2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり21 「さあ、城を脱出するぞ。みんな で故郷の甲斐にもどるのじゃ」 そうさけぶと、信廉はまだ火がつ いていない場所へ、みずから火を つけました。 暗闇の中で、城がめらめらと燃え ています。 姫もにわとりをだき、おつきの人 …

りゅうのひげの実

「花のほほえみ」より りゅうのひげの実

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり20 姫も、にわとりを胸にだき、城の 中をあちこち逃げまわりました。 しかし、どこへ逃げても、城の中 は火の海でした。 「く、くっ、く」 にわとりが、苦しそうに鳴いてい ます。 「こっこ。がんばってね」 姫は、にわとりをは…

福寿草

「花のほほえみ」より 福寿草

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり19 気がつくと、空はからっと晴れてい ました。 太陽も顔をだしています。 「それっ、今だ。気をひきしめ、再 び大島城をせめろ」 信忠は、兵士たちにむかってさけび ました。 「おぅー」 「おー」 織田の兵士たちは大声をあげ…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり18 ますますはげしい雷雨になりました。 そして、空からは、血なまぐさい雨 が降ってきます。 すさまじい雷雨に驚いた織田軍は、 安全な場所へ避難しました。 三十分後。 大雨により、城の火も消えました。 「やれやれ」 「火が…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり17 兵士たちの打った矢が、あたった のでしょうか。 淵の水が、たちまち真っ赤になり ました。 すると、あたりが真っ暗になりま した。 「ごろごろっ」 「ごろごろ」 雷が鳴り出しました。 耳がさけてしまいそうな、すさま じい…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり16 「信忠さま、どうされました?」 「淵に、なにかいる。みなのもの、 まず淵にいるものを退治せよ。 城は、それからじゃ」 信忠は、兵士たちにつげました。 「えいっ」 「えいーっ」 どしゃぶりの雨の中を、兵士たちは 淵にむ…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり15 すると・・・。 大蛇ケ淵から、水柱があがりました。 天まで届くほどの巨大な水柱でした。 「わぁーっ」 「すごい水柱だ!」 織田の兵士たちが、驚きの声をあげ ました。 空から、ぽつんぽつんと、大粒の雨 が降ってきました…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり14 「こっこ、だいじょうぶ。 私が守ってあげるからね」 姫は、にわとりをだきしめました。 「神様、どうか大島城をお守りく ださい。 一刻も早く、火が消えますように」 姫は、一心に祈りました。 どのくらいの時間がすぎたの…

童話集「竜の姿をみた少女」

昨年12月、「鳥影社」から、 みほようこの五冊目の童話集 「竜の姿をみた少女」が、発売さ れました。 ビーケーワン・アマゾン・楽天・ 紀伊国屋書店・ジュンク堂などで、 本を発売中。 童話集「竜の姿をみた少女」は、 信州の「しらかば湖」と「白駒池」 …

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり13 「城に火がついたぞー。 すぐ火を消せー」 信廉が、大声でさけびました。 「わぁー」 城内から、女の人たちの悲鳴が聞 こえます。 一箇所火を消しても、すぐまた別 の所から火の手があがります。 城のあちこちが燃えはじめま…

りゅうの俳句

りゅうの俳句1571 http://d.hatena.ne.jp/youko510/20091025#p3

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり12 大島城は、たちまち織田軍にとり かこまれてしまいました。 「みなのもの、矢の先に火をつけ、 城をいよー」 織田の大将・信忠が、大声でさけ んでいます。 「びゅーん」 「ばしっ」 「びゅーん」 「びゅーん」 「ばしゃ、ば…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり11 戦でこわいのは、火事。 火事になれば、手のほどこしよう がありません。 城では、火を消すための水が、大 量に用意されました。 「ぱか、ぱかっ、ぱか」 織田軍のひづめの音が、だんだん に近づいてきます。 「ひひーん」 …

りゅうの俳句

りゅうの俳句1570 http://d.hatena.ne.jp/youko510/20091024#p4

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり10 「なにごとじゃ」 「遠くに、織田の軍旗がみえます。 驚くほどたくさんの軍勢です」 「なに? 織田軍が、近くまでき ていると。 早く、みんなに知らせろ」 信廉が、みはりの人にいいました。 「みなのもの、戦が始まるぞー。…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり9 「いよいよ、戦が始まるのか」 姫は、城に住んでいる人々や、城 下の人たちのことを心配しました。 「吉岡城の下条が、織田に降参し たらしい」 「松尾城の小笠原も、降参したそ うだ」 「飯田城の保科が、高遠城へ逃亡 した」…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり8 「戦国の世でなかったら、松姫と 信忠はすてきな夫婦になっていた だろうに。 むごいことじゃのぅ」 「そうですな」 「それはそうと、信忠はいつ伊那 谷にせめてくるのじゃ」 「さあ、わかりません。戦の準備 をしておくように…

りゅうの俳句

りゅうの俳句1569 http://d.hatena.ne.jp/youko510/20091023#p4

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり7 「平和な世の中が、いつまでも続 きますように。 そして、おとうさまが、大好きな 絵や書をたくさんかけますように」 姫は、そう祈りました。 天正十年(1582年)二月。 大島城に、戦の知らせが届きました。 織田軍が、伊…

りゅうの俳句

りゅうの俳句1567 http://d.hatena.ne.jp/youko510/20091021#p3 りゅうの俳句1568 http://d.hatena.ne.jp/youko510/20091022#p4

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり6 でも・・・領地を広げるために、 ほかの諸国と戦っている話を聞く のはつらい。 戦のない平和な世の中は、いつく るのだろうか」 姫は、淵にむかって、そうつぶや きました。 父から戦の話を聞くたびに、姫は 心の中でさけびま…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり5 「おとうさま、ごめんなさい。 私、あの淵が大好きなの。 だから、これからも、毎日淵が見 える場所へ行くわ」 姫は、心の中で、おとうさんにあ やまりました。 そして、その日も、にわとりと一 緒に、淵のみえる場所へ行きま…

りゅうの俳句

りゅうの俳句1566 http://d.hatena.ne.jp/youko510/20091020#p3

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり4 「おとうさま。城のまわりなら、 いいでしょ」 「まあ、いいだろう。でも、くれぐ れも気をつけておくれ。 それから、もう一つ」 姫は、なんだろうと思いました。 「大蛇ケ淵へ、近づかないように」 「おとうさま。なぜ、淵へ近…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり3 「あっ、こっこの声だ。 こっこ、おはよう」 姫は、にわとり声で目をさましま した。 「姫さまのにわとりが鳴いている。 さあ、おきなくては」 城に住んでいる人たちは、姫のに わとりの声で目をさまします。 夏のある日。 「…

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり2 梅の花が何輪か咲き始めた春のあ る日。 東の空に輝いていた金星が、南ア ルプスの向こうへ消えていきました。 すると、東の空がだんだんに明る くなってきました。 「ぱさっ」 にわとりが、空に向かってまいあ がりました。 …

井戸で鳴く黄金色のにわとり

井戸で鳴く黄金色のにわとり1 信州の伊那谷、大島の里に、古い 城がありました。 城の名は、大島城。 平安時代末期につくられた城で した。 天竜川の水がうずまく「大蛇ケ淵」 をのぞむ段丘の上にあったので、 「台城」ともよばれています。 今からおよそ四…

信州諏訪の童話・風の神様

からのおくりものシリーズ みほようこが書いた「信州諏訪の 童話」を紹介します。 信州諏訪の「風の神様」から聞い たお話。 「風の神様からのおくりもの」シリーズ 1 竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 (風の神様からのおくりもの)作者: みほようこ,長野…