2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 15 山頂には、たくさんの礫がころがっていました。 白駒も歩きにくそうです。 礫と礫のすきまには、馬の顔の形をした白い花が咲 いています。 「白駒。この花は、なんという花?」 「コマクサですよ」 「コマクサ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 14 ふくと白駒は、けわしい道を登ったりおりたりして、黄 金色の花をさがしました。 しかし、天狗岳には、黄金色の花はありませんでした。 次は、根石岳をさがしました。 この山でも、黄金色の花はみつかりません…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 13 「女神さまは、こまどりやうぐいすの声が、大好きなん です。こまどりのおすは、顔と胸が鮮やかな橙色をし ていて、きれいですよ」 「こまどりって、美しい鳥なのね。いつかこまどりの姿 をみたいわ」 からま…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 12 まず、天狗岳からさがすことにしました。 天狗岳といっても、赤い岩肌がむきだしになった東 天狗岳と、山頂まではいまつがはえている西天狗 岳とあります。 西天狗岳は、青天狗岳ともよばれ、からまつなどの …

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 11 野をこえ里をこえ、あっという間に、八ヶ岳の登り口 へつきました。 みあげると、そそりたつようなけわしい山が、帯のよ うに続いています。 「この山のどこかに、黄金色の花が咲いているのね。 どの山に咲い…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 10 「あなたの名前は、なんというの」 「私の名前は、白駒。ふくさんといっしょに、黄金色 の花をさがすようにと、女神さまからいわれました」 「白駒というのね。私といっしょに、黄金色の花をさ がしてください…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 9 おとうさんが元気になったら、黄金色の花が咲いて いる場所で、病人の世話をしてほしいのです。どん なことがあっても、けっして黄金色の花が咲いてい る場所をはなれてはいけませんよ。黄金色の花が、 早くみつ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 8 馬は、口に手紙をくわえています。 ふくは、その手紙を読みました。 「私は、八ヶ岳の女神です。大雪の夜、あなたの家 に泊めていただいた者です。あの夜は、ありがとう。 あなたは、ほんとうに心のやさしい娘で…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 7 「とうちゃんが死んでしまったら、私は一人ぼっちに なってしまう」 そう思うと、ふくは、いてもたってもいられません。 「神様。どうかとうちゃんを助けてください。お願いし ます」 ふくは、一心に神様にお願…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 6 夏のある朝。 「ふく・・・ふくー。早くきておくれ」 ざしきの方から、長者の声が聞こえました。 いそいでかけつけると、長者がたおれていました。 「とうちゃん、どうしたの?」 「目がまわって、歩けないのだ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 5 「お世話になりました。大切なおかあさんの着物、 おかりしていきます」 女の人は何度も礼をいい、屋敷をあとにしました。 「大雪の夜、あの人はどこへ行くつもりだったのだ ろう」 ふくは、女の人のことが、気…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 4 「そんな大切な着物を・・・私にかしてくださるのです か。ありがとうございます」 女の人は、土間のすみで、きがえをしました。 きがえをすませ、いろりのそばにすわった女の人を みて、ふくはびっくりしました…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 3 戸をあけると、女の人が立っていました。 女の人は、雪でびっしょりぬれ、寒さのためぶるぶ るふるえています。 「寒かったでしょ。さあ、早く中へ入りなさい」 「ありがとうございます」 女の人は、ほっとした…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 2 ちらちら降っていた雪も、いつのまにかぼたん雪に かわりました。 雪は、どんどん積もっていきます。 庭も畑も山も、雪で真っ白になりました。 そして、夕方には吹雪になりました。 その夜のことです。 「とんと…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 1 八ヶ岳のふもと、中山峠の近くに、さいのかわらと いう山深い里があります。 そこには、長者屋敷とよばれる大きな家があり、長 者と娘が仲良くくらしていました。 娘の名前は、ふく。 父親おもいのやさしい少女…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 40 「あのかたが、おじいさんの奥さまなのね」 「そうじゃ。あれが、わしのじまんの妻じゃ。どうじゃ、 美しい人じゃろう。 姿が美しいだけでなく、妻は心 の清い人なのじゃ」 目の前には、太陽の光をあびて、き…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 39 諏訪湖は、太陽にあたり、きらっきらっと輝いてい ます。 「なんて美しい湖だろう」 かなは、そっとつぶやきました。 「かなー。私はあなたに会えるのを、ずっと待って いたのよー。早く、お会いしたいわー」 …

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 38 かなは、いわれるままに、おじいさんの背中に乗りま した。 「さあ、出発するぞ」 おじいさんは、再び竜の姿になりました。 「はぁっ、はっ」 おじいさんは、大きな息をはくと、空高くまいあがりま した。 「…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 37 「奥さまも、しらかば湖へみえるのですか」 「いや、妻はこの湖へは一度もきたことがない。悲 しい思い出のある村へは行きたくないといって、一 歩もよりつかないのじゃ。無理もないがのぅ。つらい 思いをした…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 36 疲れはてた妻は、諏訪湖へ身をなげようとしたのじゃ。 その時、妻のおとうさんがあらわれ、諏訪湖の奥へ 妻をつれていったらしい。後で知ったのだが、妻は ある神さまの娘だった。妻は、わしが帰ってくるのを…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 35 この話は、前に話した通りじゃ。その後、わしは、神 様に助けられ、地の国の王子になった。地の国の生 活は、夢のような生活だったが、わしは愛する妻のこ とを忘れることができなかった。 わしは、神様に許し…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 34 「おじいさん。もう一つ聞いていいですか」 「あらたまって、なんじゃ」 「おじいさんは、なぜ竜になってしまったのですか」 「さあ・・・なぜ竜になってしまったのだろうね。わし にも、わからん。神様も、竜…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 33 「かあちゃんは、あちらの国へ行っても、やっぱり花 が好きなんだね」 かなは、おかあさんの姿をみて、胸がいっぱいにな りました。 「かな。残念だが、時間じゃ。おかあさんの元気な姿 をみることができて、…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 32 「ああ、みえるとも。おかあさんの姿がみたいかい」 「はい」 かなは、大きくうなずきました。 「では、ほんのちょっと、おかあさんの姿をみせて あげよう。しっかり目をあけてみるのだよ」 そういうと、おじ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 31 「私、さっきから、その光が気になってしかたがあり ませんでした」 「それで、わしの胸ばかりみていたのか。この玉は、 真澄の玉じゃ」 「ますみの玉?」 「そう、真に澄むと書いて、ますみの玉じゃ。この玉 …

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 30 そんな人間たちのまちがった思いが、竜の世界に も、影響を与えているのじゃ。どの人も、まず人の ことを考えられるとよいのじゃがのぅ」 おじいさんは、遠くをみながらいいました。 「おじいさん。おじいさん…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 29 わしらは、地震や竜巻・台風などの、天変地異にも かかわっているのじゃ。このごろは、世界の各地で、 地震や竜巻などによる大きな災いがおこっているね。 なぜ大きな災いがおこるか、知っているか」 「知りま…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 28 「おじいさん。昨夜、すごい雷がなったわ。ごろごろ っと大きな音がして、ぴかぴかっと稲妻が光ってい た。そして、ぴしゃっという音がして、どこかへ雷が 落ちたようだった。こわかったわ」 「雷は、こわいね…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 27 「薫風?」 「薫る風と書いて、薫風じゃ」 「夏に吹く涼しい風。体がこごえてしまいそうな冬の 北風、台風の時のあらあらしい風、竜巻のうずを巻 くような強い風」 「そうだね。ほかにもいろいろな風があるね…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 26 その時、「ぴゅぅー」と、涼しい風が吹いてきました。 「かな。この風は、だれが吹いているか、知っている かな」 「だれが吹いているの」 「竜が吹いているのじゃ」 「竜が?」 「そう、神様の許しをえて、わ…