2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 8 お玉の赤い緒のぞうりと、坊さん の白い緒の下駄でした。 お玉も、いつしか坊さんのことが 好きになっていたのです。 「死ななくてもよかったのに。 なぜ死んでしまったの」 「坊さんが好きだといってくれれば よかったのに」 一人娘…

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 7 夜遅く、黒だけが帰ってきました。 長者の家は、大さわぎになりました。 みんなで手わけをして探したけれ ど、お玉はどこにもいません。 村人の話では、黒い牛が底なし池 のほとりで、「もぉーもぉー」と 悲しそうにないていたとのこ…

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 6 見合いの日の前日。 「観音様にお参りに行ってきます」 そういって、お玉は黒の背にのり でかけていきました。 ところが・・・。 夕方になっても、お玉が帰ってき ません。 「明日、見合いだというのに、お玉 がまだ帰ってこない。 ど…

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 5 しばらくすると、お玉の美しさが 評判になり、あちこちから縁談が もちこまれるようになりました。 しかし、お玉は、両親のすすめる 縁談をすべてことわっていました。 「こんないい話はないのに。 お玉、 見合いだけでもしておくれ」…

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 4 坊さんは、かわいい娘が黒牛にの りお参りにやってくるのを、いつ しか心待ちするようになりました。 「なんてかわいい、清らかな娘だ ろう。 どこの娘かな」 坊さんは、お参りにきた人に聞い てみました。 すると。 「あの娘は、山口…

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 3 そのお堂の近くには、「仏沢の底 なし池」とよばれる深い池があり ます。 「金龍院の観音様は、願いごとを よくきいてくださるそうだ」 そんなうわさを聞き、近くの村か らおおぜいの人が金龍院へお参り にきます。 七日の縁日には、…

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 2 天気のよい日には、黒の背に乗り、 野山へ遊びに行きました。 長者の屋敷から半里ほど離れた 所に、「金龍院」という小さな お堂がありました。 お堂には、説話の上手な若い坊 さんが住んでいました。 つづく

牛に乗ったお玉さま

牛に乗ったお玉さま 1 昔、むかし。 小野から木曽へ通じる牛首峠の ふもとに、「山口の長者」とよばれ る大きな屋敷がありました。 長者には、お玉という一人娘が います。 谷間に咲いている白百合のような、 清らかな可憐な娘でした。 長者の家では、大き…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売の出産 6 豊玉比売の歌をうけとった山彦は、 こんな歌を返しました。 奥つ島鴨著(ど)く島に我が率寝し 妹は忘れじ世のことごとに 後に、玉依比売と鵜葺草葺不合命は、 結婚しました。 そして、四人のこどもが生まれました。 そのこどもの一人が、…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売の出産 5 豊玉比売は、山彦がのぞき見した ことは許せなかったけれど、山彦 のことは大好きだったのです。 山彦のことを忘れることができな い豊玉比売は、玉依比売に歌をこ とづけました。 赤玉は緒さえ光れど白玉の 君が装ひし貴くありけり つづく

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売の出産 4 「私は、毎日、海の道を通り行き 来をしようと思っていました。 それなのに、あなたは・・・。 私の姿を見てしまいました。 残念です」 豊玉比売は、生んだこどもを置くと、 海の国へ帰ってしまいました。 生まれたこどもは、鵜葺草葺不合…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売の出産 3 「変わった姿って、どんな姿なの だろう」 山彦は、豊玉比売がこどもをうん でいる様子を、こっそりのぞきま した。 驚いたことに、豊玉比売は大きな 鰐になっていました。 そして、腹ばいになり、くねくねと 身をくねらせています。 その…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売の出産 2 ところが・・・。 鵜の羽で屋根をふきおえないうち に、豊玉比売はお腹の痛みに耐え られなくなり、未完成の産屋へ入 りました。 「海の国では、こどもを生む時、 変わった姿でこどもを生みます。 私も楽な姿でこどもを生みたいと 思いま…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売の出産 1 しばらくして、豊玉比売が、山彦 の所へやってきました。 「私のお腹には、山彦さまのこど もがおります。 天の神の御子を、 海原で生むわけにはいきません。 だから、ここへやってきました」 「そうか、赤ちゃんができたのか。 いつうま…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

塩満珠と塩乾珠 4 「山彦。これまでのことを許して ほしい。 わしが悪かった。 これからは、全力で山彦を守って いく。 おまえの家来にしてほしい」 海彦がいいました。 それ以後、海彦の子孫である隼族は、 朝廷の守護をするようになりました。 つづく

古事記神話「山の神と海の神の娘」

塩満珠と塩乾珠 3 山彦は海彦がやってくると、塩満 珠をとりだし海彦をおぼれさせま した。 「助けてくれー。山彦、助けてくれ。 おれが悪かった。 もうしないから 助けてくれ」 海彦が許しをこうと、塩乾珠をとり だし海彦を助けました。 山彦は、海彦が攻…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

塩満珠と塩乾珠 2 「このつり針は、ぼんやりの針・ 猛り狂う針・貧しい針・役立たず の針」 山彦は小声でつぶやきながら、海 彦につり針を渡しました。 「山彦、何をぶつぶついっている のだ」 「何も」 その後。 海彦は、田に水がこないので、米 がとれな…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

塩満珠と塩乾珠 1 「兄さん。ただいま」 「山彦、どこへ行っていたのだ」 「兄さんのつり針を探していました。 やっとつり針がみつかりました」 「ほんとうか」 「はい」 「兄さん。 つり針を渡すので、後 を向いて」 「なぜ後を向くのだ」 海彦は、しぶし…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 14 「じゃあ、おまえが、山彦を送って あげなさい。 海原の真ん中を渡る 時には、恐ろしい思いをさせないよ うに気をつけて送ってあげなさい」 海の神は、鰐の背中に山彦をのせ見 送りました。 その鰐は、約束通り、一日で山彦を 地上の国へ送り…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 13 海の神は、すべての鰐を集め聞き ました。 「山彦が、地上の国へ帰るそうじゃ。 鰐たちよ、何日で山彦を送り帰っ てくることができるかな」 すると。 「わしは、十日」 「わしは、五日」 鰐たちが口々にいいました。 「わしは、一日で山彦さま…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 12 海の神のわしが水を支配している ので、兄は三年の間に収穫がなく なり、貧しくなるだろう。 そのことを恨んで兄が攻めてきた ら、この塩満珠をとりだし、兄を おぼれさせなさい。 もし兄が助けてくれといったら、 塩乾珠をとりだし助けてあげ…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 11 「山彦よ。 探している針は、これ かな」 「はい。その針です」 「このつり針を、兄に返す時、こ ういいなさい。 このつり針は、 ぼんやりの針・猛り狂う針・貧し い針・役立たずの針といって、後 ろ手に兄にわたしなさい」 そして、続けてい…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 10 海の神は、すべての魚を集め、魚 たちに聞きました。 「婿のつり針をとった魚はいるか」 「鯛が喉に何かささって、物を食べ ることができないとなげいています」 「その鯛は、ここにいるか」 「いません」 「その鯛をつれてきなさい」 海の神…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 9 それなのに、昨晩は大きなため息 をついていました。 なにか心配 ごとでもあるのでしょうか」 海の神は、山彦に聞きました。 「昨晩大きなため息をついていた と、娘が心配しています。 何か 心配ごとでもあるのか」 「私は、なくしてしまった兄…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 8 三年がすぎたある日。 山彦は、大きなため息をつきま した。 「兄のつり針の件で、豊玉比売 に相談しようとここへ来たのに、 すっかりそのことを忘れてしま っていた」と。 山彦のため息を聞いた豊玉比売は、 どうしたのだろうと心配しました。 …

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 7 「どうぞ、ここへお座りください」 海の神は、その敷物の上に、山彦 を座らせました。 そして、いろいろな海の幸を並べ、 山彦に御馳走しました。 「山彦さま。娘の豊玉比売をもらっ ていただけないでしょうか」 海の神は、たくさんの結納品を、…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 6 「あのかたは、瓊瓊杵尊さまの御 子・山彦さまじゃ」 「瓊瓊杵尊さま?」 「瓊瓊杵尊さまは、天照大御神さ まの孫。 そのかたの御子が、山 彦さまじゃ」 「山彦さま、どうぞ中へ」 海の神は、山彦を宮殿の中へ案内 しました。 そして、海驢(あ…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 5 「どなたかしら」 豊玉比売は、外に出てみました。 背の高いりりしい青年が、にっこり 笑って立っていました。 「まあ、すてきなかた」 「なんてかわいい人だろう」 お互いに一目ぼれ。 豊玉比売は、父の海の神に知らせ ました。 「父上、宮殿の…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 4 「外に誰かいるのですか」 「はい。 桂の木の上に、立派な 青年がおります。 海の神様のよ うな、高貴な感じのかたです。 そのかたが水を求めたので、水を さしあげました。 でも、そのかた は水を飲まずに、玉を瓶にはきい れたのです。 玉をと…

古事記神話「山の神と海の神の娘」

豊玉比売 3 山彦は水を飲まずに、首にかけて いた玉飾りをほどくと、口に玉を ふくみ瓶にはきいれました。 すると、玉が瓶の底にくっついて しまいました。 侍女は、その玉をとろうとしたが とれません。 しかたがないので、そのまま、豊玉 比売に瓶を渡し…