2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

竹取物語

石上の中納言と燕の子安貝 9 ところが。綱をひきすぎて、綱が なくなった瞬間、中納言が八個の 鼎の上に、あおむけに落ちてしま いました。 家来たちはびっくりして、そばに かけ寄り、中納言をだきかかえま した。 中納言は、白目をむいて倒れてい ます。 …

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石上の中納言と燕の子安貝 8 「わしが登って、巣をさぐろう」 中納言は籠に乗り、綱で吊りあげ られ、燕の巣の中をのぞきました。 すると。 燕が尾を上へあげて、ぐるぐると まわっています。 「よーし、子安貝をとるぞ」 中納言は、手を差し出し、巣の中 …

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石上の中納言と燕の子安貝 7 日が暮れたので、中納言は、例の 大炊寮(おおいづかさ)へ行き、 燕の巣をみました。 倉津麻呂が教えてくれたように、 燕が尾を上にあげまわっています。 「燕が、卵を産むぞ」 中納言は、家来を荒かごに乗せ、 綱で吊りあげま…

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石上の中納言と燕の子安貝 6 それを聞いた中納言は、喜びました。 そして、ひそかに大炊寮(おおいづ かさ)に出掛け、家来たちの中に交 じって、燕が卵を産むのを監視しま した。 中納言は、倉津麻呂が燕の子安貝 のとり方を教えてくれので、着ていた 衣装…

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石上の中納言と燕の子安貝 5 「それはいい考えだ」 中納言は、高い足場を壊し、家来 たちに邸へ帰ってくるように伝え ました。 「燕が卵を産むかどうか、どうや ったらわかるのか」 中納言が倉津麻呂に聞くと、 「燕が卵を産む時は、尾を高くあ げ、七回回…

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石上の中納言と燕の子安貝 4 「今やっている方法では、子安貝 はとれません。高い足場に、二十 人もの人が登っていては、燕が怖 がって巣に帰ってきません。 一刻も早く、高い足場を壊し、そ こからみんな離れること。そして、 一人だけを荒かごに乗せて座…

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石上の中納言と燕の子安貝 3 燕は、人がおおぜい登ってきて、 巣をのぞいているので、巣に帰っ てきません。 燕の様子を聞いた中納言は、「ど うやったら、燕の子安貝をとるこ とができるのか」と悩みました。 中納言が困っていると聞き、大炊 寮(おおいづ…

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石上の中納言と燕の子安貝 2 「大炊寮(おおいづかさ)にある 柱の穴に、燕がいくつも巣を作っ ている。家来を連れていき、足場 を高くくみ、燕の巣をのぞけば、卵 をうんでいるかどうかわかります」 すると、中納言が。 「そうか、いいことを聞いた」 中納…

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石上の中納言と燕の子安貝 1 中納言石上磨足が、家来たちにい いました。 「燕が巣を作ったら、知らせなさい」 「何の為ですか」 「燕が持っている子安貝をとるた めじゃ」 「燕を何羽殺しても、腹の中には 子安貝など入っていません。燕が 卵を産む時、ど…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 17 きれいな糸を使ってふかせた屋根 は、鳶や烏が巣を作るために、全部 くわえて持っていってしまいました。 世間の人は、いいました。 「大伴の大納言さまは、龍の頸の 玉をとってきたのかい」 「いや、玉などとってこない。…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 16 もしわしが、龍をつかまえていた ら、龍に殺されていただろう。 おまえたちが、龍をつかまえない でいてくれてほっとした。 大悪党のかぐや姫は、わしやわし の家来たちを殺そうとして、こん な難題をだしたのだ。今後は、…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 15 「龍の頸の玉をとることができな かったので、屋敷に帰ることがで きませんでした。でも、今は、龍 の頸の玉をとることは困難なこと だと、大納言さまもわかっただろ うと思います。なにのおとがめも ないだろうと思い、帰…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 14 松原にむしろをしき、大納言に船 からおりるようにいいました。 大納言は、やっとのことで起き上 がりました。 大納言は、重い風邪にかかった人 のように、腹がぽっこりと膨らみ、 両目はすももをつけたようになっ ていまし…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 13 三四日、順風が吹き、船を陸地に つけることができました。 船頭が浜をみると、そこは播磨の 明石の海岸でした。 大納言は、南海の浜に吹き寄せら れたのだろうと思い、しょんぼり しています。 一緒に船に乗っていた家来が…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 12 「神様、どうかわしの話を聞いて ください。わしは、かぐや姫が望 んだ龍の頸についている玉が欲し くて、龍を探し殺そうとしました。 もうそんな恐ろしいことはしません。 神様、どうか許してください」 大納言は、立った…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 11 「船に乗ったら、船頭だけを信頼 するものだ。それなのに・・・なぜ 頼りないことをいうのか」 船酔いのため、大納言は口から 物をはきながらいいました。 「わしは、神様ではないので、何 もできません。強い風が吹き、波 …

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 10 「今まで、こんな苦しい目にあっ たことは一度もない。どうなって しまうのか」 すると、船頭が。 「長い間、このあたりを船で通っ ているが、こんないやな目にあっ たことは一度もない。船が沈まな ければ、雷が落ちるだろ…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 9 大納言は、二人の家来と船に乗っ て、龍の頸の玉を探しに行きました。 あちらこちらの海をまわるうちに、 筑紫の海にたどりつきました。 ところが・・・。 どうしたことか、疾風が吹き出し、 あたり一面、真っ暗に。 どこにい…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 8 すると・・・。 「ふしぎな話ですなー。そんな仕 事をしている船などありませんよ」 船長たちが、笑いながらいいました。 その話を聞いた大納言は、「臆病 な船長たちだ。わしの実力を知ら ないから、そんなことをいうのだ」 …

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 7 大納言は、家来たちからの連絡 を、首を長くして待っていました。 でも、いくら待っても、連絡があ りません。 しびれをきらした大納言は、家来 を二人連れ、難波の港まで様子を みに出かけました。 そして、二人に命じました…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 6 一方、大納言は、「かぐや姫を迎 えるには、この家ではみすぼらし い」といって、立派な家を建てま した。 壁は、漆を塗り、その上に蒔絵を。 屋根は、糸をいろいろな色に染め てふきました。 襖は、豪華な綾織物に絵を。 大…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 5 「じゃあ、足の向いた方へ行って、 玉を探してこよう」 「大納言さまは、物好きな人じゃ のぅ。龍の頸についている玉など、 とれるはずもないのに。何を考え ているのか」 「無理なことを、平気で命令する なんて、我慢ができ…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 4 大納言は、龍の頸の玉をとるため に、家来たちを派遣することにし ました。 家来たちには、道中の食料の他に、 屋敷にあった絹や綿や金などを持 たせました。 「おまえたちが、龍の頸の玉を持 ってくるまで、わしは精進潔斎し…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 3 「わしに仕えている者は、命を捨 てても、命令に従うべきだ。龍は、 外国ではなく、わが国の海や山に 住んでいるというではないか。そ れなのに、おまえたちは、わしが 命令したことを、なぜ困難なこと だと思うのか」 家来た…

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大伴御行大納言と龍の頸の玉 1 大伴御行大納言は、すべての家来 を集め、命令しました。 「龍の頸には、五色の光を発する 玉がついているそうだ。龍の頸に ついている玉をとってこい。玉を とってきた者には、ほうびをあげ よう」と。 すると、家来たちが口…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 11 安倍は、何もいえず家へ帰りました。 人々は、「安倍の大臣が、火鼠の皮 衣を持って、かぐや姫の家に行った というが、二人は結婚したのか。大 臣は、かぐや姫の家にいるのか」と 聞きました。 ある人は、「火鼠の皮衣を火に…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 10 その後。 皮衣を火にくべると、めらめらと 焼けてしまいました。 「焼けてしまったから、これは偽 物ですね」 おじいさんが、安倍にいいました。 安倍は、青ざめた顔で座っています。 「ああ、よかった。これで、安倍さま と…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 9 「この皮衣を火にくべて、それでも 焼けなけなかったら、本物でしょう。 もし皮衣が焼けなかったなら、あの かたと結婚します。じいは、この世 にひとつしかない物だから、本物だ と思えというけれど、私は本物かど うか皮衣を…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 8 おじいさんは、安倍を座敷の中へ 招きいれ、お茶をすすめました。 「今度こそ、姫はこのかたと結婚 することになるだろう」 おじいさんとおばあさんは、そう 思いました。 二人は、かぐや姫が結婚もしな いで一人でいるのをみて…

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阿倍の右大臣と火鼠の皮衣 7 かぎりなき思ひに焼けぬ皮衣 袂かわきて今日こそは着め 安倍は、火鼠の皮衣を持って、か ぐや姫の家へ行きました。 おじいさんが、皮衣を受け取り、 かぐや姫にみせました。 すると、かぐや姫が。 「立派な皮ですね。でも、これ…