2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 57 「いいのよ、そうべえさん。あなたを強くとめなかった 私が悪いのですから。ちゃんと家のかたにことわっ て、夕顔の花を分けていただけば良かったですね」 「奥がたさま。盛永さまのことは、何も気にすることは ありま…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 56 父親の悪口を聞いた長五郎は、どう思っただろうか。 夫の盛永は、領民たちからそんなふうに思われてい たのか。 お万は、おばあさんのことばを思い出し、そっと涙を ふきました。 「奥がたさま。わしが夕顔の花をとっ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 55 「赤い夕顔の花をみたことがなければ、私が赤い夕顔 の花を咲かせてみせましょう」 お万がいいました。 「馬鹿なことをいう奥がたじゃ」 おばあさんは、にやにや笑いながらいいました。 お万たちは、「おさわがせし申…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 54 私は、あなたの話を、さっきから黙って聞いており ました。城主のうわさは、私の耳にも入っておりま す。あなたがいわれたようなことを、城主はおそら くしているのでしょう。 でも、幼いこどもの前で、城主の悪口をい…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 53 「おばあさん、お願いです。幼いこどもの前で、城 主の悪口をいわないでください。お願いします」 お万は、おばあさんにお願いしました。 「何をいっとる。すべてほんとのことではないか」 おばあさんは、権現城の近く…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 52 「ほんとのことをいって、何が悪い。ひどい殿様だ と、みんなうわさしているぞ。殿様は、領民たちか らきびしく年貢をとりたて、三つも城をつくったそ うではないか。城なんか一つあればいいのに、何 で三つも城をつく…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 51 「私は、権現城の城主・盛永の奥がた、お万で ございます。昨夜、下条の夜討ちにあい、浪合 の実家へ帰る途中です。ことわりもなく、夕顔の 花をとったこと、どうかお許しくださいませ」 再び、お万は、おばあさんにわ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 50 「申し訳ございません。ことわりもなく、夕顔の花 を一ついただきました。どうか失礼をお許しくだ さいませ」 お万が、おばあさんにわびました。 「みかけない顔じゃが、どなたじゃ」 「私は・・・」 「奥がたさま。名…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 49 そういって、そうべえは夕顔の花を一つとり、長五郎 にわたしました。 長五郎は、うれしそうに夕顔の花をみています。 三人が農家の庭先を立ち去ろうとした時、 「こらぁー、花どろぼうめ。待てー」 どこからか、大き…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 48 「そうべえさん。この家のかたにお願いして、夕 顔の花を一つ分けていただきましょう」 「奥がたさま。そんなことをしてはいけません。奥 がたさまだということが、ばれてしまいます。黙っ て、一つだけ花をいただきま…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 47 「奥がたさま、心配なさるな。わしが、浪合まで責 任を持って送り届けますから」 そうべえがいいました。 お万たちは、浪合へ向かって、山道を歩いて行 きました。 やっと向方へつきました。 農家の庭先に、白い花が咲…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 46 「そうべえさん。それでは、浪合まで道案内をお 願いします」 お万が、そうべえにお願いしました。 「奥がたさま。もう少し休まれたらどうじゃ。若君 も疲れているようだし」 「そうもいきません。下条の追手がくるか…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 45 「何、城が焼けた?」 「はい。逃げてくる途中、城が燃えていました。そ うべえさんに道案内をお願いしたいと思い、ここ へ寄りました。昨夜から歩き通しなので、少し休ま せていただけないでしょうか」 「奥がたさま…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 44 「そうべえさん。私、権現城の奥がたのお万でござ います」 「奥がたさま?」 「はい、お万でございます」 「あっ、奥がたさま。失礼しました。 奥がたさま。 そんなかっこうをして、どうなさったのですか」 そうべえ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 43 「以前、城で働いていた人ですよ。浪合の実家へ 帰る時には、いつもそうべえさんに送っていただ いたのよ」 お万は、そうべえのことを、長五郎に話しました。 一時間後。 お万たちは、ようやくそうべえの家にたどりつ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 42 「一日も早く、戦のない平和な世の中になりますよ うに」 お万は、心の中で祈りました。 お万と長五郎は、下条の追手を逃れ、一晩中山の 中を歩きました。 東の空が、だんだんに明るくなってきました。 「長五郎、疲れ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 41 茂みの間から城をみると、城がめらめらと燃えてい ます。 「城が燃えている。盛永さまや家臣たちは、だいじ ょうぶかしら。無事に城を逃げだすことができただ ろうか」 お万は、盛永や家臣たちのことを、心配しました…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 40 「幼いこどもをつれているから、遠くへは行くま い。どこかにかくれているのだろう。早く三人を みつけろ」 近くで、兵士たちの声が聞こえました。 お万と長五郎は、木のしげみにかくれました。 「お母さま」 「長五郎…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 39 「何をいいます、奥がたさま。わしが、最後まで二 人をお守りいたします。どうか安心してください」 家臣がいいました。 ところが、下条の追手から逃げまわっているうちに、 お万たちは家臣とはぐれてしまいました。 …

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 38 「だいじょうぶです、奥がたさま。奥がたさまが、着 古した野良着を着ているなんて、誰も思いません から。さあ、先を急ぎましょう」 お万たちは、下条の兵士たちにみつからないよう に、足早に歩いて行きました。 「…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 37 お万たちは、近道を歩いて行きました。 すると、向こうから、下条の兵士が二人歩いてきま した。 「おい。今、すれちがった百姓の一家、奥がたと若 君ではないか」 「まさか。奥がたが、あんなうす汚い野良着をきて い…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 36 楽しかったこと、苦しかったこと、辛かったことな どが、次々に思い出されました。 「盛永さまや家臣たちが、無事でありますように。 もう一度、この城に戻ってくることができますように」 お万は、心の中で祈りました…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 35 一方、奥がたのお万は、幼い長五郎を胸にだき、 家臣とともに城を出ました。 そして、浪合の実家へ向かいました。 お万たちは、下条の兵士たちにみつからないよ うに、着古した野良着をきて、城を出ました。 誰がみて…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 34 しかし、犬坊は、その声を無視しました。 「盛永さまは、私ひとりのものだ」 そうさけぶと、犬坊は、盛永の心臓をめがけてさし ました。 「うーっ」 盛永が、うめき声をあげました。 胸から、血がふきだしました。 「…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 33 「犬坊。おまえは、この世で一番かわいがってくれ た人に、やりをむける気か。落ち着け、落ち着くの だ。そんなことをしたら、おまえは一生後悔するぞ」 どこからか、声が聞こえてきました。 「犬坊」 「犬坊や」 盛永…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 32 「落ち着け、落ち着くのだ。たかが、寝言ではな いか」 犬坊は、自分の心に何度もそういいきかせました。 でも、犬坊は、自分の気持をコントロールするこ とができなくなっていたのです。 「盛永さまは、私ひとりのも…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 31 私は、お万さまも、大好きだった。 母のように慕っていた。 お万さまも、心から私をかわいがってくれた。 でも、盛永さまは、誰よりも奥がたのお万さまを 愛し、大事に思っていたのだ。 くやしい。 犬坊の頭の中を、こ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 30 「お万。お万は・・・無事か」ということばを 聞いた犬坊は、頭の中が真っ白になりました。 犬坊は、ぐっすり眠っている盛永の口から、そ んなことばを聞くとは思ってもいませんでした。 盛永さまは、誰よりもこの私を…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 29 私は、盛永さまに「少しは領民のことも考 えてください」と、なぜいえなかったのだ ろうか。 犬坊は、盛永につかえた三年間を思い出し、 複雑な気持になりました。 どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 「お万。お…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 28 犬坊は、盛永やお万・長五郎とすごした三年 間を、なつかしく思い出しました。 三人とすごした三年間は、とても楽しい生活 だった。 でも、辛いことも多かったなと、犬坊は思い ました。 盛永さまに気にいられたことで…