2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまからのおくりもの

ゆうすげの花咲く高原で 30 おらは、きよちゃんが大好き。 でも、きよちゃんは、庄屋のおじ ょうさま。 おらは、庄屋の家の使用人。 どんなにきよちゃんが好きでも、 きよちゃんと結婚することはで きない。 清太は、自分の心にそういいき かせました。 「…

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ゆうすげの花咲く高原で 29 続いて、二枚目・三枚目・四枚目 と、花びらが開いていきます。 そして、最後の六枚目の花びら が、今開こうとしています。 「最後の花びらが開くわ」 きよが、笑顔でいいました。 夕やみの中で、ゆうすげの花だ けが、くっきり…

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ゆうすげの花咲く高原で 28 どこからか、いい香りがしてき ます。 みると、ゆうすげのつぼみが、 大きくふくらんでいます。 鮮やかな黄色のつぼみでした。 「きよちゃん。もう少しで、ゆう すげの花が咲くよ」 重苦しい空気をかえようと、清 太が明るい声…

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ゆうすげの花咲く高原で 27 二人は、無言のまま、ゆうすげ のつぼみをみていました。 「きよちゃんは、おらのことを、 どう思っているのだろう」 清太は、きよの顔をそっとみま した。 一方、きよも、「私は、清太さん が大好き。清太さんは、私のこ とを…

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ゆうすげの花咲く高原で 26 おらが家柄のいい家に生まれて いたら、おらの家が裕福だったら、 きよちゃんが大好きだよといえる のに。おらの家は、貧しい。食べ ていくのが、精一杯だ。 だから、庄屋のおじょうさまと して、何不自由なく育ったきよ ちゃん…

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ゆうすげの花咲く高原で 25 きよちゃんが結婚してしまえば、 「きよちゃん」なんて、きやすく 声をかけることもできないし、こ うして二人で馬を走らせることも ないのだなと、清太は思いました。 「おらは、きよちゃんが大好きだ。 次郎さんにも、誰にも…

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ゆうすげの花咲く高原で 24 「おれ、なにかきよちゃんの気に さわるようなことをいったかな」 清太は、心の中でそっとつぶや きました。 「私は、貧乏でもいい。体の丈夫 な、心の清い、自分の考えをしっ かり持った人と結婚したい。そりゃ あ、お金はあっ…

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ゆうすげの花咲く高原で 23 「次郎さんの家は庄屋だし、裕 福だし、みんないい人ばかりだ。 きよちゃんの結婚相手として、次 郎さんはなんの不足もないと思 うけれど・・・ね」 すると、 「清太さんは、私の結婚相手は、 家柄がよくて、お金もちなら、そ …

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ゆうすげの花咲く高原で 22 「おれ、庄屋さまのお使いで、 何度も次郎さんの家へ行った。 おじさんもおばさんもいいかた だし、次郎さんもやさしそうだ し、いい話だと思うけれどね」 「次郎さんは、やさしい人だわ。 でも・・・人のいうままなの。わ が家…

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ゆうすげの花咲く高原で 21 「おらの家は貧乏だったから、 あわやさつまいもの中に、ほん の少し米が入ったご飯だった。 でも、とうちゃんやかあちゃん と食べたご飯は、うまかったな」 二人は、たわいない話をしなが ら、むすびを食べました。 幸せなひと…

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ゆうすげの花咲く高原で 20 「うまい」 「おいしいでしょ。清太さん」 「うん。うまい」 「私、清太さんのために、心を こめてにぎったのよ」 「だから、おいしいんだね。お れ、白米のおにぎりなんて、 初めて食べた」 「わが家でも、白米は特別な日 しか…

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ゆうすげの花咲く高原で 19 「今夜、花が咲きますように」 清太は、心の中で祈りました。 「ゆうすげって、日光きすげの ように、群落にはならないのか しら」 「そういえば、あっちに一本、 こっちに一本という感じだね。 じゃあ、ここで、暗くなるのを …

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ゆうすげの花咲く高原で 18 「清太さん。ぼつぼつ、ゆうすげの 花が咲いている場所へ行こうよ」 「じゃあ、出発しようか」 「ゆうすげの花が咲いていた場所 をおぼえている?」 「おぼえているよ」 二人は、白駒の背にのり、ゆうす げが咲いている場所へ走…

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ゆうすげの花咲く高原で 17 「その後も、何度か馬小屋にい ない時があった。でも、朝には ちゃんと戻ってきていたので、誰 にもその話をしたことはない」 「そんなことがあったのね。私、 何も知らなかったわ」 「おらは、最初から白駒ってふ しぎな馬だな…

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ゆうすげの花咲く高原で 16 「おらが庄屋さまの家へきて、十 日位たったある日。夜中に、白 駒がどこかへ走っていく夢をみ て、びっくりしてとびおきた。心 配になって、馬小屋をのぞいた ら、白駒がいなかった。 おらは、必死で白駒をさがしてあ るいた。…

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ゆうすげの花咲く高原で 15 「そうだったのか」 「清太さん。そうだったのかって、 どういうこと」 「いやー、こんなことを、きよちゃ んに話していいのかな」 清太は、話すのをためらってい ます。 「清太さん。何でも話して。かくし ごとはいやよ」 「白…

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ゆうすげの花咲く高原で 14 「いつか、きよちゃんと一緒に、 その湖を見に行きたいな」 「とうちゃんが、湖のまわりを歩 いていると、生まれたばかりの 白い馬が、足にけがをしてたお れていたんだって。 近くに家が一軒もなかったので、 とうちゃんはその…

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ゆうすげの花咲く高原で 13 「とうちゃんは帰る道をさがして、 山の中をあちこち歩いたみたい。 シラビソやコメツガなどの原生林 をぬけると、突然目の前に、大き な美しい湖があらわれたそうよ。 楓が真っ赤に紅葉していて、目が さめるようだったと話し…

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ゆうすげの花咲く高原で 12 「十年前の秋。とうちゃんは、八 ヶ岳のふもとの山へ、きのこをと りに行ったの。ところが、夢中で きのこをとっているうちに、道に 迷ってしまったんだって」 「ああ、その話、庄屋さまから聞 いたことがある。昨年の秋、麦草 …

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ゆうすげの花咲く高原で 11 「きよちゃん。白駒のことを、聞い てもいい?」 「いいわ。改まって、何」 「白駒って、何才になるの」 「白駒は、私が七才の時に、わが 家へきたの。だから、十才かな」 「どこからきたの」 「それがね・・・どこからきたのか…

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ゆうすげの花咲く高原で 10 数千本、いや数万本。 もっとたくさんの花が咲いている かもしれません。 高原全体が、黄橙色にそまって いました。 「わぁー、きれい」 二人は、同時にさけびました。 「こんなにたくさんの日光きすげ を見たのは、初めて。今…

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ゆうすげの花咲く高原で 9 吉衛門の許可をもらった二人は、 明るいうちに、霧ケ峰高原へ向か いました。 もちろん、白駒も一緒です。 いそいそとうれしそうに出かけて 行くきよと清太。 そんな二人の姿をみて、吉衛門 は幸せな気持になりました。 途中の高原…

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ゆうすげの花咲く高原で 8 「ねぇ、とうちゃん。清太さんとゆう すげの花を見に行ってもいいでしょ」 きよは、再び吉衛門に聞きました。 「まあ、清太なら・・・心配ないだ ろう。きよ、気をつけて行ってお いで」 「ありがとう、とうちゃん」 「ゆうすげの…

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ゆうすげの花咲く高原で 7 「きよ。おまえは、嫁入り前の 娘なのだよ。今、縁談の話も あるしね」 「清太さんは、誠実な人よ。と うちゃんが心配することは、何 もないわ」 きよは、きっぱりいいました。 「とうちゃんも、そう思う。清太は、 まじめな青年…

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ゆうすげの花咲く高原で 6 次の朝。 「とうちゃん。今日、清太さんと 一緒に、ゆうすげの花を見に行 っていい?」 「どこへ行くんだい」 「霧ケ峰高原よ」 「きよ。ゆうすげの花は、夕方 でないと咲かないのだよ」 「知っているわ」 「夕方遅く、清太と二人…

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ゆうすげの花咲く高原で 5 「きよちゃん。ゆうすげの花は、 夕方でないと咲かないんだよ。 それに、夕方二人だけで遠出 することは、庄屋さまが許して くれないだろうしね」 「私、とうちゃんに聞いてみる。 とうちゃんが許してくれたら、一 緒に行ってくれ…

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ゆうすげの花咲く高原で 4 「あるよ。一度だけ」 「どこで見たの」 「何年か前、庄屋さまのおとも で、夕方霧ケ峰高原を通ったこ とがある。その時、どこからか いい香りがしてきた。なんの香 りかなと近づいてみると、黄色 の花が咲いていた。 それが、ゆう…

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ゆうすげの花咲く高原で 3 「笑顔がすてきだね」 やしきで働いている人たちは、 みんなきよが好きでした。 一方、清太も「清太や、清太や」 といって、みんなにかわいがら れています。 「おじょうさまと清太は、ほんと うに仲がいいね。兄と妹みたい。 い…

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ゆうすげの花咲く高原で 2 「まつさん、体の具合はどう? 無理しないでね」 きよは、やしきで働いている人 たちのことを、いつも気にかけ ていました。 「なくなった奥さまも、きさくで やさしいかただったが、おじょ うさまもやさしいね」 「おじょうさま…

女神さまからのおくりもの

ゆうすげの花咲く高原で 1 八年がすぎました。 清太は、二十才。 きよは、十七才になりました。 きよは、美しい娘に成長しま した。 庄屋の家では、畑やたんぼの 仕事をする人、山の仕事をす る人、蚕を飼う人、台所の手 伝いをする人など、おおぜい の人が…