2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ふしぎな鈴

お月さまの耳かざり 1 秋のある日。 かなはりゅうといっしょに、散歩 に行きました。 りゅうは散歩が大好き。 かなの顔をみると、「散歩にいこ う、散歩にいこう」と、大声でさ いそくします。 かなとりゅうは、いつもの道を走 ったり、歩いたり、休んだり…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 11 校長先生から桜の鈴をもらったか なは、毎日りゅうと散歩しました。 「りゅう。りゅうはどこからきた の?」 「ぼくはね、遠い国からきたんだ。 かなさんのおとうさんにたのまれ て、この国へきたんだよ。おとう さんはね、あちらの国…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 10 「わぁ、うれしいなぁ。もしかして …もしかして…その鈴は小桜姫さま が大切にしていた鈴ですか?」 「どうして、かなは桜の鈴のこと を知っているの?」 「とうちゃんがなくなる時、小桜 姫さまは二つの鈴を大切にしてい たのだよって…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 9 「かな、いいものをあげよう。桜 の鈴だよ。ほら、いい音がするだ ろう」 「リーン・リーン・リーン」 校長先生が鈴をふると、鈴虫が鳴 いているような音色が、あたりに ひびきわたりました。 「かな、この鈴をふるとね、花や 小鳥とお…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 8 「おとうさま、おとうさまー」とよぶ娘 の声まで、校長先生ははっきり思い 出しました。 「やはり、かなは私の娘だったのだ」 校長先生はそう確信しました。 「しかし、かなはまだ幼い。遠い 昔のことを話したところで、どう なるもので…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 7 大きなおやしき…たくさんの木が 植えてある広い庭…庭へやってく るいろいろな小鳥…そして庭で遊 んでいるかわいい女の子。 遠い昔のことが、少しずつ少しず つ校長先生の頭の中によみがえっ てきたのです。 みごとに咲いた桜の花の下で…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 6 「私はどこかでこの鈴の音を聞い たことがある。どこで聞いたのだ ろうか?」 しかし、どこで聞いたのか、校長 先生には思い出せませんでした。 「リーン・リーン・コロンころん」 「リーン・リーン・コロンころん」 何度も鈴の音を聞い…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 5 かなは、おとうさんから聞いた小桜 姫の話を、校長先生に話しました。 校長先生はその話を知っていました が、「ほうー」「それで」「それから どうしたの」といいながら、かなの たどたどしい話を、最後まで聞いて くれました。 話し終…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 4 「ホーホケキョ、ホーホケキョ」 かなが近づいても、うぐいすはに げません。 うぐいすは、かなを案内するかの ように、かなの前をとんでいきます。 「ふしぎなうぐいすだな」 かなはそう思いました。 うぐいすに案内されて丘へつくと、…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 3 五月初めの日曜日。 かなは愛犬の“りゅう”と、丘の 上の山桜をみに行きました。 「ホーホケキョ、ホーホケキョ」 どこからかうぐいすの声が聞こえ てきました。 「りゅう、うぐいすだよ。いい声 だね」 かなは、りゅうに話しかけました…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 2 「かな、おはよう。元気かな」 「まさし、おはよう。かぜはもう よくなったかな」 校長先生は、こどもたち一人ひと りに、やさしく声をかけます。 かなは校長先生の「おはよう」と いう声を聞くと、心の中がぱっと 明るくなるような気が…

ふしぎな鈴

校長先生と桜の鈴 1 それから何カ月か過ぎました。 かなは一年生になりました。 かなの小学校へ、長いひげの校長 先生がふにんしてきました。 小柄な色黒の先生でした。 先生のひとみは温かく、いつもき らきらと輝いていました。 かなは校長先生が大好きで…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 16 「おとうさんではないだろうか」 丘の上で手をふっていた人も、か けおりてきました。 やはりかなのおとうさんでした。 「とうちゃーん」 かなは、おとうさんの大きな胸の 中に、とびこみました。 大好きなおとうさんのにおいが、…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 15 空はまっさおで、黄金色の太陽が、 目の前にきらきらとかがやいてい ました。 花のまわりを、白や黄や紫のちょ うが、ひらひらまっています。 はるかむこうに、小高い丘がみえ ました。 丘の上で、誰かが手をふっています。 かな…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 14 かなの家が、かなの住んでいる村 が、どんどん小さくなって、とうと う見えなくなってしまいました。 朝顔のエスカレーターは、途中止 まることなく、空にむかってどんど んのぼっていきます。 「かなさん、つきましたよ」 その声…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 13 かなはぽかーんとして、朝顔の花 を見ていました。 「かなさん、私の体にしっかりつ かまりなさい。これから良い所へ 案内しますから」 どこからか、また声が聞こえてき ました。 かなは、おそるおそる朝顔のつる につかまりまし…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 12 そして、あちらにひとつ、こちら にひとつと、花が咲き出しました。 赤い花も白い花もあります。 紫の花も、ピンクの花も咲き出し ました。 何千何万という花が、色とりどり にぱっと音がして開いていきます。 色あざやかな竜が、…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 11 かなは外へでて、いわれたように 雪の上に種をおきました。 すると…。 種がわれて、中からかわいい黄緑 色の芽がでてきました。 二枚の葉が四枚になり、八枚にな り、どんどん葉がでてきます。 そして、あっという間に、何万枚 と…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 10 「かなさん、元気ですか。その種 は朝顔の種ですよ。外へでて、雪 の上にその種をまいてごらん」 どこからか声が聞こえてきました。 「誰だろう?こんな雪の日に、種 をまいても芽はでないだろうに」 かなは思いました。 「かなさ…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 9 おとうさんがなくなってから、百 日がすぎました。 かなの村に、初雪が降りました。 初めちらちらふっていた雪も、い つの間にかぼたん雪にかわりました。 雪をみているうちに、かなは黄金 色の鳥がおいていった、黒い種の ことをふ…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 8 庭へでると、おとうさんが育てた 朝顔の花が、たくさん咲いていま した。 白い花も紫の花も、ピンクの花も 咲いています。 「かな、みてごらん。朝顔の芽が でてきたよ。かわいいだろ」 「かな、つるがのびてきたよ」 「ほら、みて…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 7 それはあっという間の出来事で した。 「黄金色の鳥は、あちらの国って いったけれど、あちらの国ってど こにあるのかしら?」 かなは「あちらの国」ということ ばが、気になりました。 次の朝、かなは黄金色の鳥がとま っていた柱…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 6 まっくらな部屋の中で、柱時計の 上だけが、明るくきらきらと輝い ています。 よく見ると、黄金色の鳥が、柱時 計の上にとまっています。 見たことのない、美しい鳥でした。 「かなさん、私は遠い国から、あな たのおとうさんを迎え…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 5 「やさしいとうちゃんだった。私 はとうちゃんが大好き」 かなは、心の中で何度もそうつ ぶやきました。 おとうさんがなくなった夜のこと です。 「リーン・リーン・コロンころん」 「リーン・リーン・コロンころん」 誰が鈴をふっ…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 4 さっきまで元気でいたおとうさん が、急になくなってしまうなんて、 かなには信じられませんでした。 「かな、おとうさんのそばで、少 しお休み」 おかあさんにいわれ、かなはおと うさんのそばで休みました。 かなはおとうさんの大…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 3 「かな、この鈴をいつまでも大切 にするのだよ」 こういうと、おとうさんは靜かに 息をひきとりました。 時間がたつにつれ、おとうさんの 体が、だんだんに冷たくなってい きました。 「とうちゃん、とうちゃん。目を あけて。ねえ…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 2 「この鈴はね、鎌倉の和尚さんから いただいた鈴だよ。この春、丘へ桜 を見に行った時、小桜姫の話をして あげたね。おぼえているかな? この鈴は、小桜姫が大切にしていた 鈴の一つだよ。小桜姫はね、二つの 鈴を大切にしていたの…

ふしぎな鈴

朝顔のエスカレーター 1 それから一年後。 残暑の厳しい九月五日のことでした。 大好きなおとうさんが、心臓病で急 になくなってしまいました。 しんきんこうそくでした。 「かな、おじいちゃんとおばあちゃ んに、かわいがってもらったことを、 いつまでも…

ふしぎな鈴

じいちゃんとばあちゃん 6 「じいちゃん、じいちゃん」 いくらよびかけても、おじいさん は何も返事をしてくれません。 「じいちゃーん、じいちゃんはど こー」 かなはおじいさんの家へ行くたび に、おじいさんを探して歩きました。 でも・・・おじいさんは…

ふしぎな鈴

じいちゃんとばあちゃん 5 おじいさんといっしょにみたせみ の羽化は、忘れられない思い出に なりました。 おじいさんもおばあさんも、花や 小鳥が好きな心のやさしい人でした。 かなが五才の時。 おじいさんが病気でなくなりました。 脳こうそくでした。 …