2020-01-01から1年間の記事一覧

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 1 星のきれいな夜でした。みしっ、みしっ。 ぱりっ。 バリバリッ。 ばしゃっ。 諏訪湖の方から、大きな音が聞こえてきました。 「何の音だろう?」 「氷が割れたような音だが」 「だれか湖に落ちたのだろうか」 人々は…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 45 でも、どんなことがあっても、約束はちゃんと守らな くていけません。とくに、神様との約束は・・・ね。一 つでも赤い木の実を食べたものは、もう自分の家に 帰ることはできないのです」 女神さまの声でした。…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 44 「ひひーん」 白駒は、かなしそうな声でなくと、すごいいきおいで 走りだしました。 野をこえ、山をこえ、里をこえて、白駒は走っていき ます。 そして、山深い森の中へたどりつきました。 シラビソやツガの原…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 43 「とうちゃん。三日たったら、また硫黄岳へもどるか ら、だいじょうぶだよ」 「そうか、じゃあ、ゆっくり休んでいきなさい」 長者は、ふくに会えてうれしそうでした。 何事もなく、二日間がすぎました。 三日…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 42 ねぇ、白駒。三日くらい家に帰ってもだいじょうぶで しょ。すぐここへもどるから。白駒、お願い。私を家へ つれていって。どうしても、とうちゃんに会いたいの」 ふくは、必死で白駒にお願いしました。 白駒は…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 41 秋になり、硫黄岳のふもとの木々も、赤や黄色に紅 葉しはじめました。 そんなある日。 「白駒、お願い。私を家へつれていって」 「ふくさん、女神さまとの約束を忘れたのですか。約 束をやぶると、大変なことに…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 40 部屋の中はあたたかでしたが、何カ月間も毎日雪を みてくらさなくてはなりません。 ふくは、けわしい岩場の生活に、だんだんあきてき ました。 病人をすくうことに、むなしさを感じるようになってい ました。 …

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 39 病人の食事は、白駒が運んでくれます。 症状にあわせ、おかゆなどを届けてくれました。 ふくの食事は、小さな赤い木の実だけ。 その木の実を、一つ口にすると、なぜかおなかがい っぱいになりました。 「白駒…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 38 「では、ここへつれてくる人を、どうやって選ぶの?」 「女神さまは、神様を信じていて、心の清い人を選 ぶようですよ」 白駒はいいました。 一本きりだった黄金色の花も、今では十数本にふ えました。 「ふく…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 37 白駒は、一人が元気になると、またどこからか次の 病人をつれてきました。 足腰もたたない病人を、どうやってこの岩場につれ てくるのか、ふくはふしぎに思いました。 ふくは、白駒がつれてきた人の体を、黄金…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 36 「おじいさん。元気でくらしてね。まごのようにかわい がっていただきありがとうございました」 ふくは、おじいさんに心からお礼をいいました。 この岩場で、初めて世話をしたおじいさんのことは、 ふくの心に…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 35 おじいさんは、たてしな山のふもとに住んでいるとか。 畑仕事をしていて、急にたおれてしまったと話してく れました。 おじいさんが歩けるようになると、岩場のまわりを、二 人で散歩しました。 「ふくちゃん…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 34 その夜。 ふくは、ねないでおじいさんの看病をしました。 次の朝。 「あれっ?」 「やっと、気がついたのね。よかった」 ふくは、ほっとしました。 「ここは、どこ?」 目をさましたおじいさんは、ふしぎそう…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 33 「だいじょうぶですよ。女神さまが守ってくれていま すから。おとうさんと同じように、湯でひたした黄金 色の花びらで、おじいさんの体をやさしくさすって あげてください。ふくさんのおじいさんだと思って、 …

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 32 その夜、長者とふくは、なかなかねつくことができま せんでした。 次の朝。 長者は、白駒の背にのって、一人で家へ帰ってい きました。 ふくは、女神さまとの約束を守り、黄金色の花が咲 いている岩場に残りま…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 31 だから、岩場に残るということがどういうことか、なに も考えていなかったの。よく考えてみると、岩場に残 るということは、とうちゃんとはなればなれにくらすと いうことなのよ・・・ね」 ふくは、さみしそう…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 30 「さあ、ふく。元気になったから、明日は家に帰ろう」 「とうちゃん。私は、この岩場にとどまるわ」 「なぜだい?」 「私、八ヶ岳の女神さまと約束したの」 「ふく。女神さまとどんな約束をしたんだい」 「と…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 29 元気になった長者は、ふくといっしょに、岩場のまわ りを散歩しました。 二週間後。 長者は、すっかり元気になりました。 「ふくさん。明日は、おとうさんを家につれていきます。 今日は、おとうさんとすごす…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 28 「白駒。これ、温泉?」 「温泉ですよ。おとうさんがもう少し元気になったら、 温泉へ入れてあげてください。ふくさんも、どうぞ。 この温泉は、体があたたまって、気持がいいですよ。 じゃあ、私はこれで帰り…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 27 大きな岩と岩とにかこまれた穴の中へ入っていくと、 結構広い部屋がありました。 広さは、六畳くらいでしょうか。 部屋の奥には神棚があり、大きなろうそくに火がとも っています。 部屋のすみには、ふとんや…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 26 ふくは、湯でひたした花びらで、長者の体をやさしく さすってあげました。 すると、どす黒かった長者の顔が、うっすらと桃色に なりました。 「とうちゃん。きっと元気になれるよ」 「そうだな。元気になれそ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 25 「とうちゃん。いつから歩けるようになったの」 「たった今、歩けるようになったのだ」 おぼつかない足どりでしたが、長者は歩けるようにな りうれしそうでした。 「女神さまが、おとうさんを守ってくださった…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 24 「白駒も、さすってあげるね」 「疲れがとれますように」と祈りながら、ふくは白駒の 体をさすってあげました。 白駒も、たちまち元気になりました。 「さあ、白駒。とうちゃんをここへつれてきてください。 …

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 23 「はい。守ります」 ふくは、そう答えました。 白駒も、うれしそうに「ひひーん」とないています。 水たまりの中へ手をいれてみると、なんとあたたかな 湯でした。 黄金色の花は、湯の中に咲く花だったのです…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 22 「ふく。やっと、黄金色の花をみつけたのね。黄金 色の花は、私からのおくりものです。おとうさんをこ の場所へつれてきて、黄金色の花びらで、おとうさ んの体をやさしくさすってあげなさい。そうすれば、 お…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 21 ふくは、そのにおいのする方へ行ってみました。 大きな岩と岩の間に、黄金色の花が咲いています。 花の大きさは、手のひらくらい。 花びらがたくさんある花でした。 金色の花は、太陽にあたり、ぴかっぴかっと…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 20 「白駒。とうちゃんは、だいじょうぶかしら?」 「女神さまが守ってくださっているから、おとうさんのこ とは心配しなくてもだいじょうぶですよ。ふくさん、これ からどうしますか」 「もう少し、黄金色の花を…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 19 「白駒、今までに黄金色の花をみたことがある?」 「いいえ。私は、いつも女神さまといっしょですが、 黄金色の花はみたことがありません。昨夜、女神さ まからふくさんと一緒に黄金色の花をさがすように とい…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 18 途中、鹿とかもしかに会いました。 あちこち探しましたが、赤岳にも黄金色の花はあり ません。 権現岳、 西岳、 編笠山・・・ ふくと白駒は、あっちの山、こっちの山と、八ヶ岳の 山々をくまなく走り、黄金色…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 17 続いて、八ヶ岳の主峰、赤岳をさがしました。 赤岳は、赤褐色をした岩が、ごろごろころがってい ます。 雲海の向こう、はるか遠くに富士山がみえます。 「白駒。赤岳からみる富士山は、すてきね」 「女神さま…