2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

星のメール

[童話]星のメール 星のメール 4 少女は、「少年に手紙を書きたい」、その一心で難し い点字を一生けんめいおぼえました。 庭の梅もどきの実が、橙色に色づいた頃。 少女は、少年に点字で手紙を書きました。20行ほどの短い手紙でした。少女から手紙を受け…

星のメール

[童話]星のメール 星のメール 3 「ぼくは目がみえません」少年がそういわなかったならば、少女は少年が目が 不自由だということを知らずにいたかもしれません。それ位、少年の動作は自然でした。 少女は、この春、小学校へ入学したばかりでした。だから、ひ…

星のメール

[童話]星のメール 星のメール 2 「ほら、あそこにきらきら輝いている明るい星があるだろ。あれが金星だ。金星は、明けの明星とか、宵の明 星とかよばれているのだよ」「みてごらん。あそこにダブリュという文字にみえる星 があるだろ。あの星は、カシオペヤ…

星のメール

[童話]星のメール 星のメール 1 星の好きな少女がいました。 少女はアルプスの山々が美しく見える村に、おとう さんと二人で暮しています。 夜になると、少女はおとうさんと一緒に星をみます。 少女はオリオン座が大好きでした。 おとうさんが最初に教えて…

尾掛松

[童話]諏訪の神話「尾掛松」 尾掛松 6 「そうか。それはありがたい。信濃は遠いからのぅ。 じゃあ、わしは帰るぞ。後はよろしくな」 そういうと、明神さまは雲にのり諏訪へ帰りました。 そして、諏訪湖の奥深く姿を消しました。 そのため、信濃の国には、「…

尾掛松

[童話]諏訪の神話「尾掛松」 尾掛松 5 「部屋に入ろうと思ったが、みんなを驚かしてはい けないと思い、天井にはりついていたのじゃ。今か ら降りていこうか」 明神さまは、ずるずると降り始めました。 「いやいや。降りてこなくていい。そこにいてくれ」 …

尾掛松

[童話]諏訪の神話「尾掛松」 尾掛松 4 天井の梁には、樽ほどもある太い龍が巻きついてい ます。 龍は、真っ赤な舌をぺろぺろだしていました。 「でかけようと思ったら、急用ができてのぅ。信濃は遠 いので、遅れてはいけないと思い、龍の姿でやって きたの…

尾掛松

[童話]諏訪の神話「尾掛松」 尾掛松 3 「明神さまはどうしたのじゃ」 「会議のことを忘れているのでは」 「病気かな」 「急用ができたのかも」 神様たちは、心配しました。 「一体いつまでわしらを待たせる気だ」 待ちくたびれた気の短い神様が、おこりだし…

尾掛松

[童話]諏訪の神話「尾掛松」 尾掛松 2 ある年の十月。 「さて、遅くなってしまったが、出雲へ行ってくるか」 明神さまは、雲にのり出雲へ向かってとんでいきま した。 出雲では、すでに各地から神様たちが集まってい ました。 「会議を始めようと思うが、み…

尾掛松

[童話]諏訪の神話「尾掛松」 尾掛松 1 昔、むかし、ずぅーと昔。 神様たちが、日本の国をおさめていた頃のお話です。 陰暦の十月になると、神様たちは出雲の国に集まり会 議をしました。 神様たちは、思い思いの姿で出雲に集まります。 諏訪の明神さまも、…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 21 あれから、何千年もの月日が流れました。 明神さまは、今も湖の向こう側に住んでいる奥さんの ところへ通っています。 冬になると、明神さまは湖の氷の上を通り、奥さんのところへ行きます。 諏訪の人々は、明神さ…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 20 バリバリッ。 みしっ。 ぱりっ。 みしっ。 「今夜も寒いのぅ」 そういいながら、明神さまは、今夜も奥さんのところへ いそぎます。 空には、星が美しく輝いています。 「明神よ、いつまで奥さんとはなれてくらすつ…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 19 そして、明神さまが何度迎えに行っても、奥さんは 帰ってきませんでした。 「私、この下諏訪の地が気にいったわ。朝も早くから 太陽の顔をみることができるし、上諏訪のやしきより ずっと暖かい。それに、このごろ…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 18 「そんな・・・。じゃあ、私との約束は、どうなるの。私、 長い間、黄金色のまゆ玉をかしてもらえると楽しみに して待っていたのよ」 心のやさしい奥さんでしたが、さんざん楽しみにして 待っていたまゆ玉です。 …

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 17 ある日。 明神さまは、おそるおそる奥さんに話しました。 「なあ、妻よ。約束しておいて悪いけれど、黄金色の まゆ玉を、わしの友だちにしばらくかしてあげてくれ ないか」と。 すると・・・。 「あなたは、今度ま…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 16 「じゃあ、こどもの病気がなおったら、すぐまゆ玉を 返しておくれよ」 「もちろん。こどもが元気になったら、すぐまゆ玉を 返すよ」 近いうちにまゆ玉をかしてもらえることになった友だ ちは、うれしそうに家へ帰…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 15 「明神よ、わしのこどもを助けてほしい。おまえが持っ ている黄金色のまゆ玉を手にすると、どんな病気でも なおるというではないか。そろそろ次のまゆ玉が授か るころだね。次のまゆ玉が授かったら、そのまゆ玉を…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 14 「あなた、約束を破ってはだめよ」 「わかった。わかった」 明神さまは、いいいました。 「でも・・・あのかたは、もう一つ黄金色のまゆ玉がほ しくなって、私にまゆ玉をかしてくれないのではない かしら」 奥さん…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 13 明神さまは、黄金色のまゆ玉を手にするたびに、「諏 訪地方の人々が、無事でくらせますように。 そして、 人々が幸せになれますように」 「お米やあわ・豆・野菜などがたくさんとれますように」 「桑がすくすく育…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 12 明神さまが授かった黄金色のまゆ玉は、三十年に一 つしか手にいれることができない貴重なまゆ玉でした。 たとえ、明神さまがもう一つ黄金色のまゆ玉をほしい と思っても、手に入れることはできなかったのです。 明…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 11 明神さまがまゆ玉を手にとりみていると、どこからかお ごそかな声が聞こえてきました。 「明神よ、諏訪の地をおさめてくれて、ありがとう。今 日は、おまえに黄金色のまゆ玉を授けよう。そのまゆ 玉は、どんな願い…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 10 明神さまと奥さんは、守屋山のふもとで蚕をかって いました。 二人は、諏訪地方に養蚕をひろめようと、伊勢の方 から寒さに強い桑の木や、蚕の卵をとりよせました。 そして、技術者をよび、養蚕の技術を学んでいた…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 9 明神さまは奥さんがでていってしまったことを、みん なにないしょにしていました。 そのため、みんなが寝静まったころ、そっと奥さんに 会いに行っていたのです。 では、二人のけんかの原因は、何だったのでしょうか…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 8 「夫婦ですもの、けんかくらいするわよ。だから、明 神さまは奥さんのことが心配で、真夜中にそっと様 子をみにいくのではないかしら」 「そうかもしれないね」 村の人たちは、そういって、奥さんのことを心配しま …

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 7 そんなある日。 「明神さま。このごろ、奥さんの顔をみかけないけれ ど、奥さんは元気かのぅ」 「ああ。元気じゃよ。妻は用事があって、里へ帰った のじゃ」 「それにしても、長いのぅ。奥さん、どうかしたのかね」 …

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 6 「今夜こそ、行く先をつきとめられると思ったのに、残 念だったな」 「それにしても、あぶないところだった。こんな寒い夜 湖に落ちたら、しんぞうまひで死んでしまうぞ」 青年たちは、とぼとぼと家に帰りました。 …

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 5 「明日の夜は、明神さまの行き先をちゃんとつきとめ ようぜ」 青年たちは、何日も明神さまのあとをつけました。 しかし、いつも明神さまの姿を見失ってしまいました。 二月初めのある夜。 青年たちは、今夜も明神さ…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 4 その早いことといったら。 青年たちは、こんなに速く歩く人をみたことがありま せん。 青年たちは、たちまち明神さまをみうしなってしまい ました。 「明神さまって、足が速いんだね。まるで、氷の上を すべるように…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 3 「今夜、そっと明神さまの後をつけてみよう」 「おお、それがいい。それがいい」 勇気のある足の速い青年が、何人かで明神さまの後 をつけることにしました。 その日の夜。 青年たちは、物陰にかくれて、明神さまが…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 2 次の朝。 「なんだ、これは・・・?」 「すごい割れ目だね」 湖をみた人々は、びっくり。 湖の氷が割れていたのです。 氷がせりあがり、いくえにもかさなりあっています。 大きな山は、こどもの背丈ほどありました。…