2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 20 「そうか。三郎さ、ありがたくいただくぞ。本 尊の観音さまもさぞ喜んでおられるだろう」 三郎は、全財産を寺に寄進しました。 そして、寺の手伝いをしながら暮らしました。 和尚は、石になってしまった愛…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 19 「二匹の犬は、家族の一員だったから、さ みしいのぅ。元にもどれるといいのじゃが」 和尚がさみしそうにいいました。 「三郎さ。鹿狩りにはいかないのかい」 「はい、和尚さま。あれいらい、わしは鹿 狩…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 18 大きな杉の木の根元に、犬の形をした二つ の石がころがっていました。 「タケル、チハヤ。なぜ石になってしまっ たのじゃ」 和尚は、石になってしまったタケルとチハ ヤを、何度もなでました。 そして、二…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 17 「観音さま。身の危険を感じたとはいえ、わ しは観音さまの化身である鹿に矢をむけてし まいました。どうか、わしをお許しください。 今まで、わしは、たくさんの鹿を殺しました。 なんて罪深いことをして…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 16 鹿は、神様や仏さまのおつかいをしている 動物じゃ。三郎さは、鹿狩りの名人。観音 さまは、おつかいをしてくれる鹿がいなく なってしまうのではないかと、心配された のかもしれんぞ。実は、わしも、三郎…

「古事記の編集室」 斎木雲州著

「古事記の編集室」 斎木雲州著http://oomoto.net/sub3-b.html 「古事記」は誰によって、どのように編集され たのか。 「古事記」に関心のあるかたに、ぜひ読んでい ただきたい本です。

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 15 「和尚さま。わしは、おそれおおくも観音さ まに矢をむけてしまいました。わしは、どう したらいいんじゃ」 三郎は、観音さまの化身である鹿に矢をむけ たことを、心からくやみました。 すると、和尚がい…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 14 「消えている?」 「ほら、あそこ」 みると、小さな観音さまが一つ消えています。 「ほんとだ」 二人は、びっくりしました。 「三郎さ。黄金色の鹿は、小さい観音さまの 化身だったのかもしれないぞ」 「…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 13 「タケルとチハヤは、石になっていました」 「タケルとチハヤが、石に? 三郎さ、どう いうことじゃ」 愛犬が石になってしまったと聞き、和尚はお ろおろしています。 「わしにもさっぱりわかりません。和…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 12 「何? いとめた鹿が、消えてしまったと。 三郎さ、夢でもみていたのではないのか」 和尚がいいました。 「いいえ、和尚さま。夢なんかみていません」 三郎が、きっぱりいいました。 「そうか」 「わしは…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 11 「何? 黄金色の鹿だと。この世に、そんな 鹿がいるのか」 「いません。多分いないと思います。わしも、 初めてみました。その鹿は、美しい黄金色の 鹿でした。しかも、びっくりするような大き な鹿。その…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 10 三郎には、なにがなんだかわかりませんでした。 夢をみているような感じでした。 「とにかく、和尚さまに知らせなくては」 三郎は、観音さまをもって、急いで寺へ帰りま した。 「和尚さま。た、大変です…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 9 「何だろう」 近づいてみると、小さな観音さまでした。 身の丈は、二寸(六センチ)くらい。 黄金のように、ぴかっぴかっと光っています。 そして、観音さまの横には、石が二つころがっ ていました。 「なん…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 8 「黄金色の鹿は、どこへ行ってしまったのだろう」 三郎は、鹿をさがして、山の中を歩きました。 気がつくと、タケルとチハヤのなき声が聞こえま せん。 「タケル」 「チハヤ」 三郎は、大きな声で二匹の名を…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 7 「ばたんっ」 大きな音をたて、鹿がたおれました。 「黄金色の鹿をいとめたぞー」 そうさけんだ時、鹿はどこかへ姿を消してしまい ました。 あっという間のできごとでした。 「おかしいな。たしかに首に矢が…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 6 「わぁーっ。黄金色の鹿だぁ」 三郎は、びっくりして大声をあげました。 「うー、うー、うー」 「わん、わん、わん」 タケルとチハヤが、鹿のまわりでほえています。 鹿が、三郎にむかって突進してきました…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 5 二匹の犬は、なきやみません。 ますますはげしくないています。 「どうしたのじゃ。近くに何かいるのだろうか」 三郎は、あたりをみまわしました。 「がさっ」 「ごそっ」 どこかで音がしました。 すると、 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 4 「さあ、何かいるのかも。和尚さま。じゃあ、これ から裏山をみてくるで」 「三郎さ。たのんだぞ」 和尚は、三郎に裏山をみてくれるように頼みました。 三郎は、いそいで裏山へ行きました。 「うー、うー」 …

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 3 三郎は、鹿だけでなく、うさぎやいのししなども とっていました。 三郎の家は、田畑や山林をたくさん持っています。 村一番の金持でした。 「和尚さま。タケルとチハヤが、裏山でほえてい るが、どうかした…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 2 寺には、「タケル」「チハヤ」という、二匹の犬 がいます。 利口な犬でした。 和尚は、二匹の犬を、わが子のようにかわいがっ ています。 秋のある日。 「うー、わん、わん」 「わん、わん、わん」 タケルと…

鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま 鹿になった観音さま 1 信州の伊那谷、三穂村に「立石寺」という寺があり ました。 天安元年(857年)に創建された、真言宗の古い 寺でした。 立石寺は、伊那西国三十三番札所、第一番の寺。 聖徳太子作といわれる十一面観音像…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 94 第七章 新しい出発 24 「気をつけて帰ってくださいね。明神さまに よろしく」 きよは、二人の姿がみえなくなるまで見送り ました。 「今日から、私の新しい生活が始まるのね」 きよは、そっとつぶやきました。 「そうじ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 93 第七章 新しい出発 23 すると、 「きよ、静岡へついたかな。おまえはこれから そこで暮らすのじゃ。わしの友だちのばあさん と一緒にな。きよ、記憶がもどったら、いつで も諏訪へもどっておいで。待っているぞ」 どこか…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 92 第七章 新しい出発 22 「きよ、よろしく」 おばあさんが、にこにこしながらいいました。 「こちらこそ、よろしく。お世話になります」 「こんなかわいい人と暮らせるなんて、私うれし いわ」 おばあさんはうれしそうでし…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 91 第七章 新しい出発 21 次の朝。 「きよ。目がさめたか」 「はい。あなたは?」 「わしは、足長じゃ。そして、こちらが手長」 「私を、淵から助けてくれたかたですね。その節は、 大変お世話になりました。助けていただき…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 90 第七章 新しい出発 20 「やはり、きよは何もおぼえていないのですね。 自分の名前も、大好きだった次郎のことも、み んな忘れてしまったなんて。かわいそうに」 手長は、きよの気持を思うとやりきれません。 「手長、足…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 89 第七章 新しい出発 19 「夜遅くにもうしわけない。これから、きよを 静岡の知り合いまでつれていってほしい」 「えっ、きよを、静岡へつれていくのですか」 手長が驚いて聞きました。 「そうじゃ。きよは、自分の名前も…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 88 第七章 新しい出発 18 きよは強いショックを受け、すべての記憶がなく なっているようでした。 記憶がないまま、生まれ育った諏訪で暮らすのも つらかろう。 きよが生きていることを知ったら、次郎がまた何 かするかもし…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 87 第七章 新しい出発 17 「次郎さんて、誰」 「おまえが、この世で一番好きな人じゃ」 きよは、大好きだった次郎のこともおぼえて いないようでした。 「私が、淵でおぼれたのですか」 「そうじゃ。大きなうずにまきこまれ…

火とぼし山

[童話]火とぼし山 火とぼし山 86 第七章 新しい出発 16 三日後。 きよの意識がもどりました。 「きよ。気がついたか。よかったのぅ」 明神さまが、ほっとした顔でいいました。 「きよ?」 「おまえの名前じゃ」 「私の名前は、きよというのですか」 「そ…