある。庄屋の仕事は、大変だ。村の
人たちの先頭にたってやっていかな
くてはならないからね。わが家の仕
事を安心して手伝ってもらえる人が、
むこになってくれるといいのだが」
結婚とは難しいものだと、吉衛門は
思いました。


       つづく