2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 14 「ぱか、ぱかっ、ぱか」 織田軍のひづめの音が、だんだん に近づいてきます。 「ひひーん」 「ひひーん」 馬のなき声も聞こえます。 「おー」 「おぅー」 兵士たちのさけび声も、風にのっ て聞こえてきました。 信忠のひき…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 13 「静まれー。みなのもの、落ち つくのじゃ」 信廉の声で、城内はしーんと静 かになりました。 「大島城を、みんなで守るのじゃ。 たのんだぞ」 人々は、いそいで戦の準備をし ました。 戦でこわいのは、火事。火事に なれば…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 12 「いよいよ、次はわが城か」 信廉は、小声でつぶやきました。 「城代さま。大変でございます」 天守閣でみはりをしていた人が、 信廉の部屋へとびこんできました。 「なにごとじゃ」 「遠くに、織田の軍旗がみえます。 驚く…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 11 「いよいよ、戦が始まるのか」 姫は、城に住んでいる人々や、 城下の人たちのことを心配しま した。 「吉岡城の下条が、織田に降参 したらしい」 「松尾城の小笠原も、降参した そうだ」 「飯田城の保科が、高遠城へ逃 亡し…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 10 「それはそうと、信忠はいつ伊那 谷にせめてくるのじゃ」 「さあ、わかりません。戦の準備 をしておくようにとの知らせでご ざいます」 信廉が、知らせにきた人と、小声 で話しています。 いとこの松姫さまは、婚約が破棄 …

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 9 天正十年(1582年)二月。 大島城に、戦の知らせが届きま した。 織田軍が、伊那谷へせめてくると。 「織田というと、信長か?」 「いや、長男の信忠じゃ」 「信忠か・・・」 「信忠といえば、信玄さまの娘・ 松姫さまの…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 8 「姫。これは、おじいさまの絵だ よ。おじいさまに、にているかな」 信廉は、るり姫に絵をみせました。 「おとうさま。この絵、おじいさまに そっくり」 るり姫のことばを聞き、信廉はう れしそうでした。 「平和な世の中が、…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 7 でも・・・領地を広げるために、ほか の諸国と戦っている話を聞くのは つらい。戦のない平和な世の中は、 いつくるのだろうか」 姫は、淵にむかって、そうつぶやき ました。 父から戦の話を聞くたびに、姫は 心の中でさけびま…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 6 そして、その日も、にわとりと一 緒に、淵のみえる場所へ行きま した。 「こっこ、おいでー」 にわとりは、「こっこっこ」と鳴き ながら、姫の後をついてきます。 「私は、歌をよみ、絵を描いてい るおとうさまが大好き。でも…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 5 「淵には、なにかいるらしい」 「なにがいるの? おとうさま」 「大きな蛇がいるらしい」 「大きな蛇?」 「だから、淵へは近づかないよう に。わかったね、姫」 信廉は、るり姫に念をおしました。 「おとうさま、ごめんなさ…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 4 夏のある日。 「みーん、みーん」 松の木で、蝉が鳴いています。 「姫、ちょっと」 「なぁに、おとうさま」 「今は、戦国の世。なにがおこる かわからない。だから、一人で外 へ出ないように」 「おとうさま。城のまわりなら…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 3 にわとりは天守閣にとまると、 「こけこっこー」 「こけこっこー」 大きな声で、時をつげました。 「あっ、こっこの声だ。こっこ、 おはよう」 姫は、にわとり声で、目をさま しました。 「姫さまのにわとりが鳴いてい る。さ…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 2 信廉は、和歌や書・絵・彫刻など をたしなむ風流な人でした。 城には、るり姫という心のやさし い姫がいました。 梅の花が何輪か咲き始めた春の日。 東の空に輝いていた金星が、南ア ルプスの向こうへ消えていきました。 する…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり 1 信州の伊那谷、大島の里に、古 い城がありました。 城の名は、大島城。 平安時代末期につくられた城で した。 天竜川の水がうずまく「大蛇ケ淵」 をのぞむ段丘の上にあったので、 「台城」ともよばれています。 今からおよそ四…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 10 おじいさんには、げらたちの鳴き 声が、こんなふうに聞こえました。 雪はまだ降り続いています。 おじいさんの家が、庭が、雪で真 っ白になりました。 桜の木も、花も真っ白です。 あたりがしーんと静かになり、部 屋の時計の音だけ…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 9 すると・・・。 庭から、げらたちの声が聞こえて きました。 げらとげらのガールフレンドが、 こうごに鳴いています。 「みてごらん。桜が満開だよ」 「私、冬の桜って、初めてみたわ。 雪がちらちら降る時咲く桜も、す てきね」 「ぼ…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 8 「げらたちにも、満開の桜を見せ てあげたいものだ」 おじいさんは、満開の桜をみなが らつぶやきました。 しかし、げらたちは、あれっきり姿 を見せません。 桜が満開になった次の日。 窓をあけたおじいさんは「あっ」と 声をあげま…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 7 げらはおじいさんにガールフレン ドを見せにきたのでしょうか。 げらたちは、庭の木々をとびまわ って、三十分ぐらい遊んでいきま した。 ようやく桜の花が満開になりました。 「寒い時に咲く桜も、また良いもの だな」 おじいさんは…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 6 桜のつぼみは、日ごとにふっくら してきました。 数日後には、花が咲きそうです。 十一月の半ば、あたたかな日が続 きました。 桜の花が、たった一輪だけ咲きま した。 「ギーィギィーギーィ」 庭で、げらの声がします。 おじいさんは…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 5 げらは、毎日庭へやってきました。 げらはまゆみの実を食べたり、桜 の木にいる小さな虫を食べたりし て、しばらく庭で遊んでいきます。 二週間後。 なぜかげらは姿を見せなくなりま した。 他の小鳥たちは、毎日きているの に、げら…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 4 「あっ、こげらだ。かわいい鳥だな」 おじいさんは、白と黒のチェック のコートをきたこげらが、いっぺ んで好きになりました。 庭へこげらがやってきたのは、初 めてです。 「この森にも、こげらがいたのか」 こげらは、おじいさんが…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 3 おじいさんは、初雪が降る頃に咲 く、この桜が大好きでした。 おじいさんだけでなく、村の人た ちも、桜の花が咲くのを楽しみに しています。 まゆみの実が、桃色になりました。 「ギーィギィーギーィ」 ボートをこいでいるような、き…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 2 「今日はどんな小鳥がやってくる かな」 おじいさんは、小鳥がやってくる のを、楽しみにして待っています。 庭へやってくる小鳥たちは、おじ いさんの大切な友達でした。 おじいさんの庭には、小鳥たちの ために、南天・梅もどき・ま…

げら、桜が咲いたよ

げら、桜が咲いたよ 1 「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」 大空を、とびがゆっくり飛んでい ます。 ここは、南アルプスの山々が目の 前にみえる山深い村。 村のはずれに、小鳥の好きなおじ いさんが、一人で暮しています。 おじいさんは九十才を過ぎていま す…

こすもす

こすもす

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こすもす咲き始め

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