2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ふしぎな鈴

じいちゃんとばあちゃん 3 「わぁー。たくさんいる。じいちゃ ん、これがせみの幼虫なの?」 「そうだよ。よくみていてごらん。 もうすぐせみが生まれるから」 「じいちゃん、このせみなんていう の?」 「あぶらぜみだよ」 おじいさんは、あぶらぜみのこと…

ふしぎな鈴

じいちゃんとばあちゃん 2 おじいさんの家では、蚕をたくさ んかっています。 蚕室(まゆをとるために蚕を飼う 部屋)へいくと、蚕のにおいがぷ ーんとします。 かなは、蚕が桑の葉を食べる音を 聞いて育ちました。 夏のある朝。 かなとおじいさんは、暗い…

ふしぎな鈴

じいちゃんとばあちゃん 1 かなはよちよち歩きの頃から、遠 くに住んでいるおじいさんの家へ、 遊びに行きました。 「かなや、かなや」 おじいさんとおばあさんは、初ま ごのかなを、かわいがってくれます。 「じいちゃん、まってー」 「ばあちゃーん、かな…

ふしぎな鈴

かな生まれる 4 「かな、きてごらん。まゆみの木 に”おなが”がきているよ」 庭へ小鳥がくると、おとうさんは かなをよび、小鳥の名前を教えて くれます。 かなは、小鳥の名前や鳴き声を、 自然におぼえました。 そして、小鳥たちと仲よしになり ました。 つ…

ふしぎな鈴

かな生まれる 3 かっこうは大きな声で一日中鳴い ています。 「もうすぐ夏がくるのだな」 かっこうの声を聞くと、かなはそ う思います。 「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」 晴れた日には、とびが良い声で鳴 きながら、上空をまっています。 おとうさんは小鳥…

ふしぎな鈴 

かな生まれる 2 かなの庭には、南天・梅もどき・ まゆみなど、実のなる木がたくさ ん植えてあります。 その木へ、いろいろな小鳥がたく さんやってきます。 「ホーホケキョ、ホーホケキョ」 四月になると、うぐいすがやって きます。 かなはうぐいすがくる…

ふしぎな鈴

かな生まれる 1 小桜姫がなくなってから、五百年 近い月日がたちました。 南アルプスの山々が美しくみえる 町に、女の子が生まれました。 かなが生まれた時、丘の上の桜が、 とても美しく咲いていたそうです。 かなは、おとうさんとおかあさんと 三人で暮ら…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 22 大切な鈴をあずけ安心したのか、 姫はしばらくして静かになくなり ました。 「心のやさしいおくがたさまだっ たのに、なんでこんなに早くなく なってしまったのだろう」 藩の人々は、なげき悲しみました。 「そういえば、おくがたさ…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 21 ある夜、姫は夢をみました。 桜の花が美しく咲いている下で、 少女が鈴をもらっている夢でした。 「かな、この鈴を大切にするのだよ」 長いひげの人は、その少女を“かな” とよんでいます。 「私はかなという少女に生まれ変わ るのか…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 20 こうして、鎌倉時代から続いた豪 族三浦一族は、北条早雲によって、 滅ぼされてしまったのです。 一年後、姫は重い病気にかかり、 三十四才の若さで、この世を去り ました。 なくなる少し前、姫はぼだい寺の 和尚に、大切にしていた…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 19 しかし、姫の祈りもむなしく、戦 のさなかに、夫をはじめ一族のほ とんどが、城でうち死してしまっ たのです。 姫は、城が見える南岸の森の陰 へ、仮家をつくり逃げていました。 そして、城が焼けおちるのを、対 岸のかくれ家で、く…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 18 ところが、ある日、姫がおそれて いた大きな戦が始まりました。 それは、三年にもわたる、長いき びしい戦でした。 ひとつきに何度となくくりかえさ れる夜討ち、朝がけ、やあわせ、き りあい。 どっとおこるときの声、空をこがす …

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 17 大江家の一人娘が、なぜ三浦家へ とついだのかって、ふしぎに思う でしょうね。 おとうさんは姫にこどもが生まれ たら、一人大江家のあととりにす るつもりだったようです。 しかし、仲のよい夫婦でしたが、 何年たっても、こどもは…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 16 姫が二十才になった春のことです。 「姫、義意はわしがほれた男じゃ。 この人なら、姫を幸せにしてくれ るだろう。姫、義意の所へとつぎ なさい」 おとうさんは姫にいいました。 義意も姫をたいへん気に入ってくれ ました。 そして…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 15 「この鈴を七回ふると、花とお話 をすることができるのね。なんて ふしぎな鈴なのかしら」 姫はそっとつぶやきました。 こうして、姫は、花や小鳥と、話 をすることができるようになりま した。 話ができるだけでなく、人々の気 持…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 14 「でも……姫さま、せっかく……お 話ができるようになったのに、…… もうすぐ……お別れしなくてはなら ないの……残念だわ」 「なぜ?」 「私たち……もうすぐ……ちってしま うの」 「でも、また会えるでしょ?」 「ええ、姫さま。来年……また…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 13 でも、桜の花は何も答えません。 姫は何度も鈴をふり、桜の花に話 しかけました。 「こんにちは。私、小桜よ」 「……?」 「はじめまして。私、小桜です」 「……小桜?」 桜の花がとまどっている様子が、 姫にもわかりました。 「桜さ…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 12 次の日。 姫は桜の木の下へ行き、桜の鈴を 七回ふってみました。 「リーン・リーン・リーン…」 すんだ音色が、あたりにひびきわ たります。 「昨日、桜の花が話していたこと は、本当かしら?」 姫は、桜の花に話しかけました。 「…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 11 「みんな聞いた? 桜の花びらの 鈴…ですって」 「その鈴を…靜かにリーン・リーン・ リーン…と何回かふると、私たちの ような花や小鳥と…お話することが できるんですって」 「それ、本当なの?」 「本当よ。私…あるかたから…聞 いた…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 10 「小桜姫さまってね、…女の子だけど… 小鳥やちょうが…大好きなんですって」 「そういえば…姫のおとうさまも…小鳥 が大好きですものね」 「そうそう、小桜姫さまはね、…ふし ぎな鈴を…もっているですって」 「ふしぎな鈴って…どんな…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 9 姫が十才になった春のある日。 姫は庭へでて、満開の桜をじっと ながめていました。 そして、おとうさんからもらった 桜の鈴を、何回かふってみました。 「リーン・リーン・リーン…」 姫が七回鈴をふった時、どこからか 話し声が聞こ…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 8 一つは、桜の花びらで囲まれた中 に、小さな鈴が入っていました。 「リーン・リーン・リーン」 鈴虫が鳴いているような、すんだ 音色の鈴でした。 姫はこの鈴がお気に入りで、なく なるまで大切にしていました。 もう一つの鈴は、桃の…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 7 「姫、いいものをあげよう。この 鈴は、わが家に伝わっている鈴 だよ」 おとうさんは、木箱に入った二つ の鈴をくれました。 その鈴は、諸国を旅していた坊さん が、大江家に泊まった時、お礼にく れたものでした。 「この鈴を、大切…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 6 「ねえ、おとうさま。花はいくつ 咲いているの?」 「ニ百くらいは咲いているだろう」 おとうさんはうれしそうにいいま した。 姫が七才になった春のある日。 庭の桜が満開になりました。 例年になく、美しい桜でした。 「今年の桜は…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 5 夏のある朝。 「姫、姫―。きてごらん。朝顔の 花が咲いたよ」 おとうさんが姫をよんでいます。 庭へでると、朝顔の花がたくさん 咲いていました。 「わぁ、たくさんの朝顔!!」 姫は、一つ・二つ・三つ…と、花 を数えはじめました。 …

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 4 「わぁ、いい声。うぐいすさん、 じょうずに鳴けるようになってよ かったね」 姫は、うぐいすに話しかけました。 うぐいすもうれしそうです。 姫のおとうさんは、小鳥が大好き。 小鳥の鳴きまねもとてもじょうず でした。 「姫、きて…

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小桜姫とふしぎな鈴 3 「おとうさま、あの鳥は何という 鳥?」 「姫、うぐいすだよ。じきじょうずに 鳴けるようになるから、そこで聞 いていてごらん」 おとうさんがいいました。 「ホ…ケキョ、…ケキョ」 「ホーホ…、…ケキョ」 しかし、うぐいすはなかなか…

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小桜姫とふしぎな鈴 2 姫が生まれた時、庭の桜が美しく 咲いていたので、「小桜」と名づ けられました。 やしきの広い庭には、桜・梅・椿 など、たくさんの木が植えてあり ます。 その木へ、いろいろな小鳥がやっ てきます。 梅の花が何輪か咲き始めた春の…

ふしぎな鈴

小桜姫とふしぎな鈴 1 今からおよそ五百年前。 小桜姫は、相模の国・鎌倉で生 まれました。 姫の生家は、大江といいます。 大江家は、大昔からずっと続い た旧家でした。 大江家には男の子が一人もなく、 こどもは姫だけ。 大江家にとって、姫はたった一 人…

ふしぎな鈴

プロローグ 3 大好きなおとうさんがなくなった 年の春。 かなはおとうさんといっしょに、 この丘へ桜の花をみにきました。 桜の花が美しく咲いていたのを、 今でもはっきりおぼえています。 その時、おとうさんは小桜姫の話 をしてくれました。 小桜姫が大…