2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 27 「アッハハ、アハハ」 兄たちの家から、笑い声が聞こえてきました。 「兄たちは幸せに暮らしているのだな」 三郎は、笑い声を聞いて、安心しました。 「もしかして、おっかあは諏訪湖へ行ったのかもし れない…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 26 「おかしいな、どうしたのだろう」 家の中へ入った三郎は、驚きました。 家の中は、くもの巣だらけでした。 「おっかあはどこへ行ってしまったのだろう」 三郎は心配になりました。 三郎は、兄たちの家へも行…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 25 三郎の体は、うろこのついた大きな蛇になってい たのです。 「せっかく村に戻ってくることができたのに・・・。 なぜだ。こんな姿でおっかあに会ったら、おっか あはびっくりして、腰をぬかしてしまうだろう。…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 24 「早くおっかあに会いたいな。おっかあは元気でい るだろうか」 三郎は、妻のことばかり考えながら、歩き続けました。 地の国をでてから、千日が過ぎました。 「おっ、かすかに光がみえるぞ。とうとう村へつい…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 23 そして、鹿のなまぎもでつくったもちを千枚、三郎に くれました。 「地上へでるまで、千日かかる。このもちを、一日一 枚ずつ食べなさい。そうすれば、無事に地上にでる ことができるだろう」 「神様、ありが…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 22 しかし、三郎は帰ってきません。 一日たち、二日たち、三日たっても、三郎は帰って きませんでした。 「三郎さんはどうしたのかしら」 三郎のことが心配で、妻はいてもたってもいられま せん。 妻は諏訪湖へ行…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 21 しかし、三郎は毎日妻のことばかり考えていました。 「早く家に帰りたい。おっかあはどんなに心配して いるだろう」 そう思うと、三郎はいてもたってもいられません。 「どうか妻に会わせてください」 三郎は…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 20 そして、三郎は、いやおうなしに地の国の王子にさ れてしまったのです。 地の国では、今までみたこともない美しい花が、た くさん咲いていました。 その花のまわりを、赤・黄・紫・白など、たくさんのち ょう…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 19 「おまえは本当に不思議な男じゃのぅ。そうだ、お まえを地の国の王子に迎えよう」 「えっ、私が地の国の王子ですって?」 「そうじゃ。人を少しも疑うことを知らないおまえを、 この国の王子にしてあげよう。…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 18 「わしは地の国の神じゃ。本当にひどい目にあっ たのぅ。しかし、おまえはあんなひどい目にあって も、兄たちを少しもにくんでおらぬ。なぜじゃ。な ぜお前は、兄たちをにくまないのじゃ」 神様は、三郎にたず…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 17 しかし、広い湖には誰もいません。 泳ぎのうまい三郎でしたが、落ちた所が強くうずを まいている所だったのでたまりません。 もがけばもがくほど、三郎の体は、ずるずるーと、う ずの中にすいこまれてしまうの…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 16 しかし・・・。 兄たちはさっさと舟をこぎ、三郎をみすてていっ てしまいます。 「なぜだ」 あんなにかわいがってくれた兄たちが、なぜこん なひどいことをするのか、三郎にはわかりません でした。 三郎の頭…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 15 三郎はひっしで舟をこいできたので、うでが疲れて いました。 「あーあ」 三郎がせのびをしようとたちあがった時、兄たちは 「それ、今だ」と、目くばせしました。 「えいっ」 兄たちは、三郎を後から力いっぱ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 14 数時間後、三人はやっと諏訪湖につきました。 三人は小さな舟にのり、湖の真ん中めざしてすす みます。 湖はようやく氷がとけはじめたばかりでした。 春の日をあび、湖はきらっきらっと輝いています。 三郎は…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 13 そんな悪だくみがあるとは知らず、三郎は妻と仲良 く暮らしています。 三郎は妻のことを、「おっかあ」と呼んでいます。 美しい働き者の妻を、「おっかあなんてよぶのはど うかな」と、ためらっていた三郎も、…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 12 そんなある日。 「諏訪湖の真ん中あたりに、うずをまいている深い 場所があると、年寄りから聞いたことがある。そこは 底なしのふちになっているらしい。そうだ、三郎をそ のうずの中へつきおとしてしまおう。…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 11 山深い村にも、ようやくあたたかな春がやってきま した。 太郎と次郎は、今日もこそこそと、悪い相談をして います。 「次郎や、たてしな山の奥に、人穴があるそうだ。 その穴へ落ちると、二度と戻ってこられ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 10 「三郎は、良い嫁をみつけたな。なんでもできるし、 その上すげえ美人だ。ほんとにうらやましいな」 太郎と次郎は、会うたびに三郎の妻の話をしました。 二人は、三郎がうらやましくてしかたがありません。 な…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 9 三郎の妻は、姿が美しいだけでなく、心のやさし い人でした。 その上働き者だったのです。 掃除も洗濯も、料理もはたおりも、とても上手で した。 「すこしゆっくり休んだらどうだい」 三郎が心配するほど、妻は…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 8 三郎の心の中は、諏訪湖のほとりで会った美しい 娘のことで、いっぱいだったのです。 その夜、三郎はなかなかねつくことができません でした。 その後、二人は、諏訪湖のほとりで、何度か会い ました。 そして、…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 7 「兄弟は何人?」 「私、一人っ子なの。おじいさんと暮らしていたけれ ど、おじいさんもこの春なくなってしまったわ。だか ら今は一人っきり」 村の娘とちがい、娘のことばは上品でした。 二人とも初めて会った…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 6 娘は、桃色の着物をきていました。 諏訪湖の精のような、美しい娘でした。 三郎は、今までこんな美しい娘を、みたことがあり ません。 「なんて美しい人だろう。こんな人を妻にできたら、 どんなに良いだろう」 …

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 5 ななかまどの実が橙色になった、秋のある日。 三郎は、遠くの町へ用たしにでかけました。 その町には、大きな美しい湖、諏訪湖があります。 三郎は、久しぶりに諏訪湖によってみました。 魚でもとっているのでし…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 4 十数年が過ぎました。 大人になった兄たちは、それぞれに妻をめとり、平 凡に暮らしています。 三郎も、ニ十四才になりました。 りりしい青年になった三郎は、村の娘たちから「三 郎さ、三郎さ」と、したわれて…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 3 秋になると、三人は、山へ栗やきのこなどをとりに 行きます。 「でけえ栗が落ちているぞー。三郎、こっちへきて 拾えや」 次郎が、大声で三郎をよんでいます。 「おっ、あけびだ。じゅくしていてうめえぞ」 太郎…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 2 兄たちは「三郎や、三郎や」といって、三郎をかわ いがってくれます。 三郎も、兄たちが大好きでした。 「あそこの兄弟は、ほんとに仲がいいのぅ」 「おらのとこは、朝からけんかばっかり。どうして仲 良くでき…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 1 たてしな山のふもとに、小さな村がありました。 あっちをむいても、こっちをむいても、山・やま・山。 さるやりす、かもしかや熊も住んでいる、山深い村 でした。 その村に、太郎・次郎・三郎という、三人の男の…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 12 どの位の時間がすぎたのでしょうか。 「雪んこたちよ、さあ空の国へ帰るぞー」 空の神様の声で、雪んこたちは帰りじたくを始め ました。 雪もやみました。 澄みきった空には、大きな黄金色の月が顔をだし ました。 星もき…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 11 「るみ、よくがんばったね。るみの舞が一番すてき だよ」 いつきたのでしょうか。 おかあさんのやさしい声が聞こえました。 るみの目から、大粒の涙がはらはらとこぼれました。 おかあさんの目からも涙がこぼれています。 …

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 雪んこの舞 10 やっと長野につきました。 会場には何万人もの人間たちが集まっていました。 「次は空の国の雪んこの舞です。遠い空の国から、 おおぜいの雪んこたちがこの町へきてくださいま した。みなさま、どうぞゆっくり雪んこたちの…