2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 10 「風の神様、例の黄金色のまゆ玉 でございますか。 そんな大切な まゆ玉を、あの子に…。風の神様、 本当にあの子がまゆ玉をいただい てよろしいのでしょうか」 「いいんじゃよ。 あの子が幸せ になってくれれば…。 わしは、 …

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 9 「風の神様、あの子を助けていた だき、本当にありがとうございま した。 いちじはどうなることか と私もはらはらしましたが、風の 神様のおかげで助かりました。 本当にありがとうございました。 このご恩は、一生わすれません…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 8 神様がまゆ玉をなでると、まゆ玉 はきらっきらっと黄金色に輝きだ しました。 神様は祈るような気持で、まゆ玉 をそっと縁側におきました。 「女の子も助かったし、さてわし も社に帰って休むとしよう」 神様はまた風になって、…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 7 「おめでとう。よかった、よかった」 人々の喜びの声が聞こえてきました。 「女の子よ、助かって本当によかった のー。もうだめかとわしも心配したぞ」 神様は、ほっと胸をなでおろしました。 女の子のことを心もとなく思った神…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 6 しかし、女の子は、なかなかうぶ 声をあげません。 「だめかもしれんのー」 でも、神様は、「女の子よ、がん ばれよ。がんばるのじゃ」と、女 の子をはげましつづけました。 どのくらいの時間がすぎたのでし ょうか。 神様にも…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 5 「小桜姫さま、小桜姫さま。 どう か私を…どうか私を助けて…」 神様の耳に、いろいろな人の声が 聞こえてきました。 「これは大変じゃ。 わしの力でも、 この子を助けることができないかも しれないぞ」 神様は、女の子の家のま…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 4 「どうもあの家らしい」 神様は、光っている家をめがけて おりていきました。 「どうか赤ちゃんを…どうか赤ちゃん を助けてください。お願いします」 「神様、どうか孫を助けてください ませ」 「この子は、おそらく助からない…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 3 風の神様、お願いです。 どうか その子を…、どうかその子を助けて くださいませ」 その声は、小桜姫でした。 「あのおしとやかな小桜姫が、こ んなにあわてているようでは、よ ほど急をようするようじゃな」 神様はさっと身支度…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 2 「たっ、たった。 たっ、たった」 誰かが足早に歩く音が、聞こえて きました。 「誰じゃろう。ひどくあわててい るようじゃが。 何事もなければ いいがのー」 神様は、ぐるりとあたりをみまわ しました。しかし、誰もいません。…

風の神様からのおくりもの

風の神様からのおくりもの 1 五月十日。 からりと晴れたさわやかな日でした。 「ぴゅー、ぴゅーー」 気持の良い風が、諏訪盆地を通りす ぎていきます。 風の神様は、いつものように諏訪湖 のまわりをひとまわりして、たった いま社に帰ってきたところです。…

冬桜

倭建が借りた弓は大蛇の弓

「みほようこの日記」で連載していた 「倭建が借りた弓は大蛇の弓」が、終 了しました。 「倭建が借りた弓は大蛇の弓」は、諏 訪地方に伝わっている話。 「ヤマトタケル」が諏訪の明神さまから 借りた弓は、どんな弓だったのでしょうか。 小学校高学年のみな…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 30 「明神さま、私に力を貸していた だきありがとうございました」 倭建の声が、湖にこだましました。 「倭建よ、気をつけて、東方の国 へ行くのじゃよ」 どこからか厳かだが優しい明神さま の声が聞こえてきました。 おわり

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 29 大蛇は、ぶるっと大きく頭をふると、 帯を引っ張りました。 すると、湖を二つに分けるほどの、 大きな弓になりました。 「どうじゃな。 これは、わしの使い をしている大蛇でのぅ。 この湖 の守り神なのじゃ」 「あっはっはぁ…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 28 倭建はいわれるままに、腰に結ん でいた帯をとくと、大蛇に向かっ て投げました。 大蛇は、二つの口で帯の両端をく わえると、がばっと立ち上がりま した。 頭が二つ、体が一つの双頭の大蛇 でした。 「これが、あの弓の正体…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 27 ふと気がつくと、老人の姿がみえ ません。 「どこへ行ってしまったのだろう」 あたりをさがしましたが、老人は いません。 静かだった湖が、突然大きく波立 ちました。 そして、湖の中から、大蛇の頭が 二つ現れました。 「そ…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 26 すると、老人は困った顔をして、 しばらく考えこんでいました。 「そのわけを、そなたに教えまし ょう。 わしの後をついてくるが いい」 老人は、裏山の奥深い場所へ、倭 建をつれていきました。 すると・・・。 目の前に、真…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 25 誰も退治することができなかった 賊を、倭建は見事に征伐したのです。 越後の帰り、倭建は老人の家に寄 りました。 「このすばらしい弓のおかげで、城 にたてこもっていた賊を討つことが できました。 ありがとうございま し…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 24 普通の弓では、高い山の頂にある 城まで矢が届きません。 倭建は、老人から借りた弓に、火 のついた矢をつけ、城に向かって 矢をはなちました。 「ビューン」 「ビューン」 矢は白い煙をあげ、城に向かって 飛んでいきます。 …

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 23 「そうか」 老人は、しばらく何か考えている ようでした。 「この弓は、わしがこの世で一番 大切にしているものじゃ。そなた を信じて、弓を貸してあげよう」 「ほんとうですか。ありがとうご ざいます」 次の朝。 倭建は、老…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 22 「そこを何とか」 「この弓は、譲れません」 老人は、きっぱりいいました。 何度お願いしても、「譲れません」と いうばかり。 「そなたは、これからどこへ行くの じゃ」 「越後の城へ、賊を討ちに行きます」 「越後へ?」 「…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 21 「おこしてしまったかな」 「いいえ。ぐっすり眠りました」 倭建は、老人の弓を借りて引いて みました。 倭建が持っている弓より、数倍強 い弓でした。 「この弓があったら、東方の国も たやすく征伐できるかもしれない」 倭…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 20 倭建は、眠りにつきました。 どの位の時間がすぎたのでしょうか。 「ビューン」 「バシッ」 「ビューン」 「ビューン」 「ばしっ」 どこからか、弓をひく音が聞こえて きました。 「誰だろう」 外に出ると、月明かりの下で、…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 19 「こんばんは」 「こんばんは」 倭建は、何度も声をかけました。 「こんなに遅く、どなたかな」 腰の曲がった老人が顔をだしました。 「旅の者です。 今夜一晩、泊めて いただきたいのですが」 「こんな山奥なので、何のもて…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 18 そんなある日。 倭建は、城にたてこもっている賊 を討つため、越後へ向かっていま した。 碓氷峠を越え、山深い里にたどり ついた時、日が暮れてしまいました。 「困ったな。今夜は野宿か」 そう思いながらとぼとぼ歩いていく…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 17 「そんなことはありませんよ。 倭建に東方の国を平定してほしい だけですよ」 叔母は、倭建をなぐさめました。 そして、須佐之男命から献上され た天皇家の宝である草なぎ剣と、火 うち石などが入っている袋を倭建 に渡しまし…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 16 「おばさま。私は、父からきらわ れているのでしょうか。 西方の 熊襲や出雲を平定し、さきほど国 へ戻ったばかりなのに、父はまた 東方の国を征伐せよと命じました。 兵もよこさず、家来はたった一人。 私は、どうやって、東…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 15 「東方の伊勢・尾張・三河・遠江・ 駿河・甲斐・伊豆などの十二の国 の、荒れすさぶ神や朝廷に服従し ない者たちを征伐し、それらの国 を平定しなさい」と。 天皇は、ひいらぎの木で作った長 い矛を、倭建に授けました。 倭建…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 14 「さあ、太刀合わせをしよう」 倭建が声をかけました。 出雲建は太刀を抜こうとしました が、抜けません。 「あっ」と驚いている出雲建を、倭 建は討ち殺しました。 熊曾建の兄弟だけでなく、出雲建 も征伐し、倭建は無事に国…

倭建が借りた弓は大蛇の弓

倭建が借りた弓は大蛇の弓 13 「どうやって、出雲建を討とうか。 偽物の太刀を作り、その太刀を交 換し、太刀合わせをしたらどうだ ろう」 倭建は、イチイガシの木で、偽物 の太刀を作りました。 そして、出雲建と肥川で水浴びを したのです。 先に岸にあ…