2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 脳トレの「数ドクター」をする度に 老いし頭は四苦八苦する 若き日の着物をリフォームせむとして 母乳の染みに遠き日を思ふ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 右上り「六度法」を頭に字を書けば 拙きながらも少し見目良し 関心持ちし参院選の開票速報 想像以上の惨敗となる

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 ハイジの村に「幸福の鐘」を友と鳴らす 優しき響き身に沁みて聞く 右上り「六度法」を知り字を書けば 誰でも美しき字になるを知る

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 心地良く眠りて長生きせよと子の呉れし シルクのパジャマさらりと軽し 弱き身に古稀喜寿傘寿とつつがなく 生かされ来しが米寿は如何に

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 工夫して自給自足の食材に 母作り呉れし味を忘れず 「エムスン」の不正問題の最中に 介護保険値上げの通知

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 愛子様のお印となる五葉つつじ 花咲く庭園吾子等と巡る 亡き母の食育のお蔭に老いし身の 食生活も疎かにせず

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 花言葉「優しい愛」とふ赤きポピー 色鮮やかに庭隅に咲く 温泉のロビーに子等と白樺の 倒木にて作りしオセロで遊ぶ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 亡き夫が蹲踞にはりつけ植ゑくれし 岩煙草株殖え縮れ葉の萌ゆ 岩檜葉の巻葉ほぐれ来し蹲踞を 清めて水を豊かに満たす

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 何時の日か吾もお世話になるならむ ディサービスのボランティアに来ぬ 糸繰りの母の面影偲びつつ 縫ひしふくさの躾糸に使ふ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 うつし世にまみゆることは叶はねど 夫も「千の風」になりて居ますや 黒酢にて作りしバナナ酢飽きたれば りんご酢を作り朝々にのむ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 結婚はせぬと言ひゐし孫娘 オーストラリアにてジューンブライドとなる 楽しみて「いきいき教室」にて学ぶ吾等 掛け声と共に立ち居始まる

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 解りにくき賞味期限と消費期限 老いし吾等も理解し得たり 傘寿過ぎ「恍惚の人」を読みゆくに 身につまされて侘しくなりぬ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 山桜咲き盛る季節の岐阜蝶の 監視の役は楽しみなりき 外灯につけて飾れる岐阜蝶の 雨に洗われ春の日に映ゆ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 年間に三百億枚のレジ袋 芥になると減らすマイバック持つ 「春の女神」とふ岐阜蝶を万寿山に 監視に行きて初めて知りき

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 折々にワン切りの電話掛りくる 何の目的か不気味に思ふ 雨の日はビニール袋に新聞を入れ 配る人等の心遣ひ嬉し

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 大掃除に疲れし老いの顔写る 姿見磨きすべて終りぬ 母逝きし年迄残るは二年か まだまだ吾は生きたしと思ふ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 老人と児等と交流のお手玉を 手に合はせ小さく縫ひぬ 続け来し家計簿日記のインクの香 清しきに向へば心改まる

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 兵越峠の信州軍と遠州軍の 国盗り綱引今年も負けたり 老いたれど生命力の証しなる 伸び良き爪を愛しみて切る

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 うから等の心思へば切なくて 無言館の中を黙し巡りぬ 戦時下に嫌々食べしすいとんも 専用の粉と肉にて旨し

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 左千夫先生生家の土間の竈の前に 火吹き竹持つ母の幻 無言館に男子の本懐と両親に 宛てし葉書が色褪せて残る

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 肩幅縮め土屋先生召されたる 左千夫形見の道行を見つ 茶博士と呼ばれし左千夫愛用の 赤楽の茶碗に心ひかれ立つ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 再びは渡ることなけむ矢切の渡し 和きし川面を忽ち過ぎぬ 「野菊の墓」に老いの心も若やげど 膝庇ひつつ石段下る

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 若き日に習ひし事が趣味となり 老いの暮しに潤ひを持つ 八十の祝に娘のくれしミシンに 古着のリフォームをなす

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 松喰虫に枯れし庭松二本伐り 蝉しぐれ聞かず夏も終りぬ 家の事をきちむと成せば習ひ事 何しても良しと夫言ひくれき

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 長男の晴れ姿も見ず逝きし娘を 哀れに切なく今日は想ひぬ 年々の習はしとなりし家中の 時計の電池盆前に替える

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 娘の遺影を婿の辺に置く結婚式 悲しみこみ上げ眼を反らす 幸あれと新郎新婦に五色のバラの 香に立つ花弁を祈りつつまく

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 大平峠の人住まぬ家の廂朽ち 菖蒲の花の草叢に映ゆ 大和路に初めて知りしツマグロヒョウモン 近ごろ飯田にても良く見る

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 細ごまと必需品をバックに詰め 入院用と札つけて置く 思ひ切り捨てて押入れの整理するを 娘は良くぞと褒めて呉れたり

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 猿庫の苔むす岩間より湧く泉 冷えびえと喉に沁み渡りゆく 静まりし猿庫の泉に鹿威し リズムをもちて響き渡りぬ

母の短歌

[母の短歌]追憶の風 亡き夫を偲ぶよすがの岩煙草 蹲踞に影を落し咲き初む 今宵咲く月下美人を玄関に 取り込み花の開く時待つ