2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 2 姫が生まれた時、庭の桜が美しく咲いていたので、 「小桜」と名づけられました。 やしきの広い庭には、桜・梅・椿など、たくさんの木 が植えてあります。 その木へ、いろいろな小鳥がやってきます。 梅の花が何輪か…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 小桜姫とふしぎな鈴 1 今からおよそ五百年前。 小桜姫は、相模の国・鎌倉で生まれました。 姫の生家は、大江といいます。 大江家は、大昔からずっと続いた旧家でした。 大江家には男の子が一人もなく、こどもは姫だけ。 大江家にとって、…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 プロローグ 2 「今年もきれいに咲いたのね」 かなは、そっと花のにおいをかぎました。 桜の花の香りが、あたりにぷーんとただよいました。 大好きなおとうさんがなくなった年の春。 かなはおとうさんといっしょに、この丘へ桜の花をみ に…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 プロローグ 1 小高い丘にのぼると、目の前に南アルプスの山々 が美しくみえます。 山深いこの町にも、ようやくあたたかな春がやって きました。 丘の上の桜が、今年も美しく咲きました。 かなは丘へ着くと、桜の木の方へ走って行きました…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 23 それから五百年がすぎました。 守屋山のふもとでは、何万本にもふえた福寿草が、 春の光をあび、美しく咲いています。 その中に一本、福の生まれ変わりの花が咲いてい ます。 その福寿草は、守屋山にまだ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 22 「わしは守屋山に住んでいる明神じゃ。二人とも福に 会えて、本当に良かったのぅ。長者夫婦よ、福を大切 に育ててくれて、ありがとう。感謝しているぞー。そこ に咲いている黄金色の花は、福寿草というの…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 21 「とうちゃん、かあちゃん。今年も忘れずに私に会 いにきてくれたのね。うれしいわ。私ね、明神さま にお願いして、とうちゃんがみたいといっていた黄 金色の花にしていただいたの。きれいな花でしょ。 今…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 20 福がたおれていた場所にたどりついた時、二人は 「あっ」と大声をあげました。 わずかに残った雪の中に、長者が・福が・村の人 々が、あんなにみたいと思った黄金色の花が、一 本咲いていたのです。 黄金…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 19 長者は、たくさんの宝物を、使用人や村の人々に、 おしげもなくわけ与えました。 大切なこどもをなくしてしまった長者には、宝物な どもう何の価値もなかったのです。 長者は、福がたおれていた場所にも、…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 18 「福や、福や。目をさましておくれ」 「福、なぜ守屋山へなど行ったの?」 大切なこどもをなくした夫婦は、気もくるわんばか りに、なげき悲しみました。 「明神さま、お許し下さい。せっかく授けていただ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 17 「もしかして、守屋山へ行ったのでは・・・」 小雪のちらつく中を、大がかりな山狩りが、一晩中 おこなわれました。 でも、福をみつけることはできませんでした。 「福や、福や。どこへ行ってしまったの」…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 16 福は、枯葉の上に腰をおろしました。 そして、いつの間にか、うとうととねむってしまった のです。 福の体の上に、少しずつ少しずつ雪が積もってい きました。 「福や、福や。おきるのじゃ。こんな所でね…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 15 どこをさがしても、黄金色の花など、ひとつもありま せん。 枯葉が一面に落ちているだけでした。 福の足音と、鈴の音だけが、静かな山の中にひび きわたります。 どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 …

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 14 「黄金色の花って、どんな花かしら。どんな形をして いるのかしら」 福の頭の中は、黄金色の花のことでいっぱいでした。 「黄金色の花、黄金色の花。黄金色の花がみたいなぁ」 そういいながら、福は細い急…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 13 それから一年が過ぎました。 山深い村にも、ようやくあたたかな春がやってき ました。 ある日、福はたった一人で留守番をすることにな りました。 大勢の人に囲まれて生活している福には、珍しい ことでし…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 12 とうちゃんも若い時、黄金色の花がみたくて、毎年 守屋山に登って、花をさがしたものだ。しかし、な ぜか一本も見つけることができなかった。村の人は、 だれも黄金色の花をみたことがないそうだ。一度で …

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 11 「かあちゃん、なにかお手伝いすることない?」 福は家の手伝いも、よくやりました。 「福ちゃん、あそぼ」 近所のこどもたちも、おおぜい遊びにきます。 やしきの広い庭は、いつも近所のこどもたちで、い…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 10 「ほら、みて。福が笑っているわ。かわいい笑顔ね」 「福がね、はいはいできるようになったのよ」 「つかまりたちができるようになったわ」 「福が歩けるようになったの。ほら、みて。上手に歩 けるでしょ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 9 「この子に、たくさんの福が授かりますように」 長者は女の子に、「福」となづけました。 「長者さまに、かわいい女の子が授かったそうだよ」 「だんなさまも奥様も、どんなにうれしいことか。本 当によかっ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 8 女の子はつぶらなひとみで、じっと奥さんの顔をみ ています。 そして時々にこっとほほえみます。 「なんて清らかな目をしているのでしょう。だんなさ ま、この子を我が家で育ててあげましょうよ」 「そうだ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 7 「なんでこんなかわいい子を捨てるのじゃ」 「きっと理由があったのでしょう。こんなかわいい子 ですもの、母親だって捨てたくなかったでしょうに」 かわいいこどもを捨てるなんて、こどもの授からない 夫婦…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 6 袋の中には、鈴が入っているようです。 女の子のおかあさんが、お守りのつもりで、鈴をおい ていったのでしょうか。 長者が袋をあけてみると、中には黄金色の鈴が入っ ていました。 「おや?鈴に紋がついて…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 5 「だんなさま、門の所に赤ちゃんが・・・赤ちゃんが 捨てられています」 「何?赤ちゃんが捨てられていると・・・」 「はい、赤ちゃんが捨てられています」 長者と妻は、門の方へ走って行きました。 門のそ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 4 二十年が過ぎました。 二人とも、四十すぎになりました。 「もう年だから、こどもは無理ね」 「こどものことを、毎日お願いしているのに、なぜ明 神さまは、わしらの願いを聞いてくれないのじゃろ」 二人は…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 3 「わしらにも、元気なこどもがほしいのぅ」 こどもたちをみるたびに、二人はそう思います。 「だんなさまも奥さまも、あんなにこどもが好きなの に、なぜこどもが授からないのじゃろ。早くこどもが 授かると…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 2 長者夫婦は、人がうらやむほど、仲の良い夫婦で した。 しかし、なぜかこどもが授かりません。 「明神さま、どうかわしらに、元気なこどもをお授け ください」 そういって、二人は明神さまに朝晩お願いして…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 1 諏訪湖の近くに、守屋山という山があります。 「守屋山には、明神さまが住んでおられる」といわ れています。 守屋山のふもとに、朝日長者とよばれる、大きなや しきがありました。 長者は、宝がいっぱいつ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 31 すると・・・。 「三郎、いろいろ大変じゃったのぅ。おまえの妻は、 私の娘じゃ。三郎よ、娘を大切にしてくれてありが とう。おまえがどんなに心の優しい人間か、よくわ かった。これからは、娘とともに諏訪湖…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 30 愛する妻も、竜になっていたのです。 「おっかあー」 「三郎さーん」 二人はしっかりだきあいました。 三郎を諏訪湖で失った妻は、悲しみのあまり諏訪 湖に入り、なくなりました。 そして、竜になり、諏訪湖の…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 29 「ここよー。私は諏訪湖にいるわー」 妻のやさしい声が、どこからか聞こえてきました。 三郎はがばっと体をおこすと、諏訪湖めざして進 みました。 気がつくと、三郎は竜になっていました。 「はぁっ、はっ」 …